2011-09-02

新装版『アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮』

アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮
新装版
田中 純 著
2001/201105刊/A5判/398頁
C1010 定価3780 円(本体3600 円)
ISBN978-4-7917-6605-5

■内容紹介
イメージ分析学の誕生
図像表現の細部に宿るパトスを一身に受けとめた美術史家アビ・ヴァールブルク。その妄想と錯乱を孕んだ思考のただなかに沸騰する情念の論理を精緻に解読し、20世紀思想史の未踏の領野を照らしだす耀かしい力作。

【第24回 サントリー学芸賞受賞】(思想・歴史部門)

■目次

  第�部 両極性 1908‐1923

第一章 棄教者として
  プロローグ—— �出身の�教授
  ドイツ帝国の成り上がり者
  「ユダヤ人」 というイメージ
  シオニズムと同化の狭間で
  戦争書誌学者の闘い

第二章 星辰の魔神たち
  イメージの大移動
  論理と魔術
  宗教改革の占星(、、)政治
  標語的イメージ
  宿命論からの解放
  アテネとアレクサンドリア
  両極性の無気味さ
  トリュフを探す豚のように
  思考空間の崩壊

第三章 クロイツリンゲン、地獄篇
  胡蝶との語らい
  家父長制的アジール
  不可視の虐待
  聖なる喜劇の始まり

第四章 蛇儀礼講演
  旅の回想/回想という旅
  解読困難な再録羊皮紙(パリンプセスト)
  畸形の誕生
  神への侵入
  不死なる蛇
  啓蒙のエンブレム
  破壊される観想空間
  象徴と物神崇拝(フェティシズム)
  「(癒しがたい) 精神分裂病患者の告白」
  白昼夢のなかの言葉なき者(インファンス)
  金枝の木霊(こだま)

  第�部 情念 1886‐1907

第五章 ヴィーナスたち
  フィレンツェ体験
  感情移入をめぐる問い
  附属物という細部—— ボッティチェリ論(一)
  生活と芸術の相互浸透—— ボッティチェリ論(二)
  情念と定型—— ボッティチェリ論(三)
  一四〇〇年代(クアトロチエント)の夢解釈
  絵画における夢の仕事
  人類学的観相学に向けて

第六章 ニンフ=グラディーヴァ
  オペラの誕生—— 悲劇の精神からの
  ニンフへの恋
  よみがえったニンフ=グラディーヴァ
  死の女神たちの踊り

第七章 初期ルネサンス人たちの肖像
  肖像画の図像魔術
  同定のアポリア
  蘇生の奇蹟
  エネルギー象徴と調整心理学
  ルネサンスと資本主義のエートス

第八章 イメージの病理学
  情念の最上級表現
  野獣の回帰
  像(イメージ)の悪魔祓い

  第�部 記憶 1924‐1929

第九章 記憶劇場のドラマトゥルギー
  囚われ人の帰還
  文庫の成長と変容
  楕円形をした知の宇宙
  「日本人ノ気質ヲ通シテ見タ、ハンブルク人ノ理念」
  怪物から天球へ
  歴史家としてのレンブラント
  見者・霊媒・地震計—— ブルクハルトとニーチェ

第十章 よみがえる異教の熱狂 図像アトラス 「ムネモシュネ」(一)
  占星術をめぐる展示計画
  ライデン瓶としての集合的記憶
  ヨーロッパの熱狂の源泉に向けて
  「自然感情」 の変容
  怪物(モンストラ)と聖体顕示台(モンストランツ)

第十一章 ヨーロッパ文化の夢分析 図像アトラス 「ムネモシュネ」(二)
  「ムネモシュネ」 序文
  図像アトラスの構成
  聖体の秘蹟と犠牲の暴力—— 七十九番パネル
  グリザイユによる幽霊譚の上演
  古代の 「おもかげ」
  自伝的純粋非理性批判

第十二章 ヴァールブルクのダイモン
  英雄的狂気
  エピローグ—— 林檎の老木

アビ・ヴァールブルク略年譜

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新装版に寄せて

■著者
田中純(たなか・じゅん)
1960年、宮城県仙台市生まれ。東京大学教養学部卒業。国際交流基金勤務をへて、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻は表象文化論、ドイツ文化研究。著書に、『残像のなかの建築』(未來社)、『都市表象分析�』(INAX出版)、『ミース・ファン・デル・ローエの戦場』(彰国社)、『死者たちの都市へ』(青土社)、『都市の詩学』(東京大学出版会、第58回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)、『政治の美学』(東京大学出版会、第63回毎日出版文化賞受賞)、『イメージの自然史』(羽鳥書店)など多数。

■書評(高山宏)
「『アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮』もそうであると言えるが、読者が限定されるモノグラフより、間口の広い今作『都市の詩学』の方が、田中純躍進のためには絶対好個のマニフェスト本だ。」
http://booklog.kinokuniya.co.jp/takayama/archives/2007/12/post_36.html