2012-10-30

グスタフ・ヤノーホ『カフカとの対話——手記と追想』吉田仙太郎訳 三谷研爾解説

 2012年11月1日配本 (1冊)
『カフカとの対話——手記と追想』
グスタフ・ヤノーホ 吉田仙太郎訳 三谷研爾解説
2012年11月1日発行予定

始まりの本
カフカとの対話
[著者] グスタフ・ヤノーホ [訳者] 吉田仙太郎 [解説] 三谷研爾

四六変型判 タテmm×ヨコmm/384頁
定価 3,990円(本体3,800円)
ISBN 978-4-622-08359-7 C1398

——「では、ヘル・ドクトル、真実はわれわれに永遠に閉ざされているとお考えなのですね」
カフカは黙った。彼の眼は非常に細く、暗い影を帯びた。彼の大きく突き出た咽喉仏が、首の皮膚の下で何度か上下するのが見えた。彼はしばらく、事務机の上に支えた両手の指先を見つめていた。やがて彼はしずかに言った。「神、生命、真実——これらは一つの事実の異名にすぎません」
私は執拗につづけた。「われわれにそれを把握することができるのですか」「それを体験するのです」そう言うカフカの声には、かすかな不安がふるえていた。——

始まりの本
現代の古典・新シリーズ

「始まりが存在せんがために人間は創られた」(アウグスティヌス)
「人間はそれ自らが始まりである」(H・アーレント)
「始まりとは〈差異をつくる〉ものだ」(E・サイード)

始まりとは始原(オリジン)。
そこから生い育つさまざまな知識の原型が、
あらかじめ潜在しているひとつの種子である。
新たな問いを発見するために、
いったん始原へ立ち帰って、
これから何度でも読み直したい現代の古典。
未来への知的冒険は、ふたたびここから始まる!
このシリーズの特色

■人文諸科学はじめ、知が錯綜し、新たな展望を示せない不透明な今の時代に、だからこそ〈始まり〉に立ち帰って、未来への指針を与える。
■トレンドからベーシックへ。これだけは押さえておきたい現代の古典。
■すでに定評があり、これからも読みつがれていく既刊書、および今後基本書となっていくであろう新刊書で構成する。
■ハンディな造本、読みやすい新組み、新編集。

2012-10-24

『ディケンズ文学における暴力とその変奏 —生誕二百年記念—』

松岡 光治 編
A5判, xii+288ページ
定価 3,150円(本体 3,000円+税)
ISBN 978-4-271-21016-0


2012年は国民的人気を博したヴィクトリア朝の作家—1812年2月7日(金)に生まれたチャールズ・ディケンズ—の生誕二百年にあたります。
 その記念事業の一環として企画された本書は、ディケンズ・フェロウシップ日本支部の会員15名が、彼の15の長篇小説をそれぞれ担当し、〈暴力〉に焦点を絞って書いた論文のアンソロジーです

 それぞれの章には扉絵と4つの図版が掲載されており、ディケンズ文学だけでなくヴィクトリア朝における暴力問題が様々な角度から論じられています。



目 次

まえがきに代えて——暴力と想像力

序 章 「抑圧された暴力の行方」 (松岡光治)
 第1節 産業革命期とヴィクトリア朝の社会風潮
 第2節 暴力のジェンダー化と二重規範
 第3節 抑圧の移譲と階級問題の解決策
 第4節 ショーヴィニズムによる人種差別

第1章 『ピクウィック・クラブ』 (中和彩子)
 「ピクウィック氏のげんこつ」
 第1節 暴力の抑圧
 第2節 暴力と身分
 第3節 一発のげんこつ
 第4節 もう一発のげんこつ

第2章 『オリヴァー・トゥイスト』 (松岡光治)
 「逃走と追跡——法と正義という名の暴力」
 第1節 孤独からの逃走
 第2節 追跡の快楽
 第3節 恣意的な暴力としての法
 第4節 正義に内在する暴力性

第3章 『ニコラス・ニクルビー』 (西垣佐理)
 「喜劇としての暴力——舞台と社会の間」
 第1節 喜劇およびメロドラマの伝統と暴力場面の意義
 第2節 舞台背景としての社会問題
 第3節 劇的効果を生み出す暴力
 第4節 〈喜劇〉から〈小説〉へ

第4章 『骨董屋』 (猪熊恵子)
 「音の海を逃れて」
 第1節 傷跡に語らせよ
 第2節 クウィルプの声、その暴力
 第3節 食い違う語り手のシルエット
 第4節 「その話はもうやめろよ、チャーリー」

第5章 『バーナビー・ラッジ』 (渡部智也)
 「眠りを殺す」
 第1節 究極の暴力としての断眠
 第2節 眠りが奪われる
 第3節 眠りを取り戻せ
 第4節 暴動はまた起こるのか

第6章 『マーティン・チャズルウィット』 (畑田美緒)
 「声なきものたちの逆襲」
 第1節 権威の喪失
 第2節 老人たちの復権
 第3節 暴力依存と死者の告発
 第4節 新大陸VS旧大陸

第7章 『ドンビー父子』 (松村豊子)
 「疾走する汽車と暴力」
 第1節 決闘の封印
 第2節 虐待の激化
 第3節 家庭内における暴力の規制と抑制
 第4節 線路は続くよ、どこまでも

第8章 『デイヴィッド・コパフィールド』 (川崎明子)
 「海の抑圧——ロビンソン・クルーソー挽歌」
 第1節 暴力をふるう海
 第2節 船に乗るスティアフォース
 第3節 浜に揚がるエミリー、川を嘆くマーサ
 第4節 陸を選ぶデイヴィッド

第9章 『荒涼館』 (中村 隆)
 「国家・警察・刑事・暴力装置」
 第1節 国家という暴力装置
 第2節 無名の警官の暴力
 第3節 警察という暴力装置
 第4節 バケットの暴力

第10章 『ハード・タイムズ』 (玉井史絵)
 「教育の(暴)力」
 第1節 教育と暴力
 第2節 学校教育と徒弟教育
 第3節 「合理的な学校」
 第4節 〈娯楽〉という教育

第11章 『リトル・ドリット』 (武井暁子)
 「内向する暴力——病的自傷者はなぜ生まれるのか」
 第1節 病的自傷の定義
 第2節 自傷の要因
 第3節 ヤマアラシのジレンマ
 第4節 排除/矯正される自傷者

第12章 『二都物語』 (矢次 綾)
 「孤独な群衆の暴力性」
 第1節 未曽有の大事件を記述する
 第2節 ディケンズによるサンキュロティズムの研究
 第3節 群衆が潜在的に保持する暴力性
 第4節 群衆の孤独と暴力性

第13章 『大いなる遺産』  (鵜飼信光)
 「種子=ピップは牢を破って外で花を咲かせるか」
 第1節 穏やかどころではない人々
 第2節 「そんなにも多くの小さな引き出し」
 第3節 取り壊されたサティス・ハウス
 第4節 打つことの暴力と建設、逃げ続ける一人の囚人

第14章 『互いの友』 (宮丸裕二)
 「腕力と知力——欲望と階級」
 第1節 階級と肉体の結びつき
 第2節 暴力と知性に挟まれる中産階級
 第3節 中産階級に残像として映る傷跡に充ちた世界
 第4節 肉体性忌避の現代

第15章 『エドウィン・ドルードの謎』 (加藤 匠)
 「クロイスタラムに潜む闇の暴力」
 第1節 過去の痕跡
 第2節 「別種の恐ろしい奇跡」
 第3節 直観と論理
 第4節 クロイスタラムに落ちる帝国の影

あとがき

使用文献一覧

図版一覧

執筆者一覧

索引

2012-10-19

ハプスブルク帝国の最後の財務相Josef Redlich (1869-1936)遺産

オーストリア国立図書館に寄贈された。

Bemerkenswert sind vor allem die Briefwechsel mit berühmten
Persönlichkeiten wie Hugo von Hofmannsthal, Hermann Bahr, Felix
Salten, Ignaz Seipel, Karl Renner, Richard Coudenhove-Kalergi oder
Alice Schalek.

Als Jurist und Universitätsprofessor korrespondierte er mit
zahlreichen Intellektuellen seiner Zeit. So finden sich im Nachlass –
neben privaten Aufzeichnungen, Fotografien und Materialien zu Redlichs
wissenschaftlichen Arbeiten – äußerst umfangreiche Korrespondenzen mit
herausragenden Persönlichkeiten des literarischen und öffentlichen
Lebens: Hermann Bahr (296 Briefe), Hugo von Hofmannsthal (64 Briefe),
Joseph Maria Baernreither, Edmund Bernatzik, Richard
Coudenhove-Kalergi, Heinrich Friedjung, Michael Hainisch, Thomas G.
Masaryk, Karl Renner, Felix Salten, Alice Schalek, Ignaz Seipel oder
Jakob und Julie Wassermann.

Tagesaktuelle Einblicke in die „Schicksalsjahre Österreichs" 1908 – 1918

Gerade in den Tagebüchern berichtet der österreichische Politiker und
Gelehrte tagesaktuell über die „Schicksalsjahre Österreichs" von 1908
bis 1918 und erlaubt so einen Einblick in das politische und
gesellschaftliche Geschehen des habsburgischen Vielvölkerstaates.
http://www.onb.ac.at/services/presse_21094.htm

2012-10-18

近現代のドイツ系ユダヤ人の各種資料を提供する“DigiBaeck”公開

franzkafkaで検索すると、36件ヒット
Fanta, Berta夫人の日記や、プラハサークルの貴重な資料も多数


2012年10月16日、Internet Archiveは、Leo Baeck
Institute(LBI)とともに開発した"DigiBaeck"を公開しました。"DigiBaeck"は、LBIが所蔵する、16世紀から20世紀の第二次世界大戦までのドイツ系ユダヤ人のアーカイブズ資料や手稿資料、それらの人々が作成した芸術作品、図書、雑誌、写真、オーディオ記録のデジタル化資料を提供するゲートウェイサイトとのことです。

DigiBaeck
http://www.lbi.org/digibaeck/

Launch of the DigiBaeck Project (Ineternet Archive Blog 2012/10/15付けの記事)
http://blog.archive.org/2012/10/15/launch-of-the-digibaeck-project/

2012-10-16

Court orders Kafka scripts moved to Israel library

Court orders Kafka scripts moved to Israel library
October 15, 2012(Mainichi Japan)

JERUSALEM (AP) -- After a long, tangled journey that Franz Kafka could
have written about himself, an unseen treasure of writings by the
surrealist author will be put on display and later online, an Israeli
court ruled in documents released Sunday.

Ownership of the papers had been in dispute after the Israeli National
Library claimed them, over the wishes of two sisters who had inherited
the vast collection of rare documents from their mother and insisted
on keeping them.

Friday's ruling by the Tel Aviv District Family Court ordered the
collection to be transferred to the library in Jerusalem, which had
argued that Max Brod, Kafka's close friend, had bequeathed the
manuscripts to the library in his will.

The two sisters, Eva Hoffe and Ruth Wiesler, had inherited the
documents from their mother, Brod's secretary, and had been storing
them in a Tel Aviv apartment and bank vaults.

Kafka, a Jewish Prague native who wrote in German, is known for his
dark tales of everyman protagonists crushed by mysterious authorities
or twisted by unknown shames. His works have become classics, like
"The Metamorphosis," in which a salesman wakes up transformed into a
giant insect, and "The Trial," where a bank clerk is put through an
excruciating trial without ever being told the charges against him.

The trove is said to include Brod's personal diary and some of Kafka's
writings, including correspondence the two kept with other notable
writers, which could shed new light on one of literature's most
influential figures.

The German Literary Archive was not part of the legal proceedings but
had backed the sisters' claims, hoping to purchase the manuscripts and
arguing that they belong in Germany.

Ulrich Raulff, who heads the archive, said the papers have drawn great
interest because they will likely reveal much about the years in
Kafka's life that the public knows very little about.

"I hope that the Israeli National Library will provide open access to
the material for the public as soon as possible," he said.
"Researchers have been waiting for the material with excitement for
years already."

Kafka gave his writings to Brod shortly before his own death from
tuberculosis in 1924, instructing his friend to burn everything
unread. But Brod instead published most of the material, including the
novels "The Trial," ''The Castle" and "Amerika."

Aviad Stollman, Judaica Collections Curator at the National Library,
said that the majority of the manuscripts are by Brod not Kafka, but
that they contained tremendous research and sentimental value.

"For decades these manuscripts were hidden and now we can display and
preserve them under proper conditions," he told Israel's Channel 2 TV.

"There are 40 thousand pages, a tremendous amount," he added. "Whoever
loves Kafka will be able to see his signature and notes and crossings
outs ... We hope the material will be on the library's website soon."

Despite the ruling, Hoffe will be entitled for royalties from any
future publication of the documents.

Professor Otto Dov Kulka, a self-described Kafkaphile and retired
professor of history at Israel's Hebrew University, supported the
court decision.

"The National library has taken care of Einstein's theory of
relativity, and we will now take care of the great works of Kafka," he
said.

October 15, 2012(Mainichi Japan)

カフカの遺稿、所有権はイスラエル国立図書館に

カフカの遺稿、所有権はイスラエル国立図書館に 未発表作品も

2012年10月15日 15:12 発信地:エルサレム/イスラエル

【10月15日 AFP】現在のチェコ出身の作家フランツ・カフカ(Franz Kafka)が友人マックス・ブロート(Max
Brod)氏に託した遺稿は、イスラエルの国立図書館に寄贈されるべき——。40年以上にわたり個人の手元にあったコレクションをめぐり、イスラエル・テルアビブ(Tel
Aviv)の裁判所がこのような判決を下した。

■プラハからパレスチナ、そしてドイツへ—ユダヤ系作家の遺稿の旅

 オーストリア・ハンガリー帝国(現チェコ)のプラハ(Prague)に生まれたカフカは1924年、40歳のときに友人のブロート氏に全ての原稿類を預け、自分の死後に焼却するよう指示した。だが、カフカ作品は20世紀で最も影響力のある文学の1つだと考えたブロート氏は、カフカの遺志を無視しドイツ語で出版した。

 1939年にブロート氏は英委任統治下のパレスチナへと逃れる。カフカの未発表作品などを含む同氏のコレクションは、1968年に死去する際に秘書のエステル・ホフェ(Esther
Hoffe)氏が相続し、銀行に保管しつつ一部を売却するなどした。その後、コレクションは2007年にホフェ氏の娘2人の手に渡った。

 現在、遺稿の一部はドイツのマールバッハ(Marbach)にあるドイツ文学史料館(German Library
Archive)が収蔵しており、さらなる遺稿収集に意欲を見せている。

■「ブロート氏が公共機関への譲渡を指示」と認定

 コレクションの所有権をめぐる裁判は2008年に始まった。国立エルサレム・ヘブライ大学(Hebrew University of
Jerusalem)の所有権の主張に対し、ホフェ氏の娘たちは、ブロート氏のコレクションはホフェ氏への贈り物だったと反論していた。

 しかしこのほど裁判所は、ブロート氏がホフェ氏に向かってはっきりと、コレクションの目録を作成し「ヘブライ大学かテルアビブ市立図書館、あるいはイスラエル国内外の公共機関」に譲渡するよう指示していたと認定。「ブロート氏のコレクションなどのカフカの遺稿」をホフェ氏の娘たちへの贈り物とみなすことはできないとして、ヘブライ大の要求通りのコレクションを同大に引き渡すよう命じた。(c)AFP

2012-10-12

「ネズミの驚くべき才能、合唱うたう」

ネズミは歌を覚え、再現することが出来るという発見が最近なされたが、ここに新たなセンセーションが加わった。ネズミは合唱をうたうことまで出来るという。実験を通じて、米国の学者らが明らかにした。

オスのネズミが数匹、メスの個体と一緒にケージの中にいるとき、彼らは歌い出す。各オスはリズムとメロディーを調節し、コーラス・アンサンブルを形成する。報告書に記された。隣の歌い手に合わせて、各個体が音程を調節することも明らかになった。

残念ながら、人間の聴力では、ネズミの「トリル」を完全に聴くことは出来ない。50から100キロヘルツという音域で歌うからだ。人間の耳には一部の音階が聴こえるのみで、「きいきい」鳴っているとしか感じられない。

これまでは、動物界でこうした能力を有しているのは鳥類だけだと考えられていた。

イタル・タス(12.10.2012, 05:14)

2012-10-11

日本独文学会研究叢書087『動物とドイツ文学』

日本独文学会研究叢書087
松村 朋彦編 動物とドイツ文学
Tiere in der deutschen Literatur, hrsg. von Tomohiko MATSUMURA
松村 朋彦 まえがき
松村 朋彦 猿が言葉を話すとき— ホフマン、ハウフ、カフカ —
土屋 京子 動物の認識能力とはなにか
— 18世紀の動物に関する言説とホフマンの猫 —
川島  隆 人間のような犬と、犬のような人間
─ エーブナー=エッシェンバッハからカフカまで —
千田 まや 「犠牲」にみる神と人間と動物─ トーマス・マンを中心に ─