2011-10-31

"Ornament und verbrechen" 訳書

タイトル 装飾と犯罪 : 建築・文化論集
責任表示 アドルフ・ロース[著]
責任表示 伊藤哲夫訳
個人著者標目 Loos,Adolf (1870-1933) 詳細
個人著者標目 伊藤, 哲夫 (1942-)‖イトウ,テツオ
版表示 新装普及版
出版地 東京
出版者 中央公論美術出版‖チュウオウコウロンビジュツシュッパン
出版年 2011.5
形態 270p ; 22cm
内容細目 ウィーン・プラターの旧万国博覧会、ロトンダ展示会場において展示された室内空間について / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 デラックスな馬車について / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 建築材料について / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 被覆の原則について / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 ポチョムキンの都市 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 女性と家 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 建築における新・旧の二つの方向 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 馬具職人 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 ウィーンにおける最も素晴らしい内部空間、最も美しい貴族の邸館、最も美しいが近々取り壊しの運命にある建築物、最も美しい新建築、最も美しい散歩道
/ アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 住居の見学会 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 余計なこと(ドイツ工作連盟) / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 文化の堕落について / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 装飾と犯罪 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 ミヒャエル広場に面して立つ建物についての二つの覚え書とその補章 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 建築について / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 私の建築学校 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 ベートーヴェンの病める耳 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 カール・クラウス / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 郷土芸術について / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 ペーター・アルテンベルクとの別れにあたって / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 住まうことを学ぼう! / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 シカゴ・トリビューン新聞社社屋 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 アーノルト・シェーンベルクと同時代人達 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 近代の集合住宅 / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 ヨーゼフ・ファイリッヒ / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 オスカー・ココシュカ / アドルフ・ロース著 ; 伊藤哲夫訳
内容細目 訳註・解説
ISBN 978-4-8055-0658-5
入手条件・定価 3500円

『師弟のまじわり Lessons of the Masters』

師弟のまじわり

Harvard University Press
THE CHARLES ELIOT NORTON LECTURES
Lessons of the Masters


ジョージ・スタイナー
高田 康成 訳
■体裁=四六判・上製・カバー・288頁
■定価 3,150円(本体 3,000円 + 税5%)
■2011年10月27日
■ISBN978-4-00-023499-3 C0098


■内容紹介
人類の知の歴史は,同時に教える者と教わる者の歴史でもあった.知の伝達にあたって,師は誰に何をどのように受け渡そうとするのか.弟子は師に対していかに臨み,何を求めるのか.権威と反逆,敬愛と嫉妬,信頼と裏切り…….古今の例を自在に引きながら,教育という場に生まれる数々のドラマを描きだしたユニークな文化史.

When we talk about education today, we tend to avoid the rhetoric of
"mastery," with its erotic and inegalitarian overtones. But the
charged personal encounter between master and disciple is precisely
what interests George Steiner in this book, a sustained reflection on
the infinitely complex and subtle interplay of power, trust, and
passions in the most profound sorts of pedagogy. Based on Steiner's
Norton Lectures on the art and lore of teaching, Lessons of the
Masters evokes a host of exemplary figures, including Socrates and
Plato, Jesus and his disciples, Virgil and Dante, Heloise and Abelard,
Tycho Brahe and Johann Kepler, the Baal Shem Tov, Confucian and
Buddhist sages, Edmund Husserl and Martin Heidegger, Nadia Boulanger,
and Knute Rockne.

Pivotal in the unfolding of Western culture are Socrates and Jesus,
charismatic masters who left no written teachings, founded no schools.
In the efforts of their disciples, in the passion narratives inspired
by their deaths, Steiner sees the beginnings of the inward vocabulary,
the encoded recognitions of much of our moral, philosophical, and
theological idiom. He goes on to consider a diverse array of
traditions and disciplines, recurring throughout to three underlying
themes: the master's power to exploit his student's dependence and
vulnerability; the complementary threat of subversion and betrayal of
the mentor by his pupil; and the reciprocal exchange of trust and
love, of learning and instruction between master and disciple.

Forcefully written, passionately argued, Lessons of the Masters is
itself a masterly testament to the high vocation and perilous risks
undertaken by true teacher and learner alike.

■訳者・高田康成の紹介文

同じ事柄でも,それを学ぶ先生によって,その事柄はまったく異なる見え方をするものです.個人的体験で恐縮ですが,小津次郎先生に出会う幸運がなかったならば,私はシェイクスピアの研究者にはなりませんでしたし,その反対に,ある師の存在ゆえにその分野に対する興味が失せてしまったという経験もあります.同様の体験は,誰にでもありましょう.
 師弟関係というのは,つまり,両者の間で伝承される事柄と,両者の間に醸成される人間的な親和力との,繊細にして微妙な組み合わせから成ります.ただし,伝承される事柄を中心にした師弟関係は,制度的にも明確であるのに対して,親和力に依拠した師弟関係は,恋愛関係に似て,心の深奥に触れるにもかかわらず,客観的にそれを保証するものがありません.しかも,師弟関係は本質的に封建的な上下関係という権力構造をもちます.
 ここから,師弟間の美談もさることながら,おぞましくも醜悪な人間模様が繰り広げられることになります.翻ってしかし,人類の文明と文化は,師弟関係という事態を抜きにして考えることはできません.とすれば,歴史を遡って,この抜きさしならぬ事態を考察してみたらどうかという誘惑に駆られます.しかしその容易でないことは,誰の目にも明らかです.
 ご存じジョージ・スタイナーが,晩年の一作品として書き上げた本書は,その興味深くも困難な主題を扱って,あたかも一篇の詩であるかの如く,美しく歌い上げます.

■目次
謝辞

第一章 起源の存続
第二章 火の雨
第三章 偉大な師
第四章 思考の師匠
第五章 新世界にて
第六章 不老の知性

結語
訳者あとがき
人名索引

Introduction

1. Lasting Origins

2. Rain of Fire

3. Magnificus

4. Maîtres à Penser

5. On Native Ground

6. Unaging Intellect

Afterword

Index


■著者
ジョージ・スタイナー(George Steiner)
1929年生まれ.文芸批評家.ジュネーヴ大学比較文学教授,ケンブリッジ大学チャーチル・カレッジ・エクストラオーディナリー・フェローを歴任.英仏独語とギリシア語・ラテン語に通じ,古典古代から現代までの文学・哲学・芸術・科学にわたる該博な知識を駆使して旺盛な執筆活動を展開する.邦訳著書に,『マルティン・ハイデガー』(岩波書店),『言語と沈黙』(せりか書房),『青ひげの城にて』(みすず書房),『バベルの後に』(法政大学出版局)ほか多数.

高田康成(たかだ やすなり)
1950年生まれ.東京大学大学院博士課程中退.専攻,英文学・表象古典文化論.東京大学大学院総合文化研究科教授.著訳書に,『キケロ――ヨーロッパの知的伝統』(岩波新書),『クリティカル・モーメント――批評の根源と臨界の認識』(名古屋大学出版会),Classics
and National Cultures (Oxford University
Press,共著),イーグルトン『文芸批評とイデオロギー』(岩波書店),グリマル『キケロ』(白水社),ドロンケ『中世ヨーロッパの歌』(水声社)ほか.

『退屈 息もつかせぬその歴史』

退屈
息もつかせぬその歴史

[原題] BOREDOM : A Lively History

ピーター・トゥーヒー 著 篠儀 直子 訳
201109刊/四六判/246頁
C0010 定価2310 円(本体2200 円)
ISBN978-4-7917-6621-5

■内容紹介


退屈はもっともありふれた、もっとも価値のある感情。
古代キリスト教の隠者のエピソードから、有名なデューラーの銅版画、サルトルの
『嘔吐』、さらに最新の脳科学や動物行動学の成果まで、古今東西ありとあらゆる事例をもとに語られる、人間と退屈のまったく退屈しない物語。

In the first book to argue for the benefits of boredom, Peter Toohey
dispels the myth that it's simply a childish emotion or an existential
malaise like Jean-Paul Sartre's nausea. He shows how boredom is, in
fact, one of our most common and constructive emotions and is an
essential part of the human experience.

This informative and entertaining investigation of boredom—what it is
and what it isn't, its uses and its dangers—spans more than 3,000
years of history and takes readers through fascinating neurological
and psychological theories of emotion, as well as recent scientific
investigations, to illustrate its role in our lives. There are
Australian aboriginals and bored Romans, Jeffrey Archer and caged
cockatoos, Camus and the early Christians, Dürer and Degas. Toohey
also explores the important role that boredom plays in popular and
highbrow culture and how over the centuries it has proven to be a
stimulus for art and literature.

Toohey shows that boredom is a universal emotion experienced by humans
throughout history and he explains its place, and value, in today's
world. Boredom: A Lively History is vital reading for anyone
interested in what goes on when supposedly nothing happens.

■目次

序文

1 退屈を位置づける

2 慢性的退屈とその仲間たち

3 人間、動物、監禁状態

4 真昼の消耗

5 退屈に歴史はあるか

6 退屈へと帰還する長い歩み

文献
謝辞
訳者あとがき

人名索引
図版一覧

■著者

[著者] ピーター・トゥーヒー(Peter Toohey)
西洋古典学者。モナシュ大学(オーストラリア)卒業、トロント大学(カナダ)で博士号取得。現在、カルガリー大学(カナダ)芸術学部ギリシア・ローマ学科教授。著書に
Melancholy,Love,and Time : Boundaries of the Self in Ancient
Literature、Epic Lessons : An Introduction to Didactic Poetry など。

[訳者] 篠儀直子(しのぎ・なおこ)
名古屋大学大学院(西洋史学)・東京大学大学院(表象文化論)を満期退学後、東京大学などで非常勤講師。訳書に、『フレッド・アステア自伝』、『グローバル権力から世界をとりもどすための13人の提言』、『ネット・バカ』、『寄生虫のはなし』(ともに青土社)など多数。

2011-10-27

「カフカ」というバンド

カフカ are
Daishi Fujii : Drums , Chorus
Naoya Yoshimi : Bass , Chorus
Kouta Kaneko : Vocal , Guitar (L-R)

http://www.ka-fu-ka.net/

高橋悠治『カフカノート』『カフカ/夜の時間——メモ・ランダム』(2011年10月21日発行)

『カフカノート』
A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/224頁
定価 3,360円(本体3,200円)
ISBN 978-4-622-07640-7 C0073
2011年10月21日発行

■内容紹介
「この本はカフカのノートブックから集めた36の断片の束であり、カフカについてのノートでもある。1990年の批判版全集のテクストにより、ドイツ語原文と日本語のどちらでも上演可能。日本語訳は、パラグラフ、句読点、歌の場合は音節数もできるだけ原文に近づけた」

構成・作曲を手がけた舞台「カフカノート」にむけて書かれたスコア、対訳台本、制作ノートを収録。
カフカはピアニスト高橋悠治をささえる影の思索者。すすみ、停まり、曲がり、途絶えてはまたつづく、その書きかたをなぞるように翻訳されたカフカ。ことばの向こうにカフカの姿が見えてくる。

■目次
I カフカノート(スコア)

II 掠れ書き(制作ノート)
「カフカノート」の準備
カフカのことばを歌う
「カフカノート」の作曲
テクストと音楽……遅延装置
「カフカノート」の後に

III カフカ断片(対訳台本)


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『カフカ/夜の時間——メモ・ランダム』
A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/208頁
定価 3,360円(本体3,200円)
ISBN 978-4-622-07641-4 C0073
2011年10月21日発行


■内容紹介

夜のこわさ。夜でないこわさ。
ひとことでいい。もとめるだけ。空気のうごきだけ。きみがまだ生きている、待っているというしるしだけ。いや、もとめなくていい。一息だけ。一息もいらない。かまえだけ。かまえもいらない。おもうだけで。おもうこともない。しずかな眠りだけでいい。
……………カフカ

はじまりは病室の闇で読んだカフカ。読みなおされ、書きなおされ、翻訳しなおされてゆくカフカとの濃密な時間が、まじりけのないことばで書き留められている。高橋悠治の書きかた、音楽のつくりかたの秘密にみちた一冊。

晶文社より出版された初版(1989年)に「「カフカ」ノート 2」を加え、「新版へのあとがき」を付して新たに刊行。

■目次
夜の時間(カール・クラウス)


病気・カフカ・音楽
「カフカ」ノート 1
可不可
「カフカ」ノート 2

 ii
明恵上人 夢記切(声明のために)
レナード・バーンステインの「平和のためのミサ」によせて
水牛 1
水牛 2
パイクラッパー——ナムジュン・パイクの「風呂敷天下」

 iii
「馬の頭は永遠に向った」作曲ノート
音に向かって
メモ・ランダム
グレン・グールドの死の「意味」?
ランダム・アクセス・メモリーとなった音楽
「カルメンという名の女」(ゴダール)
写真集「ベイルート」(ゾフィー・リステルヒューバー)
「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」(ストローブ=ユイレ)
「緑のアリが夢見るところ」(ヘルツォーク)

あとがき
新版へのあとがき

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■著者 高橋悠治 たかはし・ゆうじ ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
1938年東京に生まれる。作曲家・ピアニスト。桐朋学園短期大学作曲科中退。柴田南雄、小倉朗、ヤニス・クセナキスに作曲を師事。ドイツを経てニューヨークに渡り、コンピュータによる作曲を研究、そのかたわら欧米各地で演奏活動を行う。1973年に一柳慧、柴田南雄、武満徹、林光、松平頼暁、湯浅譲二とともにグループ「トランソニック」を組織、季刊誌「トランソニック」を編集。1978年タイの抵抗歌を日本に紹介するために水牛楽団を結成し、月刊「水牛通信」を発行。現在はウェブサイト「水牛」http://www.suigyu.com/内で執筆。CDに『バッハ:ゴルトベルグ変奏曲』『クセナキス&メシアン:ピアノ作品集』『solo』『モンポウ:沈黙の音楽』『ブゾーニ:ソナティナ集』『高橋悠治』1-4『猫の歌』(歌:波多野睦美、2011)など。著書に『音の静寂
静寂の音』(平凡社、2004)『きっかけの音楽』(みすず書房、2008)『高橋悠治
対談選』(ちくま学芸文庫、2010)『カフカノート』(みすず書房、2011)など。

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■2冊の刊行を記念したトークイベント「カフカ×高橋悠治×保坂和志 わたしたちの書きかた/つくりかた」

2011年10月22日(土)、神楽坂から神保町に移ってきたスタジオ・イワトにて

それぞれの作品から、創作する意志の根底に通い合うものがあるのがわかる。
ふたりのなかにはいつもカフカがいる、というわけで、「カフカ×高橋悠治×保坂和志 わたしたちの書きかた/つくりかた」のトークが実現したのでした。
高橋さんのピアノ伴奏と声楽家・波多野睦美さんによる「夜の時間」(作曲:高橋悠治、ことば:カール・クラウス)の演奏で始まったこの日。
ことばが表すイメージをなぞるように言葉を選びながら問いかけあう2時間は、あっという間に流れていきました。そのごく一部をご紹介します。

* 保坂: (「文學界」の連載「カフカ式練習帳」のことを考え始めていた)2008年は、僕がはじめて高橋さんに直にお目にかかった時で。
そのシューベルトのコンサートの時に、譜めくりの人がめくりそびれたんですよね。
実際に「カフカ式練習帳」が始まったのは、譜めくりをめくりそびれた人を書きとめたことが始まり。
で、なにかと縁が深い(笑)。


* 高橋: やっぱり、人の失敗の方が面白いわけですよね。
ピアニストっていうものは、暗譜して弾くというのがいつからか常識になってるんですよね。
だけどその前(19世紀中頃以前)はどうしたかというと、自分でめくってた。
それで、めくるときに手が離れるから止まると、お客さんはそれを待っていた。
だからあわててパッとか、めくりそこなうとか、そういうことはあり得なかったんですよ。
落ち着いてめくって、また次をやればいいわけです。

* 保坂: カフカの書いたものを読んでると、自分で文章書く時に接続詞を使うことがすごい嫌な感じがするんですよ。
なぜかっていうと、何か書いて、「しかし」とか「だから」ってすると、次に書く内容は「しかし」に該当する内容になっちゃう訳ですよね。
接続詞っていうのは、読者のためにというよりも、書いている自分を救うというか、ちょっと安心させるためについ使っちゃうんじゃないか。
書いている自分に「すこし文章を俯瞰できる位置に自分はいるんだぞ」って安心させるための訓練を子供の時から受けてるから。
だから、最近、できるだけ接続詞っていうのを使いたくないんですよね。
だけど、使わないと不安なんですよね。
それは読者に対する不安っていうんじゃなくて、自分に対する不安なんだと思うんですよね。
でも、あんまり使わないで書いてたら、頭がおかしくなっちゃうかなって気もするんですよ。(…)

* 高橋: 音楽でいうとね、20世紀の初めに、並列式のつくり方っていうのができたと思うんですがね。
ストラビンスキーとかそうなんだけど。
その前のマーラ—とかブルックナーとかワーグナーとかそういうものは、連続してうねりながらどっかへ行く。
そういういことではなくて、ひとつのものがあって、途切れて、違うものが出てきて、そういうようなつくり方ですよね。
それは入れ替えてもいいわけだけど。
入れ替え自由ってことになると、20世紀の中ごろ、たとえばケージとか、これやって、これやって、その逆でもいいし、あるいはやらなくてもいいし、そういうチョイスがあるみたいな。
だけどそれは演奏する側、あるいは作曲する側のチョイスで、音楽聞く側にはチョイスがない訳ですよ。

* 高橋: カフカは事柄の中心からいきなり始まるって言われるでしょ。
中心から始めちゃった場合、そこから出ていくしかないでしょ、そういうやり方っていうのは新しいんですか?


* 保坂: 知らないです。(笑)


* 高橋: 伝統的なやり方っていうのはあるんですよね、書院づくりというのがある。
部屋があって、部屋を出ると別の部屋があって、その度に違う空間に入っていくわけです。
全体というものがない、部分しかない。
それから回遊式庭園。それは池のまわりをめぐっていって、茂みがあって、別の風景になる。
だからそれはけっこう伝統的なつくり方でもあるっていう。

* 保坂: 小説は、ヌーヴォーロマンとかごく一部をのぞいてすごく保守的で。
音楽とか美術にくらべてすごく狭い。


* 高橋: そうですかね? それは保坂さんがっていうことでしょ?
自分がみんなであるっていう幻想がどこかにあるわけでしょ?
だから書いていられるわけでしょ?

* 保坂: カフカがほとんど点も打たずにバーッと書きつづけた。
万年筆のすべりをすごく気にしたっていうぐらいで。
『判決』を一晩で書くというのはものすごい早いんですよね。
カフカの場合には、カフカが書いた早さで読者は読めるのかなって。
よく、「もっと読者のことを考えよ、書き手の思うように書くだけじゃないんだ」みたいな言いかたを小説に対してするんです。
だけど、どんなに書き手が読者のことを考えていないかのようであっても、読者はとにかく小説として完成されたものを読めるわけだから、それはもう十分読者の側に立ってるんですよね。
それはカフカが一気に書くっていうことを考えるまでは考えなかったことなんだけど。
もし、これからパソコンで小説を書く場合に、パソコンの容量がすごく増えたら、著者が書いていく通りの時間で読者は小説が見れるんですよね、読めるっていうか。(…)

* 高橋: 即興演奏するでしょ。
弾いてる速度で作ってるとも言える訳ですよ。
字を書くよりも音を出してる方が、手は簡単だけど。
カフカの書くものを、原稿の写真版とかで見ててね、こうペンが動いていく、その速度で書いているっていうことは、もうすでに読者の側にそれが立ってるっていうふうに思うんですけどね。
たとえば入眠時幻覚がありますよね。
彼が役所勤めから帰ってきて、散歩かなんかして、疲れて。
疲れきってなきゃいけないんだよね、それは。
それはね、疲れきってないといけないと思うんです。
疲れきってないと、身体が抵抗している。
自由になれない。
ちょっと話がずれますがね、クセナキスの曲を弾く時にね、ちょっと普通じゃ弾けないような感じで難しい訳でしょ、それをある速度でやっている。
そうするとコントロールよりちょっと上の何かが起こるわけ。
そうするとね、もう疲れきっちゃうわけですよ。
で、疲れきったときに手がすごくよく動くようになるわけ、軽くなってね。
そうした時にはじめて弾けるようになるんですよ。
だからね、コントロールしてやろうと思っている、その時はできないわけ。
だからね、たぶんイメージが浮かぶのだって、疲れきって、横になって、眠りかかった時に浮かぶものというのは、机に向かって、書こうとして、何かを思い浮かべて、ってそういうレベルじゃないわけですよ。
そこで書き出すわけでしょ、書き出すと今度手が動き出して、それでなんだか知らないけど話ができていく。
それでそれに付いて行く。「作家がペンについていく」って言い方しますよね。
「随筆」ってことばがあるでしょう。
だからそういうものなんですよね。
なんか、こう、思ってちゃいけないわけ。
それで、そういうことは、割と音楽的なアイデアだと思うんですよ。
演奏するときにこうやろう、なんて思ってちゃいけないわけ。
そのままなにも考えずにやらないと、なにもできなくなるのね、自分の考えに縛られて。
だから普通と逆というようなことになるんだけど、ものを論じる人っていうのは、そうやってあれこれ考えてから対象を論じようとするから、分からないんじゃないかと思うんですよ。
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『音楽と数学』でセイレーン神話を実証的に検証し、ポジターノの沖合、「セイレーンの島」と呼ばれるガッリ諸島である実験をした

フリードリッヒ・キットラー、2011年10月18日没

「ムーサ、ニンフ、そしてセイレーン」CD(ドイツ語)
Musen, Nymphen und Sirenen
mit Friedrich Kittler
Konzeption und Regie: Klaus Sander
Erzähler: Friedrich Kittler
Aufnahme und Schnitt: Anja Theismann
Mastering: Piethopraxis Tonstudio Köln
Produktion: supposé 2005

Audio-CD, 56 Minuten
ISBN-10: 3-932513-64-9
ISBN-13: 978-3-932513-64-0
Euro 18,00

BESTELLUNG

"Zwei Münder vereinigen sich zu einer schönen Sangstimme. Weil sie
alles wissen und weil sie alle Lust versprechen,die möglich ist, soll
Odysseus das Schiff anlegen, an der Insel. Das sind die beiden
Sirenen,die in der späteren ikonographischen Tradition auf den Vasen
immer drei sind und immer schreckliche Mischwesen: oben Jungfrauen mit
Busen, unten Krallen und Vögel - bei Homer sind es einfach zwei schöne
Nymphen."
Friedrich Kittler betreibt experimentelle Philologie, bereist die
Sireneninseln und verlebendigt so die Geschichte des Odysseus. Er
erzählt von den honigsüß summenden Stimmen der Frauen, der Geburt der
Musen, den Ausschweifungen Kirkes, läßt Göttinnen auftreten, Huren und
Nymphen - über allem aber schwebt Musik und die Erotik der
Mathematik... Es geht um Verzauberung und die Grausamkeit der
Verführung, um das "Lächeln im unsterblichen Gesicht" (Sappho) und das
Fortdauern des Namens durch die Zeiten, bis er heute seinen Eintrag im
"Sprechbuch" findet. Kittler beschwört unser griechisches Erbe,den
Ursprung aller Wissenschaften.

Prof. Dr. Friedrich Kittler, geboren 1943, Literaturwissenschaftler
und Inhaber des Lehrstuhls für Ästhetik und Geschichte der Medien am
Institut für Ästhetik der Humboldt-Universität zu Berlin.

Stimmen der Kritik:

"Der Berliner Kulturwissenschaftler Friedrich Kittler ist nach Italien
gereist, auf die Sireneninseln, und hat dort, wie er behauptet, die
Philologie nach 2800 Jahren endlich einmal auf eine experimentelle
Basis gestellt 'statt immer nur auf eine Textwichserei'." (Berliner
Zeitung)

"Das Hörbuch ist die Einführung des Punk in die deutsche Philosophie
beziehungsweise Philologie. Kittler liest keinen wohl formulierten
Text stur betont daher, er erzählt, was ihn an Odysseus, den Sirenen
und dem griechischen Denken fasziniert und warum er sich auf die Reise
der Empirie begeben hat. Man sollte das Kennzeichen "Punk" hier aber
nicht mit den berühmten drei Akkorden, die endlos hintereinander
geschrammt werden, verwechseln. Kittler ist überaus belesen, der
griechischen Sprache so mächtig, daß er bekanntere Philosophen wie
Theodor W. Adorno oder Michel Foucault in Nebensätzen als Laien der
griechischen Sprache entlarvt. Kittlers technische Fähigkeiten sind
die eines Jazzmusikers, um im Musikbild zu bleiben, dem auch nach 56
Minuten Spiel die machbaren Ideen nicht ausgehen. Punk meint vielmehr
im Zusammenhang dieses großartigen Hörspiels, das es erlaubt, einem
Denker bei seiner Arbeit zuzuhören, daß er mit dem geprochenen Text
des Hörspiels hinter die geschliffene Schrift zurückgeht, oder auch
die Art und Weise, wie er das Einfache, das Klare griechischen Denkens
unter dem Schleier von 2000 Jahren christlicher Verblendung
hervorholt." (Cord Riechelmann, mare)

"Lust und Wissen sind für Friedrich Kittler eins, weshalb er die
Wissenschaft wieder erotisieren will - ein Unterfangen, bei dem man
nur viel Glück wünschen kann. Jedenfalls ist es ein Vergnügen, Kittler
über den im Griechischen versagenden Adorno spotten oder ein Fragment
Sapphos interpretieren zu hören. Mit Alexander Kluge gesprochen: Für
alle Neu- wie Altgierigen: ein Muß!" (Knut Cordsen, Bayern 2 Radio)

"Das Hörbuch, auf dem er mit hörbarer Begeisterung Sapphos einziges
vollständig erhaltenes Gedicht rezitiert, führt vorzüglich in Kittlers
Griechenland ein." (René Aguigah, Literaturen)

"Kittler zitiert, rekapituliert, rekonstruiert, ja, er reanimiert die
Geschichte des Odysseus und die ihn umschwirrenden Gestalten wie die
Nymphen und die Sirenen. Auf seiner Reise zu den Sireneninseln dringt
Kittler mit scharf geschliffenem Bohrer direkt ins Hirn der
altertümlichen Literatur ein, die, so sein Credo, in der griechischen
Variante das Erbe aller Menschen und den Ursprung der Wissenschaften
in sich trägt. Er hat die Angst vor der Berührung mit den hehren
Künsten des Altertums und seiner nachfolgenden Protagonisten
entheiligt. Alleine deshalb lohnt es sich schon, ihm eine Stunde lang
zuzuhören." (Klaus Hübner, Jazzthetik)

"Mit diesem Sprechbuch, wie Kittler es nennt, geht er hinter die
geschliffene Schriftsprache zurück, zum mündlichen Erzählen, woraus
alle Literatur entstanden ist. Anders als sein Kollege Peter Wapnewski
mit seinen Nacherzählungen des Nibelungenlieds und anderer
mittelalterlicher Epen, liest Kittler keinen wohl formulierten Text
ab. Er strolcht auf Seitenwegen durch die griechische Mythologie und
erzählt gegen jeden Lehrplan, was ihn an den griechischen Helden,
ihren Göttern und dem antiken Denken fasziniert. Beiläufig, im
Konversationston, plaudert er vor sich hin, zündet sich eine Zigarette
an, trinkt, verfertigt hörbar die Gedanken beim Reden, gönnt sich
Pausen, ganz so, als säße er am Tisch unter Freunden. Geschliffen
Scharfes mischt sich mit krausem Kauderwelsch. Dabei geht es um nichts
weniger als um die griechische Variante des Erbes der Menschheit und
den Ursprung der Wissenschaften. Es ist amüsant, man fühlt sich gut
unterhalten. Kittler benimmt sich wie ein Archäologe, der ein paar
Scherben gefunden hat, und so tut, als ließen sie sich zu einer Tasse
zusammensetzen. Am Ende steht da ein ganzes Service, man schmeckt
förmlich die Getränke, hört die Gespräche, sieht ganze Gastmähler vor
sich. Das ist fröhliche Wissenschaft!" (Edelgard Abenstein,
Deutschlandradio Kultur)

"Einer der aufregendsten Denker dieser Tage ist der Berliner
Medien-Professor Friedrich Kittler, dessen aktuelles Projekt den
Sirenen gilt. Die Medienwissenschaft werde ihm langsam langweilig,
erklärt er auf Musen, Nymphen und Sirenen. Vor einiger Zeit reiste
Kittler nach Italien, um nachzuweisen, dass Odysseus an der Insel der
Sirenen nicht nur vorbeischipperte, sondern dortselbst an Land ging.
Und davon erzählt er nun in angenehm plauderndem Tonfall, als säße man
bei Wein und Zigaretten am Tisch und machte sich mit ihm einen schönen
Abend. Kittlers intellektuelle Verve, seine Graecomanie und sein
Talent zum blitzenden Kurzschluss sind über die Maßen faszinierend."
(Katrin Schuster, Freitag)

アドルフ・ロース(Adolf Loos, 1870-1933)全著作集日本語版刊行運動開始

書名:アドルフ・ロース著作集1『虚空へ向けて』
著者:アドルフ・ロース
翻訳:加藤淳  監修:鈴木了二・中谷礼仁  訳注:早稲田大学中谷研究室
解題:ヴァルター・ループレヒター(Dr.Walter Ruprechter) 解題訳:安川晴基
編集発行:編集出版組織体アセテート

世紀末ウィーンに鳴り響く悪態のマッス!
20世紀建築史上もっとも倫理的な建築家による犯罪的文化論。
非建築のかなたへ。

「刑法125条から133条にいたる条文は僕たちにとってもっとも信頼できるモード誌だ」
                         ────「淑女のモード」より


2011年刊行予定

1898年、世紀末ウィーン。後に20世紀建築史に深いトラウマを与えることになる建築家アドルフ・ロースは、いまだ建築家ではなかった。
装飾を断罪した初の近代建築理論といわれる「装飾と犯罪」はどのように育まれたのか?
「紳士のモード」「淑女のモード」など、「装飾と犯罪」にならぶ重要論文を収録したアドルフ・ロース初期論文集が日本語版初登場。世紀転換期のウィーンから、一世紀にわたり眠り続けてきたモダニズムのパンドラ。
編集出版組織体アセテートによる、ロース全著作集日本語版刊行運動開始。

◆アドルフ・ロースとはだれか
◆「虚空へ向けて(INS LEERE GESPROCHEN)」とは?
◆なぜ非建築論か?

◆アドルフ・ロースとはだれか



アドルフ・ロース(Adolf Loos, 1870-1933)
19世紀末から20世紀初頭にかけ、ウィーンを中心として活動した建築家。
同時に世紀末ウィーンにおける近代文化の批判者としての側面をもった。初期モダニズム建築の巨匠となるコルビュジェやミース、ライトらより一世代前の生まれ。
1908年に執筆された論文「装飾と犯罪」(Ornament und
Verbrechen)は、装飾を犯罪行為と言い切り、その過激さゆえにロースを一躍有名にした。到来する近代に対する洞察の圧倒的鋭さによって後に多大な影響を与えたにもかかわらず、あるいはその早さゆえか、ロースはモダニズム移行期の人物として常に過小評価されてきた。

1870年、モラヴィアの地方都市ブルノに生まれる。ドレスデン工科大学に学ぶが一年で中退。シカゴ・コロンビア万国博覧会訪問のため1893年単身渡米。皿洗いや新聞記者の見習いなど、様々な職種で食いぶちを稼ぎながらアメリカに滞在する。1896年、三年間のアメリカ滞在の後、イギリスを経てオーストリアへ帰国。ウィーンにて建築家としてのキャリアを開始するが、この頃同時に建築にとどまらず広く文化・芸術・風俗を批判する批評家として活動し始める。アメリカ・イギリス滞在中に得た知見を紹介しつつ、爛熟したウィーンの世紀末文化を批判した。→続きを読む


◆「虚空へ向けて(INS LEERE GESPROCHEN)」とは?



アドルフ・ロースの著作は現在ドイツ語圏において三巻本の全集として刊行されている。
それらはロースの生前に著者自身のセレクションのもとに出版された論文集二冊、および死後にそれ以外の遺稿を集めた補稿集である。編集出版組織体アセテートでは今後これらすべての著作を、売っては発行資金を回収しながら継続的に発行する予定としている。
本書『虚空へ向けて』の底本Ins Leere
Gesprochenは主に1897年から1900年までのわずか4年、それもロースの批評家としてのキャリアの最初期に書かれた論文を集めたものであり、ロースの存命中に発行された(1921)。
1898年、アメリカから帰国した後、設計の仕事の傍らにぼちぼちと批評の仕事をこなしていた27歳の青年ロースに大きな仕事が舞い込む。この年、ウィーンでは1848年3月の革命??つまり皇帝フランツ・ヨーゼフの即位50周年を記念する展覧会が開催される。ロースはこの一大国家事業のレビューを半年にわたり連載する機会を得るが、この連載こそが本書『虚空へ向けて』のヴォリュームの中心をなすものである。ウィーンにおける都市生活を近隣諸国に知らしめるという国揚的な性格をもった展覧会のレビューという条件も手伝い、結果からみれば論考の題材となったのは工芸、家具、インテリア、そしてファッションといった、当時転換期にあったウィーンの近代的都市生活を「装う」様々な意匠についてであった。
執筆当時、ロースは本書『虚空へ向けて』のタイトルを現在とは別のもの、『近代的神経とその装い』として構想していた。数々の非建築的題材のなかでも、当時のロースの関心を最も占めていたのは明らかにファッション(=モード)の問題であり、そしてそれは後のロースの問題構成を一挙にカバーする題材だった。ロースにとってモードは近代的神経の症候を最も端的に表す指標であった。→続きを読む

◆『虚空へ向けて』目次

 ●はすべて本邦初訳
 初版への序文...●  Vorwort Zur Erstausgabe...●
 第二版への序文...●  Vorwort Zur Zweiteausgabe...●
 美術工芸学校の学校展覧会...●  Schulausstellung Der Kunstgewerbeschule...●
 オーストリア美術館におけるクリスマス展示...●  Weihnachtsausstellung Im Österreichischen Museum...●
 美術工芸の展望1...●  Kunstgewerbliche Rundschau I...●
 美術工芸の展望2...●  Kunstgewerbliche Rundschau II...●
 オーストリア美術館におけるイギリス派...●  Die Englischen Schulen Im Österreichischen Museum...●
 ジルバーホフとその界隈...●  Der Silberhof und Seine Nachbarschaft...●
 紳士のモード...●  Die Herrenmode...●
 新しい様式とブロンズ産業...●  Der Neue Stil Und Die Bronze-INDUSTRIE...●
 室内...●  Interieurs...●
 ロトンダの室内  Die Interrieurs In Der Rotunde
 椅子...●  Die Sitzmöbel...●
 ガラスと陶土...●  Glas und Ton...●
 デラックスな馬車  Das Luxusfuhr Werk
 鉛管工...●  Die Plumber...●
 紳士の帽子...●  Die Herrenhüte...●
 靴...●  Die Fussbekleidung...●
 靴職人...●  Die Schuhmacher...●
 婦人のモード...●  Damenmode...●
 建築材料  Die Baumaterialien
 被覆の原則  Das Prinzip der Bekleidung
 下着...●  Wäsche...●
 家具...●  Möbel...●
 1898年の家具...●  Die Möbel Aus Dem Jahre 1898...●
 印刷工...●  Buchdrucker...●
 オーストリア美術館における冬期展覧会...●  Die Winterausstellung Im Österreichischen Museum...●
 オーストリア美術館の散策...●  Wanderungen Im Österreichischen Museum...●
 ウィーンのスカラ座...●  Das Scala-theater In Wien...●
 メルバとのステージ・デビュー...●  Mein Auftreten Mit Der Melba...●
 ある貧しい裕福な男について...●  Von Einem Armen, Reichen Manne...●
 あとがき...●  Nachwort...●

◆なぜ「非建築」論か?

講演をもとにした論文「装飾と犯罪」は、モダニズム建築における装飾の排除を言明したものとして一般に理解されがちであるが、しかしこの理解はロースの思考の射程にとっては片手落ちである。なぜならロースの著作において、いわゆる建築論の比率はきわめて少ないからである。「建築家」ロースの言葉を、非建築論として再読することが求められている。
「装飾と犯罪」で、ロースは日用品からの装飾の排除を説いた。しかしそれは、芸術における装飾の根源性と、同時にそれが避けがたいことを彼が深く意識していたからである。造形芸術の起源を犯罪者の刺青や便所の卑猥な落書きに求めるロース。彼はそれをヒトに本来的な、エロティックな衝迫として認めつつ、しかし同時にそれを近代人においては克服されるべき欲動として断罪する。人間の本性を超えようとする超人理論としての「装飾と犯罪」。近代芸術における装飾をめぐる問題はロースによってケリをつけられたどころか、この論文によって初めて設定されたといってよい。→続きを読む


◆翻訳者プロフィール

加藤淳(かとう・じゅん)
フリーライター/慶応大学文学部卒。ベルリン工科大学中退。在ベルリン10年。通訳、翻訳、現地コーディネーターなど職業を転々として2008年春帰国。虚空へ向けて時代のアドルフロースを彷彿とさせる人物。10年の肉体的知性にもとづき渾身の翻訳活動を開始。


◆監修者プロフィール

鈴木了二(すずき・りょうじ)
建築家。鈴木了二建築計画事務所主宰。早稲田大学教授/1944年東京都生まれ。1968年早稲田大学理工学部建築学科卒業。竹中工務店、槇総合計画事務所を経て、1977年早稲田大学大学院修了後、fromnow建築計画事務所を設立。1983年鈴木了二建築計画事務所に改称。現在、早稲田大学教授。1977年「物質試行37
佐木島プロジェクト」で日本建築学賞作品賞を受賞。また2005年、本書の対象である「物質試行47
金刀比羅宮プロジェクト」が第18回村野藤吾賞に輝く。美術家とのコラボレーションや映画の制作も行う。ICC企画展「バベルの図書館」において「物質試行39
Bibiloteca」(1988)、16mmフィルム「物質試行35
空地・空洞・空隙」(1992)。主な著書に「建築零年」(2001)や「非建築的考察」(1998)ほか。

中谷礼仁(なかたに・のりひと)
早稲田大学理工学術院建築学科准教授/1965年生まれ。歴史工学。特異な活動で知られる建築史家.近世大工書の編纂,古代から現在までの土地形質の継続性と現在への影響の研究,最近では90年前に今和次郎が訪れた民家すべてを再訪し,その変容を記録する活動を主宰.編集出版組織体アセテートを作り,レアで普遍的な他人の著作を刊行.著書に『セヴェラルネス
事物連鎖と人間』(鹿島出版会,2005) 『国学・明治・建築家』(一季出版、1993) など.


◆解題者プロフィール

ヴァルター・ループレヒター(Walter Ruprechter)
首都大学東京都市教養学部教授/1952年オーストリアMatrei
Osttirol生まれ。1972年インスブルック工業専門学校建築学専攻。アビトゥアー(大学入学資格)取得。1973-1983年ウィーン大学でドイツ文学、美術史、(歴)史学を学ぶ。博士学位を取得し卒業。出版社Medusa.Berlin
.Wienの企画・編集に携わる。1985-1987年日本大学講師。1987-1992年
ウィーン大学講師。1992年より現職。出版物に関しては、オーストリア現代文学、オーストリア文化史(ウィーン近代を中心に)、文化交流の現象と理論(特に日本と西洋の間をめぐって)についての論文を執筆。出版物に、オーストリア現代文学「文化学的転回のトポスとしての「日本の家」研究ー西洋と日本を結ぶ建築家の言説」(2009年度-2010年度)。


◆解題訳者プロフィール

安川晴基(やすかわ・はるき)
千葉工業大学社会システム科学部助教/1973年広島県生まれ。慶応義塾大学大学院文学研究科独文学専攻博士課程単位所得退学。2004-2007年、ドイツ学術交流会(DAAD)奨学生としてベルリン自由大学博士課程に在籍。専攻、ドイツ文学。

2011-10-24

『絶望名人 カフカの人生論』

著者 フランツ・カフカ 著
頭木 弘樹 編訳
http://ameblo.jp/kafka-kashiragi/
出版年月日 2011/10/20
ISBN 9784864101158
判型・ページ数 4-6・240ページ
# 単行本
# 出版社: 飛鳥新社
# 言語 日本語
# ISBN-10: 4864101159
# ISBN-13: 978-4864101158
# 商品の寸法: 18.8 x 13.2 x 2.4 cm

■内容説明
「絶望の名言集」

将来に、世の中に、自分の弱さに、結婚に、人づきあいに、不眠に、学校に、そのほかありとあらゆることに絶望したときに読む本!

カフカの絶望の言葉には、不思議な魅力と力があります。読んでいて、つられて落ち込むというよりは、かえって力がわいてくるのです。——編・訳者まえがきより

「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」——カフカ

右ページにカフカの文章、左ページに編訳者の頭木さんによる解説という形式で、見開き完結。

カフカの文章は、短いものは2-3行、長いもの8-9行程度


■目次

・頑張りたくても頑張ることができない
・手にした勝利を活用できない
・人生のわき道にそれていく
・気苦労が多すぎて、背中が曲がった
・散歩をしただけで、疲れて三日間何もできない
・やる気がすぐに失せてしまう
・死なないために生きるむなしさ
・親からの見当違いな励まし
・教育は害毒だった
・会社の廊下で、毎日絶望に襲われる
・愛せても、暮せない

ほか

2011-10-20

川村二郎氏のカフカ短編(掌編)評価

仏文等に比較して「ドイツ文学における短編小説」の特色を述べた文章の中で
カフカの「掌編」を大絶賛

ドイツの短篇小説(川村二郎)『ドイツ短篇24』所収
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タイトル ドイツ短篇24
タイトルよみ ドイツ タンペン ニジュウシ
出版地 東京
出版者 集英社
出版年 1971
形態 390p ; 20cm
シリーズ名 現代の世界文学
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ドイツ短篇24 / 川村二郎 [ほか] 訳<ドイツ タンペン 24>. -- (BN02613662)
東京 : 集英社, 1971.11
390p ; 19cm. -- (現代の世界文学)
別タイトル: Moderne Deutsche Erzählungen
著者標目: 川村, 二郎(1928-2008)<カワムラ, ジロウ>

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ドイツ短篇24 / 川村二郎編<ドイツ タンペン 24>. -- (BN01081590)
東京 : 集英社, 1987
390p ; 19cm. -- (現代の世界文学) -- 新装版
ISBN: 4087730808(新装版)
別タイトル: Moderne deutsche Erzählungen
著者標目: 川村, 二郎(1928-2008)<カワムラ, ジロウ>

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目次

暦物語(ヘーベル著 川村二郎訳)
拾い子(クライスト著 中田美喜訳)
秋の惑わし-一つのメールヘン(アイヒェンドルフ著 高橋英夫訳)
狂ってゆくレンツ(ビューヒナー著 手塚富雄訳)
死人に口なし(シュニッツラー著 岩淵達治訳)
バソムピエール元帥綺譚(ホフマンスタール著 福田宏年訳)
ユリアン(カスナー著 円子修平訳)
ある愛の物語(ハインリヒ・マン著 佐藤晃一訳)
駅長ファルメライアー(ロート著 渡辺健訳)
誕生日(ベン著 飯吉光夫訳)
狂人(ハイム著 飯吉光夫訳)
ホテルの階段(ヴェルフェル著 小栗浩訳)
トゥンのクライスト(ヴァルザー著 城山良彦訳)
断食芸人(カフカ著 城山良彦訳)
ポルトガルの女(ムージル著 福田宏年訳)
ささやかな幻滅(ヘルマン・ブロッホ著 松本道介訳)
マルス(ランゲッサー著 渡辺健訳)
北極星と牝虎(ヤーン著 種村季弘訳)
カサンドラ(ノサック著 小栗浩訳)
縛られた男(アイヒンガー著 高本研一訳)
ぼくの緑の芝生(グラス著 高本研一訳)
郵便屋シュヴァルの大いなる夢(ヴァイス著 種村季弘訳)
薄暗がりを愛する男(アンデルシュ著 高本研一訳)
ベーレンドルフ(ボブロウスキ著 藤川芳朗訳)
ドイツの短篇小説(川村二郎)

2011-10-19

『ベルリン 地下都市の歴史』(ベルリンチカトシノレキシ)

著編者: ディートマール・アルノルト、フリーデル・ザルム、イングマール・アルノルト著、DietmarArnold原著、FriederSalm原著、IngmarArnold原著
訳者: 中村康之訳
ISBN: 9784887217935
価格(税込): ¥3,990
判頁: A5判/258頁
刊行: 2011年9月
東洋書林
原書名:Dunkle Welten
Bunker, Tunnel und Gewölbe unter Berlin
(ベルリンの地下にある、退避壕・掩蔽壕、トンネル、アーチ・丸天井・円天井)

■概要
冥界からの新たな誘い・・・。
好評の地下都市シリーズ、舞台はいよいよナチスの影を色濃く残すドイツ・ベルリンへ!諜報員、工作員が跋扈する「隠密活動の首都」ではいったい何がおこなわれていたのか?秘密墓所、装甲室、火薬庫、貯水場、幽霊駅、気送管郵便などといった、ヨーロッパの最先端をいく古都の内奥を巡る現代の「ダンテ」たち。

ヴァイマール文化の精華たる首都に設えられた地下建造物は、防空という至上命令の下、市全域に根を張る史上最大の要塞へと変貌した。
ナチス第三帝国の心臓部、米ソ対立の最前線となり、地の底から世界を揺るがした20世紀を象徴する闇の牙城を踏査する。

Die geheimnisvollen dunklen Welten unter Berlin sind für die
Öffentlichkeit nicht zugänglich und selbst den Verantwortlichen der
Stadt geben sie mitunter Rätsel auf. Viele Dokumente gingen im Krieg
verloren, so daß immer wieder neue unterirdische Anlagen auftauchen.
Die Autoren des Buches haben es sich mit ihrem Verein »Berliner
Unterwelten« zur Aufgabe gemacht, Licht in dieses Dunkel zu bringen.
Sie durchforschten in- und ausländische Archive, befragten Zeitzeugen
und erkundeten vor Ort Bahnhöfe ohne Gleisanschluß, Verbindungsgänge
ohne Ausstieg und Betonkolosse ohne jede Funktion. Sie erzählen die
Geschichte der vielfältigen Nutzung des Berliner Untergrundes und
berichten dabei von Gruften und Brauereikellern genauso wie von
Kanalisationsschächten, Rohrpostleitungen, Bunkern und »Blinden
Tunneln«.

■目次

ベルリン地下世界入門
第1章 建築基礎と土台
第2章 「出口なきトンネル」と行き止まりの軌道
第3章 地下壕と爆弾
第4章 瓦礫の山と逃亡トンネル
第5章 地下の闇社会
第6章 変革と新たな次元
エピローグ
解説・池内 紀
索引
参考文献

■原書 目次
7 Alfred Kernd'l: Geleitwort (1997)
8 Ingeborg Junge-Reyer:
Vorwort zur 8. Auflage (2007)
10 Otto Schmelzer (1896):
Das Buddeln will nicht enden
12 Dietmar Arnold: Mein erster Einstieg
14 Leitfaden durch die Berliner Unterwelten

■19 Fundament und Grundung
20 Graben und Befestigungen
22 Kasematten und Pulvermagazine
23 Wasserspeicher und Filtergewolbe
25 Brauereikeller und Weinschanken
29 Vom Rinnstein zur Kanalisation
43 Rohrpost . die kleine U-Bahn Berlins
45 Gruften und Denkmale

■58 ≫Blinde Tunnel≪ und tote Gleise
59 AEG-Versuchstunnel in Wedding
61 Spreetunnel Stralau . Treptower Park
63 Der Lindentunnel fur die
Strasenbahn
65 Erste ≫Unterpflasterbahnprojekte≪
66 Das U-Bahnnetz entsteht
(1896.1919)
81 Die zweite Bauphase der U-Bahn
(1920.1930)
87 U-Bahnbau im ≫12jahrigen Reich≪
(1933.1945)
91 Die U-Bahn in der gespaltenen Stadt
(1945.1961)
93 Neue Tunnel und ≫Phantomlinien≪
(1961.1989)
95 ≫Blinde Tunnel≪ bei der S-Bahn
98 Fusganger- und Autotunnel

■101 Bunker und Bomben
113 Das ≫Fuhrer-Sofortprogramm≪
118 Attentate aus dem Untergrund
120 Beton gegen Bomben
132 Rustungsindustrie unter der Erde
137 Endkampf im Tunnel
140 ≫Fuhrerbunker≪ und Anlagen
an der Wilhelmstrase

■146 Trummerberge und Fluchttunnel
148 Bunkerzertrummerung und Ubererdung
152 Kalter Krieg und neue Bunker
162 ≫Ruf nicht mehr an!≪ . die Post nach 1945
164 Berlin . Hauptstadt der Agenten
166 ≫Subversive Wuhlereien≪
170 ≫Geisterbahnhofe≪
172 Flucht mit der U-Bahn

■175 Unterwelt im Untergrund
175 ≫Tresoreinbruch≪ in der Literatur
177 Tresoreinbruch in der Realitat
181 Der Zehlendorfer Tunnelcoup
184 Die Beutetouren von ≫Dagobert≪

■186 Umbruche und neue Dimensionen

■208 Epilog

218 Anmerkungen
227 Literaturverzeichnis
230 Abbildungsnachweis
231 Personenregister
232 Sachregister
(mit Strasen- und Ortsangaben)
239 Zu den Autoren


■著者
アルノルト,ディートマール[アルノルト,ディートマール][Arnold,Dietmar]
1964年生まれ。ベルリン工科大学で都市・地域計画を専攻。1997年に社団「ベルリン地下世界」を設立、筆頭理事長となる

アルノルト,イングマール[アルノルト,イングマール][Arnold,Ingmar]
1967年生まれ。ベルリン自由大学およびフンボルト大学卒。社団「ベルリン地下世界」の共同設立者で、研究部門を担当

ザルム,フリーデル[ザルム,フリーデル][Salm,Frieder]
1962年生まれ。ベルリン市立光学・写真技術専門学校で学び、1986年よりフリーのカメラマン。主に記録用、宣伝用の写真を手がけ、地下壕をテーマとしたドキュメンタリー映画も撮影している

中村康之[ナカムラヤスユキ]
1963年山口市生まれ。金沢大学文学部文学科卒。社内翻訳者として特許・法務翻訳に携わったのち、ドイツ語翻訳者として独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

2011-10-18

『建築のエロティシズム—世紀転換期ヴィーンにおける装飾の運命』

タイトルからはわかりにくいが、カフカ研究者必携の書
田中純先生の、円熟の結晶、ご本人が自負しているとおり、
世紀転換期ウィーンの「少なくとも時代の核と見なしうるような文化現象の精髄については、ここで凝縮して示しえた」!!
という本です

カフカ作品では、『訴訟』の猥雑さ、『流刑地』の装飾についてもちろん触れており
『カフカの衣装』(アンダーソン)を「瞠目すべき研究」としている

ロースとカフカ、ヴァイニンガーとカフカ、「独身者の機械」
など、カフカ研究の立場からみれば、なにも目新しい指摘はないかもしれない

けれども、ウィーン在住でモード記事を書いていた女性ミレナとの交際、
かたや「ベルリン」という、もうひとつの一大中心地との関係までも含めて
「カフカのエロティシズム」を、このくらいの密度で書けたら・・・


『建築のエロティシズム—世紀転換期ヴィーンにおける装飾の運命』
著者: 田中 純 【著】
出版社: 平凡社
発売日: 2011年10月
発行形態: 新書
ISBN: 9784582856118
(458285611X)
税込価格: 819円

■内容紹介
一九世紀末から二〇世紀初頭のヴィーンを舞台に、装飾がそこで担った意味の分析を通じて、近代建築のエロティシズムを考察した意欲作。

19世紀末から20世紀初頭のヴィーンを舞台に、装飾が担った意味の分析から、建築のエロティシズムを考察。ロース、フロイト、カフカ、ヴィトゲンシュタイン等、文学・芸術・思想が織りなす論理にこそ建築の官能性は宿る。


■目次

はじめに


第1章 オーストリアの終焉 聖なる春のヴィーン

価値真空の装飾
様式の問題
技術との対決
反撃する建築家
眼の停止点
旧世界の墓碑のために


第2章 建築家のダンディズム アドルフ・ロース

ダンディの法
婦人服のモード
カルマの館
モードの終わり?


第3章 反フェミニストの遺書 オットー・ヴァイニンガー

「性と性格」
セックスしかない女、セックスを超越した男
女は存在しない
女としてのユダヤ人
ロースとヴァイニンガー


第4章 装飾と犯罪 アドルフ・ロース2

ダンディによるオタク批判
装飾と性衝動
ダンディとしてのわれわれ
ロース・ハウスのスキャンダル
装飾の犯罪学
カフカにおける「装飾と犯罪」


第5章 装飾としてのペニス ジークムント・フロイト

フェティシズムの構造
装飾と去勢
超自我の生成
倒錯者の戦略


第6章 両性具有の夢 アドルフ・ロース3

女性的な剰余空間
被膜の原理と写真嫌い
文字の去勢
破壊する建築家


第7章 恐るべき子供たち1 オスカー・ココシュカ

アルマとの恋愛体験
フェティッシュとピグマリオン
人形愛という狂気
皮剥ぎと女の欲望


第8章 恐るべき子供たち2 ルードヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン

ヴィトゲンシュタインの建築
扉と窓の明晰化
独身者と花嫁
法と倫理のエロティシズム


おわりに

ガラスのペニス
装飾の運命


あとがき

2011-10-17

「カフカの小説のような、構造が全部ぬけたテントの梁(はり)みたいな小説が好きなんだ。外から見ただけでは中身がまったく想像できない作品。一つ一つのイメージはとても明瞭なんだが、横に並んでいたものがいつの間にか縦に見えてくる迷宮のような作品だ」

「カフカの小説のような、構造が全部ぬけたテントの梁(はり)みたいな小説が好きなんだ。外から見ただけでは中身がまったく想像できない作品。一つ一つのイメージはとても明瞭なんだが、横に並んでいたものがいつの間にか縦に見えてくる迷宮のような作品だ」

安部公房——自由、無国籍な「世界文学」(忘れがたき文士たち)
2011/10/16日曜 日本経済新聞 朝刊 23ページ 1871文字
記事署名:編集委員 浦田憲治

1991年12月20日、東京・新宿の京王プラザホテル内の、会員制クラブで、安部公房さんにじっくり話を聞いたことがあった。7年ぶりに長編小説『カンガルー・ノート』を刊行したばかりだった。
 安部さんは大江健三郎さんと並んで日本のノーベル文学賞の有力候補だった。代表作『砂の女』はフランスで日本人として初めて最優秀外国文学賞を受賞し、勅使河原宏監督が手がけた映画はカンヌ映画祭で審査員特別賞に輝いた。『壁』『他人の顔』『燃えつきた地図』などの主要作品はほとんど外国で翻訳され、「前衛作家」として世界的な名声を得ていた。しかし、日本では「前衛の時代」が過ぎ去っていたこともあり、人気は下降ぎみだった。
 安部さんは多少、そのことを気にしていたように見えた。洋酒が並んだラウンジで自身の文学についてこう語った。
 「僕の作品は少しも難しくはないんだ。知的レベルの高い人物は決して登場させてこなかったし、目で見えているふつうのことしか書かない。観念的な言葉も使わない。読者がその人なりの感性で自由に読めるように書いているつもりだ」
 たしかに安部さんの文学は様々な楽しみ方ができた。関心を寄せるカフカやルイス・キャロルやガルシア=マルケスなどの作家のように奇妙なイメージや巧みな物語の運びで読者をぐいぐい引きずり込んでいく。ミステリーのように読めるし、哲学的、寓話(ぐうわ)的な作品としても楽しめる。テーマや意味が一つに固定せずに、拡散しているのが魅力だった。
 例えば、砂丘に昆虫採集に出かけた男が、謎の女が住む砂の穴に閉じ込められてしまう『砂の女』。男は穴から脱出しようと何回も逃亡を試みるが、その度(たび)に失敗してしまう。やがて男は砂穴の生活に順応し始め、脱出の機会が訪れてきても逃げようとはしなくなる。
 主人公に「拘束」のなかに「自由」を探る実存主義者の姿を見いだすことができる。あるいは国家と現代人の関係を風刺しているとも読める。
 「カフカの小説のような、構造が全部ぬけたテントの梁(はり)みたいな小説が好きなんだ。外から見ただけでは中身がまったく想像できない作品。一つ一つのイメージはとても明瞭なんだが、横に並んでいたものがいつの間にか縦に見えてくる迷宮のような作品だ」と語った。
 たしかに安部文学はSF的、超現実主義的、幻想的、寓話的、迷宮的で、どれをとっても前衛的だった。日本の伝統や民族性からは自由な、無国籍の「世界文学」だった。幼少時に父母と満州(現・中国東北部)に渡り、異郷の地で敗戦の混乱を体験したことで、国家に縛られない自由な発想や歴史観を養った。個人を飲み込む共同体のあり方に疑問を抱くようになり、人間の裸の姿を共同体の外部から冷静に見つめるようになった。
 東大医学部出身の秀才で、数学や科学に強く合理的思考の持ち主だった。機械にも強く、高級カメラ、ビデオ、シンセサイザーを愛用し、スポーツ車を乗り回した。日本の作家では初めてワープロを使って長編小説『方舟さくら丸』を書いたことでも話題になった。当時は小説にはワープロは適さないという空気が支配的だったが「脳に連動するのは目で、目で確認しながら打てば、手で書くのと変わりない」と擁護した。ワープロだとふつうは作品が長くなりがちだが、安部さんはその逆で、ワープロを使って徹底的に推敲(すいこう)したり、原形をとどめないほどに削ったり、どんどん短くしていった。
 あまり知られていないのが、官能性だ。映画「砂の女」では岸田今日子さんが好演していたが、安部さんの作品には、必ず不思議なエロチシズムをたたえた女性が登場する。
 ユーモアにも富んでいた。『方舟さくら丸』の「ユープケッチャ」という虫のような、おかしな仕掛けが登場した。遊び好きで、表紙カバーには『箱男』ではゴミの写真を、『カンガルー・ノート』ではすっぽんの頭の骨の写真を使った。
 安部さんはインフルエンザで倒れて入院し、93年1月22日に急逝した。東京調布市の自宅で行われた葬式は「死んで焼かれれば炭酸カルシウムになるだけ」と語った安部さんらしく、一切の情緒的なものを排した無宗教の簡素なものだった。
日本代表する前衛作家
あべ・こうぼう(1924〜1993)東京生まれ。少年期を満州(現・中国東北部)で過ごす。東大医卒。51年「壁—S・カルマ氏の犯罪」で芥川賞。『砂の女』『他人の顔』『燃えつきた地図』『箱男』『密会』『方舟さくら丸』『カンガルー・ノート』と長編を発表。戯曲に『友達』『棒になった男』などがある。

2011-10-14

出版記念トークの会「カフカ×高橋悠治×保坂和志 わたしたちの書きかた/つくりかた」お知らせ(予約受付終了)

高橋悠治『カフカノート』と『カフカ/夜の時間』の二冊が2011年10月21日にみすず書房から刊行されるのを記念して
高橋悠治と保坂和志のトーク「カフカ×高橋悠治×保坂和志 わたしたちの書きかた/つくりかた」開催

※完売のため予約受付終了

カフカについてぐるぐると考え続けるふたりのトーク。
当日は、まだ書店に並ぶ前の出来たての本の販売もあり。

■日時
2011年10月22日(土)15時30分開場 16時スタート
■会場
スタジオイワト 千代田区西神田3−8−5 ビル西神田1F
水道橋/九段下/神保町より徒歩6分

■定員 60名(お電話/メールにてお申し込み先着順)
■入場料 1000円 (お釣り銭のないようにご用意下さい)

2011-10-11

クライスト没後100年とカフカ

カフカが見たかもしれない雑誌と、クライスト没後100年を意識していたとはっきりわかる日記の書きこみ

Karl Walser: Heinr. v. Kleist's Grab am Wannsee. In: Die Jugend, Nr. 46 (1911)
http://www.stadt-zuerich.ch/content/kultur/de/index/institutionen/museum_strauhof/Ausstellungsprogramm_2010/heinrich_von_kleist/texte-und-bilder---pressematerial/jcr:content/mainparsys/imageset_1/image3.popup.html

JUGEND 46-1911 Jugendstil. Heinrich von Kleist - Nummer

JUGEND. Münchner illustrierte Wochenschrift für Kunst und Leben. 1911,
Nr.46. Heinrich von Kleist-Nummer, 100. Todestag. Illustrationen u. a.
von: Max Slevogt (vgl. Abb), Karl Walser, Angelo Jank, Jul. Diez.
Texte: Heinrich von Kleist an Ulrike; Der unbekannte Kleist, von
Arthur Eloesser; Marionetten, Menschen, Götter, zum 100. Todestage
Heinrich v. Kleist, von Dr. S. Friedlaender.

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[Tagebuch, 23. November 1911; Donnerstag]

23. XI 11 am 21. dem 100jährigen Todestag Kleists ließ die Familie
Kleist einen Kranz auf sein Grab legen mit der Aufschrift: "Dem Besten
ihres Geschlechts"

2011-10-06

プラハガイド2冊

タイトル ストラホフ修道院
責任表示 [ストラホフ・プレモントレ会修道院ストラホフ図書館][編]
出版地 プラハ
出版者 ウ・ラーイ‖ウ ラーイ
出版年 2008
形態 72p ; 20cm
注記 執筆:エヴェモルド ゲイザ・シドゥロフスキーほか
ISSN 1213-6514
ISBN 978-80-86758-58-9

ストラホフ‐しゅうどういん【ストラホフ修道院】《 Strahovsk klter
》チェコの首都プラハの中心部にある修道院。12世紀にブラジスラフ公によりプレモントレ会の修道院として創設。中世から受け継がれる貴重な蔵書がある図書館のほか、18世紀に描かれた天井のフレスコ画が有名。

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タイトル The Klementinum : a guide / Petra Oulikova.
版表示 1st ed.
出版地 Prague
出版者 National Library of the Czech Republic
出版年 2006.
形態 76 p. ; 24 cm.
ISBN 8070504927
ISBN 8070504919 ((Czech ed.))
ISBN 8070504935 ((German ed.))

クレメンティヌム 【Klementinum】チェコの首都プラハの中心部、旧市街にある複合建築物。11世紀創建の聖クレメントに捧げられた教会がドミニコ会の修道院になり、16世紀にイエズス会が神学校として利用した。続いてマリア=テレジアの時代に図書館、天文台、大学施設などが建てられた。現在は国立図書館として利用される。