工藤和俊 訳
佐々木正人 監訳
A5判並製 ● 320頁
定価4,410円(本体4,200円+税)
2003年7月15日発行
ISBN 978-4-7608-2821-0 ● C3011
紹介
運動はどのようにして環境に出会うのか。本書は,現在,生態心理学,運動研究,認知科学の最先端で,運動のアフォーダンスとして注目を集める「デクステリティ」の7論考。
一度も書かれたことのない人間の運動に関する本
目次
日本語版への序文 マイケル・ターヴェイ
著者まえがき
第�章 巧みさ(デクステリティ)とは何か
科学戦隊の偵察と戦闘
心理物理学的能力
巧みさ(デクステリティ)——勝利者
巧みさ(デクステリティ)の値打ちが高いわか
巧みさ(デクステリティ)とは何か
第�章 運動制御について
人間の運動器官における動きの多様性
舌と眼の動きについて
運動制御はなぜ難しいか
自由度二および三とは何か?
冗長な自由度をどのように克服するか
筋の弾性による問題
運動の協応とは何か?
筋 ‐ 間接感覚とその補助
第�章 動作の起源について
大いなる生物の競争
尺度と配役
生命と興奮性の出現
神経系の創成
体の口側は、いかにして頭側になったか
防御? それとも攻撃?
横紋筋を使いこなす
横紋筋の弱点
袋小路の節足動物
脊椎動物の進化
感覚による調整
体肢の発達
豊かになる動作
爬虫類王国の全盛
覇権争い
鳥類が到達した運動
錘体路系はいかにして錘体外路系を呑み込んだか
第�章 動作の構築について
ゼウスと人間についての神話
脳の摩天楼
生理的早産の赤ん坊
新しい課題と脳の発達
豊かになる感覚的印象
動作のリストと背景レベル
脊髄の引き金機構
第�章 動作機構のレベル
緊張(トーン)のレベル——レベルA
筋 ‐ 関節リンクのレベル——レベルB
レベルBの構造
レベルBの機能
空間のレベル——レベルC
レベルCの構造
空間場とは何か?
レベルCに属する運動の特性
空間レベルの動作
行為のレベル——レベルD
行為とは何か
主な特徴
調整と自動化
巧みさの種類について
行為のタイプ
子供の運動形成
第�章 練習と運動スキル
運動スキルについての誤った考え
練習可能性はどのようにして発現するか
運動スキルとは何か
運動スキルの構築
先導レベルと運動の構成
調整の同定と分配
背景調整の割りあて
動作の自動化
背景調整の調和を奏でる
標準化
安定化
第�章 巧みさ(デクステリティ)とその特徴
巧みさ(デクステリティ)についてすでに分かっていること
どこでどのように巧みさ(デクステリティ)は現れるのか
巧みさ(デクステリティ)には何ができるのか
巧みさ(デクステリティ)の仕事ぶり
巧みさ(デクステリティ)の核心
巧みさ(デクステリティ)の先見性
巧みさ(デクステリティ)と美しさ
巧みさ(デクステリティ)はどのように発達するか
著者あとがき
主要語句解説 工藤和俊
[解題]運動はどのようにして環境に出会うのか
—ベルンシュタインの三つの発見 佐々木正人
訳者あとがき 工藤和俊
人名索引
事項索引
著者について
「本書が書かれたのは、約半世紀前。ソビエト社会主義共和国連邦をスターリンが統治していた時代だ」(訳者あとがき)
ベルンシュタインが一般向けの科学書としての本書を執筆していたころ、ベルンシュタインは気鋭の生理学者だった。1947年には『動作の構築について』という本を出版し、「動作障害の治療に携わる外科医たち」から高い評価を得たことで、スターリン賞という国家的な賞を受けた。
ところが、ベルンシュタインがパブロフの条件反射説を批判したこと、ソ連国内に反ユダヤ主義の風潮広がっていたことが重なり、ユダヤ人であったベルンシュタインは「パブロフを貶める非国民的研究者として共産党の機関誌「プラウダ」誌上で公然と批判される」ようになってしまう。
ベルンシュタインは、職を失い、出版は取りやめになってしまった。
歳月が流れ、忘れられた原稿がとうとう発見されたとき、ベルンシュタインが亡くなってから20年が過ぎていた。
ゴルバチョフ政権下、ベルンシュタインの業績は再評価され、1991年には本書(原書)が出版され、1996年には英訳版が出版された。この日本語版は英語版がベースになっている。