2010-04-21

『死のミメーシス ベンヤミンとゲオルゲ・クライス』

「死のミメーシス」とは、アドルノがベンヤミンを評した言葉。原語を直訳すると「死への模倣」となる。このアドルノの語法はドイツ語ではかなり異様らしい。死を模倣をすることができないのであるから、志向性は存在しないはずである。それでは「死のミメーシス」は「死への衝動」なのか。志向するのが「死せるもの」ではなく、なぜ「死」そのものだったのかという疑問が残ると著者は述べている。

本書は、ベンヤミンにおけるゲオルゲ・クライスのもつ意味や影響を論じたもので、30年以上にわたって書かれた論文を加筆訂正したり、新たな章を追加をし一書にした。ゲオルゲもベンヤミンも、どちらもボードレールを独訳者であるというそれだけの知識をもとにして論文を書いたのが始まりだったとある。

16頁に、
「ホーム」(Heim)
というものが当時のベルリンでどういうものであったか、というトピックが

目次
:様式・夭折-ありし日の若者たち
「神話」と「神話的なもの」(翻訳・姿勢-ボードレールの『白鳥』
異教・神学-バッハオーフェンと「宇宙論サークル」
原像・幻像-ゲオルゲ、クラーゲス、アドルノ)
再現のメディア(朗読・祭祀-パンヴィッツ、ベーリンガー、ヘリングラート
活字・筆跡-ゲオルゲ、クラーゲス
写真/相貌-ゲオルゲ、ダウテンダイ)
作品を読むベンヤミン(引用・転位-テクスト群としてのヘルダーリーン
句切/身体-ゲーテ、ヘルダーリーン、ゲオルゲ
形姿/歴史-ゲオルゲ、カフカ、クレー)

出版社名
:岩波書店

発行年月
:2010年3月

ページ数/版型
:330,16ページ/20

ISBNコード
:978-4-00-023475-7(4-00-023475-7)

ベンヤミンの思考は、今日もなお挑発し続ける。その思想の生成過程から、近代と反近代のはざまで、不可能な「第三の道」を探った精神の秘密に迫る。ゲオルゲとその周辺への親近と疎隔に隠された事情-神話的なものの豊饒な親和力から、「死」を梃子にして身を解き放とうとするベンヤミンの逆説的な身振りは、神話と革命、神話と純粋言語、神話と神学をめぐるその両義的な思考の道筋について、多くを語っている。「死のミメーシス」という生存を賭けた営みをテクストから掘り起こし、思想が跳躍する瞬間をハイスピードカメラでとらえる。