日本語研究書部門
川島隆 『カフカの<中国>と同時代言説 黄禍・ユダヤ人・男性同盟』(彩流社2010年)
選考委員
日本語部門・委員長:桑原聡
委員:金子元臣、小林英起子、清水誠、清水穣、杉谷眞佐子、竹岡健一、中直一、松村朋彦、山下仁
http://www.jgg.jp/modules/neues/index.php?page=article&storyid=911
日本語研究書部門
川島隆 『カフカの<中国>と同時代言説 黄禍・ユダヤ人・男性同盟』(彩流社2010年)
選考委員
日本語部門・委員長:桑原聡
委員:金子元臣、小林英起子、清水誠、清水穣、杉谷眞佐子、竹岡健一、中直一、松村朋彦、山下仁
http://www.jgg.jp/modules/neues/index.php?page=article&storyid=911
ある革命家の思い出 上(全2巻)
(平凡社ライブラリー 743)
P.クロポトキン=著
高杉一郎=訳
定価:1470 円(本体:1400 円) HL判 264頁 2011.09
ISBN978-4-582-76743-8 C0323 NDC分類番号 289.38
帝政ロシアの名門貴族に生まれながら、過酷な農奴制に疑問を持ち、学問と革命家への道を辿っていく姿が克明に描かれる。自伝文学の傑作と謳われ、上巻は24歳のシベリア探検までを収録。
■内容紹介
イメージ分析学の誕生
図像表現の細部に宿るパトスを一身に受けとめた美術史家アビ・ヴァールブルク。その妄想と錯乱を孕んだ思考のただなかに沸騰する情念の論理を精緻に解読し、20世紀思想史の未踏の領野を照らしだす耀かしい力作。
【第24回 サントリー学芸賞受賞】(思想・歴史部門)
■目次
序
第�部 両極性 1908‐1923
第一章 棄教者として
プロローグ—— �出身の�教授
ドイツ帝国の成り上がり者
「ユダヤ人」 というイメージ
シオニズムと同化の狭間で
戦争書誌学者の闘い
第二章 星辰の魔神たち
イメージの大移動
論理と魔術
宗教改革の占星(、、)政治
標語的イメージ
宿命論からの解放
アテネとアレクサンドリア
両極性の無気味さ
トリュフを探す豚のように
思考空間の崩壊
第三章 クロイツリンゲン、地獄篇
胡蝶との語らい
家父長制的アジール
不可視の虐待
聖なる喜劇の始まり
第四章 蛇儀礼講演
旅の回想/回想という旅
解読困難な再録羊皮紙(パリンプセスト)
畸形の誕生
神への侵入
不死なる蛇
啓蒙のエンブレム
破壊される観想空間
象徴と物神崇拝(フェティシズム)
「(癒しがたい) 精神分裂病患者の告白」
白昼夢のなかの言葉なき者(インファンス)
金枝の木霊(こだま)
第�部 情念 1886‐1907
第五章 ヴィーナスたち
フィレンツェ体験
感情移入をめぐる問い
附属物という細部—— ボッティチェリ論(一)
生活と芸術の相互浸透—— ボッティチェリ論(二)
情念と定型—— ボッティチェリ論(三)
一四〇〇年代(クアトロチエント)の夢解釈
絵画における夢の仕事
人類学的観相学に向けて
第六章 ニンフ=グラディーヴァ
オペラの誕生—— 悲劇の精神からの
ニンフへの恋
よみがえったニンフ=グラディーヴァ
死の女神たちの踊り
第七章 初期ルネサンス人たちの肖像
肖像画の図像魔術
同定のアポリア
蘇生の奇蹟
エネルギー象徴と調整心理学
ルネサンスと資本主義のエートス
第八章 イメージの病理学
情念の最上級表現
野獣の回帰
像(イメージ)の悪魔祓い
第�部 記憶 1924‐1929
第九章 記憶劇場のドラマトゥルギー
囚われ人の帰還
文庫の成長と変容
楕円形をした知の宇宙
「日本人ノ気質ヲ通シテ見タ、ハンブルク人ノ理念」
怪物から天球へ
歴史家としてのレンブラント
見者・霊媒・地震計—— ブルクハルトとニーチェ
第十章 よみがえる異教の熱狂 図像アトラス 「ムネモシュネ」(一)
占星術をめぐる展示計画
ライデン瓶としての集合的記憶
ヨーロッパの熱狂の源泉に向けて
「自然感情」 の変容
怪物(モンストラ)と聖体顕示台(モンストランツ)
第十一章 ヨーロッパ文化の夢分析 図像アトラス 「ムネモシュネ」(二)
「ムネモシュネ」 序文
図像アトラスの構成
聖体の秘蹟と犠牲の暴力—— 七十九番パネル
グリザイユによる幽霊譚の上演
古代の 「おもかげ」
自伝的純粋非理性批判
第十二章 ヴァールブルクのダイモン
英雄的狂気
エピローグ—— 林檎の老木
アビ・ヴァールブルク略年譜
註
書誌
図版一覧
跋
新装版に寄せて
■著者
田中純(たなか・じゅん)
1960年、宮城県仙台市生まれ。東京大学教養学部卒業。国際交流基金勤務をへて、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻は表象文化論、ドイツ文化研究。著書に、『残像のなかの建築』(未來社)、『都市表象分析�』(INAX出版)、『ミース・ファン・デル・ローエの戦場』(彰国社)、『死者たちの都市へ』(青土社)、『都市の詩学』(東京大学出版会、第58回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)、『政治の美学』(東京大学出版会、第63回毎日出版文化賞受賞)、『イメージの自然史』(羽鳥書店)など多数。
■書評(高山宏)
「『アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮』もそうであると言えるが、読者が限定されるモノグラフより、間口の広い今作『都市の詩学』の方が、田中純躍進のためには絶対好個のマニフェスト本だ。」
http://booklog.kinokuniya.co.jp/takayama/archives/2007/12/post_36.html
■内容紹介
「人はなぜアーティスト になりたがるのか」−芸術がアートと言い換えられるようになった80年代、カタカナ職業の増加と前後してアーティストという呼び名も溢れていった。
いまや美術界だけに留まらず、芸能・歌謡界、美容業界、工芸・クラフト界なども席巻する「アーティスト」たち。何故、アーティストと呼ばれたいのか。なにをもってア—ティスト/アートとするのか。多彩な切り口から「アーティスト」を考える。
■目次
美術家からアーティストへ
アーティストだらけの音楽シーン
芸能人アーティスト
『たけしの誰でもピカソ』と『開運!なんでも鑑定団』
職人とクリエイター
「美」の職人アーティスト達
私もアーティストだった
「アーティストになりたい」というココロ
■著者
大野左紀子 紹介
1959年、名古屋生まれ。東京芸術大学美術学部彫刻科卒業。
1983年より2002年まで美術作家活動を行う。現在、名古屋芸術大学、トライデントデザイン専門学校非常勤講師。著書『モテと純愛は両立するか?』(夏目書房)ほか。
http://d.hatena.ne.jp/ohnosakiko/
世界との違和を生きる
アーティストには「自分はアーティストである」「アート活動をしている」という自己認識がありますが、それがないにも関わらず「アーティスト」と呼ばれる人々がいます。正規の美術教育を受けておらず、ただ自分の中の不可解な表出欲にだけ突き動かされて、次々と「何か」を作ってしまう。作ったものがアート作品かどうか、人にどう見られるかなど考えもしない。そうした人々を指して「アウトサイダー・アーティスト」と呼びます。
近年ではヘンリー・ダーガーが有名です。引きこもりに近い極度の孤独の中で、何十年にも渡って描き続けられた膨大な量の絵が死後に発見され、その荒唐無稽なファンタジー世界は多くの人々を驚嘆させました。
アウトサイダー・アーティストに共通しているのは、「世界と自分との不調和」という強い違和の感覚です。自分にとってこの現実世界にはリアリティが感じられない。そこで生の実感を得ることはできない。だから、仮構の世界を強固に作り上げようとする。それは自らが現実世界に押し潰されないための、必要に迫られた行為です。いわゆる「アート活動」ではないのです。しかしこの「世界と自分との不調和」の感覚こそは、アーティストの創作動機の根底にあるものだと思います。
20世紀前半のアーティスト達の中には、個々の表現で従来の美術を塗り替えようとしただけでなく、革命や社会運動に身を投じこの現実を変えようとした人々が多くいました。もちろん世界は容易には変わってくれないし、従って違和感も簡単には消えなかった。が、それはやはり、自らが現実世界に押し潰されないための、必要に迫られた行為だったでしょう。
そのような止むに止まれぬ無為の行為とそこに賭けられた闇雲なエネルギーを、他に名付けようもなく「アート」と言うのです。「アート」はアーティストと名乗る者が作っているから「アート」なのではない。そう考えると、アートやアーティストに対する見方も変わってくるのではないでしょうか。
西岡兄弟 兄弟殺し フランツ・カフカ(訳--池内紀)原作
定価:1,575円(本体価格 1,500円+税)
ISBN:978-4-86332-170-0
西岡兄弟 バケツの騎士 フランツ・カフカ(訳==池内紀)原作
定価:1,365円(本体価格 1,300円+税)
ISBN:978-4-86332-141-0
西岡兄弟 ジャッカルとアラビア人 フランツ・カフカ(訳=池内紀)原作
定価:1,050円(本体価格 1,000円+税)
ISBN:978-4-86332-119-9
西岡兄弟 田舎医者 フランツ・カフカ(訳==池内紀)原作
定価:1,365円(本体価格 1,300円+税)
ISBN:978-4-86332-059-8
西岡兄弟 流刑地にて フランツ・カフカ(訳==池内紀)原作
定価:924円(本体価格880円+税)
ISBN:978-4-86332-008-6
■内容紹介
言葉のない場所に言葉を、
生命のない場所に生命を感じとる——。
アメリカ先住民やチカーノ、日系アメリカ人、そして沖縄の民らの
表現を媒介に、重層化する彼らの《アイデンティティ》を問い、
そして他者へと開かれてゆく、清冽な文学論
■目次
序 章 私(たち)はどこにいる
第1章 故郷という居場所
第2章 沈黙に寄り添う言葉
第3章 ラ・ヨローナとリオ・グランデ
第4章 新しい場所に根ざす
第5章 境域としての場所と身体
第6章 淵を居場所とする者たちへ
■著者
喜納 育江 キナ イクエ
研究分野
* 各国文学・文学論
* キーワード:アメリカ文学
現在の研究課題
* ネイティウ゛・アメリカンの文学
キーワード:ネイティウ゛・アメリカン , Chicano/A , 多文化主義
* エコフェミニズム
キーワード:フェミニスト批評 , エコクリティシズム
* 戦後沖縄とアメリカの異文化接触における女性
キーワード:ジェンダー , 文化研究 , ポストコロニアル
* Ecofeminist Reading
キーワード:Ecofeminism , Environemental , Postcolonialism
* Border Cultures
キーワード:Chicana/o , Gloria , Anzaldua
学歴
出身大学院・研究科等
* 2000 , ペンシルヴァニア州立インディアナ大学 , 博士
研究職歴等
研究職歴
* 2001 - , 琉球大学 法文学部 国際言語文化学科 英米文化講座 准教授
研究活動業績
研究業績(著書・発表論文等)
著書
* 今福龍太編 『21世紀文学の創造・境域の文学』
岩波書店 2003(Mar.)
著者名:喜納育江
* 『ネイティヴアメリカンの文学』
ミネルヴァ書房 2002(Mar.)
著者名:喜納育江,西村頼男
* Native American Literature
Minerva in Japan
著者名:Ikue Kina,Yorio Nishimura
論文
* グローリア・アンサルドゥーアのBorderlands/La Frontera:チカーナによる境域文化論
, 『英語青年』 , (10月号):411-413 2005(Oct.)
著者名:喜納育江
* Gloria Anzaldua and _Borderlands/ La Frontera: Chicana Border Theory
, Eigo Seinen the Rising Generation 2005(Oct.)
著者名:Ikue Kina
* 翳るビジョン・石の結束:サイモン・オティーズのアメリカ南西部
, 『現代詩手帖』 , (5月号):70-77 2005(May)
著者名:喜納育江
* Vision Shadowing and Woven Stone: Simon Ortiz and American Southwest
, Contemporary Poetry 2005(May)
著者名:Ikue Kina
* 1945年から1963年までの婦人会活動に見るアメリカ統治下の公的領域における女性の領域
, 平成14〜16年度科学研究費補助金基盤研究(A)(2)報告書(課題番号14209011,研究代表者・山里勝己) 2005(Mar.)
著者名:喜納育江
* Listening to the Voice of Silences: Animism in Jeannette Armstrong
琉球大学法文学部 , 欧米文化論集 , (47):25-41 2003(Mar.)
著者名:喜納育江
リポジトリ
* 混血インディアン女性の自己像:コゲウェア、ある混血の物語
, 木下卓他編 『多文化主義で読む英米文学』 , :192-209 1990(Mar.)
著者名:喜納育江
* ネイティヴアメリカンのことばとアニミズム
, 『文学と環境』 , (6):23-29
著者名:喜納育江
* エコフェミニズム文学批評
, 『文学と環境』 , (8):57-61
著者名:喜納育江
* Listening to the Voice of Silences: Animism in Jeanette Armstrong
, Ryudai Review of Euro-American Studies , (47)
著者名:Ikue Kina
リポジトリ
* About Indigenousness: Seeking Spiritual Intimacyin _Literature
from the Borderlands
, published by Iwanami, edtied by Ryuta Imafuku
著者名:Ikue Kina
* Native American Language and Animism
, Literature and Environment , (6)
著者名:Ikue Kina
* Ecofeminist Literary Criticism
, Literature and Environment , (8)
著者名:Ikue Kina
その他
* 「物語という儀式:レスリー・マーモン・シルコウ」と「生命に内在する複数の記憶」
ミネルヴァ書房 , 文学・環境学会編 『たのしく読めるネイチャーライティング』
著者名:喜納育江
研究費
科学研究費補助金(研究代表者)
* 2009 - 2011 , チカーノ演劇の境域性とアメリカ先住民文化における語りの伝統 , 基盤研究(C)
* 2006 - 2008 , アメリカ南西部の境域をめぐるチカーノとアメリカ先住民の文学 , 基盤研究(C)
* 2003 - 2005 , レスリー・マーモン・シルコウとアメリカ先住民文学における異文化的対話の系譜 , 若手研究(B)
【編者】
ルー・バーナード(Lou Burnard)
オクスフォード大学コンピューティング・サービス所長補佐
キャサリン・オブライエン・オキーフ(Katherine O'Brien O'Keeffe)
ノートルダム大学教授(英文学)
ジョン・アンスワース(John Unsworth)
イリノイ大学大学院教授(図書館情報学)
(原著刊行当時)
【監訳者】
明星聖子(みょうじょう きよこ)
埼玉大学教養学部教授
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。
著書に、『新しいカフカ——「編集」が変えるテクスト』(慶應義塾大学出版会、2002年。本書で2004年に第1回日本独文学会賞<日本語研究書部門>受賞)。訳書に、リッチー・ロバートソン『カフカ』(岩波書店、2008年)、『グーテンベルクからグーグルへ——文学テキストのデジタル化と編集文献学』(共訳、慶應義塾大学出版会、2009年)等がある。
神崎正英(かんざき まさひで)
ゼノン・リミテッド・パートナーズ代表。
京都大学文学部卒業。コロンビア大学でMBA取得。
著書に、『プロフェッショナル電子メール』(ハルアンドアーク、1999年)、『ユニバーサルHTML/XHTML』(毎日コミュニケーションズ、2000
年)、『セマンティック・ウェブのための
RDF/OWL入門』(森北出版、2004年)、『セオリー・オブ・スタイルシート』(技術評論社編集部・編、2006年)、『セマンティック
HTML/XHTML』(毎日コミュニケーションズ、2009年)
、訳書に『グーテンベルクからグーグルへ——文学テキストのデジタル化と編集文献学』(共訳、慶應義塾大学出版会、2009年)がある。
■内容紹介
デジタル編集の哲学
▼MLA(Modern Language
Association)が刊行した、学術書(人文学=哲学、文学、歴史学など)のアーカイヴ、電子書籍(版)の編集ガイドラインに関する実践的・理論的問題を扱う24本の論文を収録。
▼電子テキスト編集の作業チェックリストや、テクニカルタームについての詳細な解説(用語解説)、参考文献も紹介しており、電子編集に関するあらゆる情報を提供。
■目次
まえがき
トマス・タンゼル
序文
第�部 典拠資料と方針
デジタルの地平での編集
ディーノ・ブッツェッティ ジェローム・マッギャン
『カンタベリー物語』をはじめとする中世テキスト
ピーター・ロビンソン
記録資料の編集
ボブ・ローゼンバーグ
詩とネットワーク——詩を電子編集する——
ニール・フレイスタット スティーヴン・ジョーンズ
戯曲のケーススタディ——『ケンブリッジ版ベン・ジョンソン作品集』——
デイヴィド・ガンツ
女性作家プロジェクト——デジタル化されたアンソロジー——
ジュリア・フランダース
著者による翻訳——サミュエル・ベケットの『ざわめく静けさ/ぴくりと跳ねて』 ——
ディルク・ファン・ヒュレ
散文フィクションと近代の手稿——電子版のテキストコード化の限界と可能性——
エドワルト・ファンホウテ
哲学のケーススタディ
クラウス・フイトフェルト
宗教テキストの電子化——「ヨハネ福音書」を例に——
D・C・パーカー
マルチメディアの解剖図——自己評価の試み——
モリス・イーヴズ
碑文研究
アン・マホーニー
第�部 実践と手順
手稿と印刷典拠資料から機械可読テキストを作る効果的な方法
アイリーン・ギフォード・フェントン ホイット・N・ダッガン
転写のレベル
M・J・ドリスコル
編集におけるデジタル・ファクシミリ
ケヴィン・キーナン
電子版の真正性認証
フィル・ベリー ポール・エガート クリス・ティフィン グレアム・バーウェル
文書管理とファイル命名
グレッグ・クレイン
書字システムと文字表現
クリスティアン・ウィッテルン
マークアップ選択方法を文書化しておく理由と方法
パトリック・ドゥルソー
格納、検索、表示
セバスティアン・ラーツ
TEIを使わない方が良いとき
ジョン・ラヴァニーノ
印刷ベースの編集プロジェクトから電子形態への移行
ハンス・ヴァルター・ガーブラー
電子版における権利と許諾
メアリ・ケイス デイヴィド・グリーン
電子版の収集と保存
マリリン・ディーガン
補遺 ガイドライン
学術版編集者のためのガイドライン
原則の概要
訳者あとがき
TEIガイドライン第4版と第5版の違いについて
参考文献
索引
執筆者一覧
■内容紹介
奇跡像、蠟人形、幻視 …… 近代の「芸術」からはこぼれ落ちる、「迷信」
に満ちたイメージの力を無視することなく、人々がそこに残した痕跡や文化の記憶が織りなす複雑な地層を、図像・文書の丹念な解読によって辿りなおし、ルネサンスの多元性を蘇らせた
「イメージの歴史人類学」 の試み。
■目次
序 章
第1章 聖なるものの地政学
—— トスカーナ地方における聖母像崇敬の流行と変遷
第1節 都市周辺部の聖母像崇敬
1 チーゴリの聖母
2 セルヴェの聖母
第2節 都市-周辺部の力学
1 インプルネータの聖母
2 プリメラーナの聖母
第3節 都市の聖母像崇敬
1 オルサンミケーレの聖母
2 サンティッシマ・アヌンツィアータの聖母
3 ルバコンテ橋の恩寵の聖母
第2章 像の再活性化/無効化の力学
—— 中世末以降の聖像の死後生と修復
第1節 トスカーナ地方における奇跡像の修復 —— 聖母像を中心に
1 聖なる身体の重ね描きと置き換え —— 様式概念と礼拝価値
2 「芸術様式」 の時代における聖像の修復
—— ネーリ・ディ・ビッチの 『覚書』 に見る修復的処理
第2節 アルプス地方における奇跡像の修復
—— 「聖クリストフォルス」 と 「主日のキリスト」 を中心に
1 同一図像の重ね描き、反復/並置、アッサンブラージュ
2 図像の横滑り
第3節 像への冒瀆あるいは像の教育学
1 像への検閲と図像の変容 —— 「主日のキリスト」 を例に
2 教化としての冒瀆 —— イメージの教育学
第3章 痕跡と分身 —— ルネサンス肖像史再考
第1節 ルネサンスの肖像とマスク
1 《ニッコロ・ダ・ウッツァーノ》 問題
2 ルネサンスにおける型取り肖像
第2節 イマーゴ —— 「祖先の像」 と 「像による葬儀」
1 古代のイマギネス
2 ルネサンスにおけるイマギネスの残存
第3節 余剰性と反転性 —— 分身としての肖像
1 分身=コロッソスとしての肖像
—— デヴォトゥス/ホモ・サケル/主権の身体
2 過剰と反転 —— 像による神格化/像による懲罰
第4節 エクス・ヴォート —— 死と蘇生の物神
1 奉納像
2 展示のポリティクス
3 「分配される人格」 —— 崇敬と冒瀆のはざまで
4 犠牲と贖罪 —— 死と蘇生の物神
第4章 「肉の目」 と 「心の目」 —— 「心の祈禱」 の実践と図像
第1節 寄進者の肖像 —— ロレンツォ・ロット作対幅画
1 作品の来歴と同定
2 《キリストの母への暇乞い》 とエリザベッタ・ロータの肖像
3 《キリストの降誕》 とドメニコ・タッシの肖像
第2節 「新しい敬虔」 とイタリアにおける 「心の祈禱」
1 北方における 「新しい敬虔」 と 「心の祈禱」
2 イタリアにおける 「新しい敬虔」 と 「心の祈禱」
3 イタリアにおける 「心の祈禱」 と図像
第3節 サクロ・モンテ —— 「場の記憶」 と 「心の巡礼」
1 サクロ・モンテの起源をめぐる状況
2 サクロ・モンテ初期構想における 「トポミメーシス」 と 「心の巡礼」
3 カイーミの 『四旬節説教』 にみる 「秩序」 と 「場の記憶」
4 「場」 の模倣から 「奥義」 の演出へ
第5章 予言と幻視 —— ルネサンスの終末論文化における図像の地位
第1節 「田園の聖母」 の顕現 —— 幻視と集合的トラウマ
1 「田園の聖母」 のシナリオ
2 幻視の伝達回路と図像イメージ
3 集合的トラウマと幻視 —— 「執り成し」 の図像とその変容
4 無効化される 「田園の聖母」 —— カトリックと改革派のはざまで
第2節 「徴候」 としての怪物
1 「予言的怪物」 のルネサンス
2 解読される怪物たち —— イタリア戦争と予言文化
3 怪物の形態学
第3節 予言文化の終息とその残響
—— サン・マルコ大聖堂とフィオーレのヨアキム
1 サン・マルコ大聖堂のモザイク解釈をめぐる異端審問
2 モザイクをめぐるもうひとつの裁判
3 ヨハネ黙示録の図像の変遷とサン・マルコ大聖堂のモザイク
4 サン・マルコ大聖堂におけるフィオーレのヨアキムの予言の伝統
5 職人集団によるもうひとつの黙示録解釈
6 サン・マルコ大聖堂のモザイクにおけるヨアキム的予言の継承
終 章
■著者
水野 千依
【研究テーマ】
イタリア・ルネサンス美術史および芸術理論
イタリア・ルネサンスというと、人文主義を背景にレオナルドやミケランジェロなどの天才芸術家が活躍した芸術の黄金時代を思い浮かべることでしょう。たしかにこの時期、美しいものとして造形を嘆賞する態度が前景化したことは疑う余地もありません。しかしながら、ルネサンス文化において、イメージへの美的な新しい態度は、先在する宗教的で「迷信的」ともいえる態度と相互に関わっていたのも事実です。わたしは、この対話的出会いがいかに新たなイメージの歴史を紡ぎだしてきたのかという点に着目し、多角的に研究を進めています。ときに古代の異教的慣習や土着の民間信仰の残滓を刻み込み、像を畏怖し、崇敬し、攻撃した当時の人々の心性を、歴史人類学的視座から理解することを試みています。具体的には、奇蹟や幻視にまつわる像の地位、瞑想や記憶術と図像の関係、終末論的予言文化における図像の役割、出産儀礼や葬祭儀礼における像の機能、イメージの「力」を再活性化したり無効化したりする近代以前の修復的身ぶり、奉納像(エクス・ヴォート)やデス・マスクの系譜などのテーマを中心に、必ずしも芸術革新という側面だけでは語りつくせない、ルネサンスのイメージの多元性を少しでも解明できればと考えています。
【主な著作】
『西洋美術館』(共著 小学館 1999年)
ゴンブリッチ『規範と形式』(共訳 中央公論美術出版 1999年)
『カラヴァッジョ鑑』(共著 人文書院 2001年)
ディディ・ユベルマン『残存するイメージ』(共訳 人文書院 2005年)
エリー・フォール『美術史 近代美術Ⅰ』(共訳 国書刊行会 2007年)
『ジョットとその遺産展』(展覧会カタログ 責任編集 損保ジャパン東郷青児美術館 2008年)
【主な論文】
「絵画の語り、聖劇の語りーロレンツォ・ロット作スアルディ家礼拝堂フレスコ画装飾をめぐって」
(『美術史』145号、1998年)
「死と蘇生の〈物神(フェティッシュ)〉ーサンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ聖堂奉納像」
(『美術フォーラム』8号、2003年)
「ヴァラッロのサクロ・モンテ創設期におけるベルナルディーノ・カイーミの構想-〈場の記憶〉と〈心の巡礼〉」(『京都造形芸術大学紀要』9号、2006年)
「〈健やかなる男児〉と〈怪物〉の誕生ーイタリア・ルネサンスの出産装飾にみるイメージの〈力〉」
(『AUBE-比較芸術学』2007年)
「田園の聖母の幻視ー16世紀イタリアの田園文化と聖母信仰をめぐる一考察」
(『芸術学研究』2号、2008年)
「ルネサンスの芸術家工房ーネーリ・ディ・ビッチの『覚書(Le Ricordanze)』から」
(『ジョットとその遺産展』、2008年)
【主な展覧会企画、その他】
『ジョットとその遺産展』(島根美術館、損保ジャパン東郷青児美術館 2008年)