シリーズ 哲学・思想 > MINERVA 歴史・文化ライブラリー 19
出版年月日 2011/08/10
ISBN 9784623060795
判型・ページ数 4-6・288ページ
定価 本体2,500円+税
■内容紹介
「私」による語りの可能性
一人称形式によって描かれた虚構の世界。
そのなかで照らし出されるものは何か
「私」とは誰か?一人称形式の小説を読みとくさいの鍵となる「異化」作用について、イギリス小説を中心に考察する。語り手の設定によって創造された
虚構の世界では、人間の在り方にどのような新しい光が当てられ,いかなる実相が照らし出されるのだろうか。本書は、死者や怪物、動物をはじめ、さまざまな
「私」の物語世界へと誘う。
■目次
まえがき
序 小説と異化作用
第一章 一人称小説の伝統と機能
第二章 不思議の国の「私」——スウィフト『ガリヴァー旅行記』
第三章 「私」は死者——フィールディング『この世からあの世への旅』
第四章 「私」は怪物——メアリ・シェリー『フラケンシュタイン』
第五章 「私」は超能力者——ジョージ・エリオット「引き上げられたヴェール」
第六章 「私」は動物——アンナ・シューエル『ブラック・ビューティ』
結び 語り手の設定——一人称小説の可能性
各章コラム/参考文献/あとがき
■著者
研究分野 英米文芸構造論(イギリス小説)
キーワード 19世紀イギリス小説、ヴィクトリア朝、物語論、小説理論、ジェイン・オーステイン、ブロンテ、ディケンズ、サッカレー、トロロープ、ギャスケル、ジョージ・エリオット、ハーディ
研究テーマ 英米文芸構造論の立場から、近現代イギリスにおいて、人間がいかに文化・社会的環境を認識し、それを小説という高度な物語形式を用いて表象してきたかを探究することによって、文芸表象分析の概念的・方法論的基盤確立を目指す。
研究対象は、ジェイン・オースティン、ブロンテ姉妹、ディケンズ、サッカレー、トロロープ、エリザベス・ギャスケル、ジョージ・エリオット、トマス・ハーディ等の19世紀イギリス小説。これらの文芸作品を主たる対象として、物語の内容がいかに語られているかという<形式的物語分析>、ならびに広義の物語論、すなわちプロット構成・時間構造・人物造形・イマジェリー・テーマ論等を含む<物語の内容分析>を、諸々の文学理論を援用しながら多面的に分析する。これによって、小説の表象構造や小説言語のメカニズムの解明に取り組んでいる。
「語り」とは、人間存在に根差す根源的行為のひとつである。人間にとって「物語とは何か」という問題を探究することが、私の研究テーマである。
代表的著書,論文等 『19世紀イギリス小説の技法』(福原賞受賞/英宝社, 1996)
『「嵐が丘」の謎を解く』(創元社, 2001)
『批評理論入門−「フランケンシュタイン」解剖講義』(中公新書, 2005)
『視線は人を殺すか−小説論11講(MINERVA歴史・文化ライブラリー11)』(ミネルヴァ書房, 2008)
『ミステリーの人間学−英国古典探偵小説を読む』(岩波新書, 2009)
所属学会
その他の研究活動等 日本英文学会(2005-2007 編集委員、2007 同委員長)、日本英文学会関西支部(2008-2010
大会準備委員、2009 同委員長、2011-理事)、日本ブロンテ協会(2002-2010
評議員、2011-理事、2011-編集委員)、日本ジョージ・エリオット協会(理事・編集委員)、日本ギャスケル協会(幹事、論文審査委員)、ディケンズ・フェロウシップ日本支部(2002-2008
理事)、日本オースティン協会、日本ハーディ協会、日本ヴィクトリア朝研究学会 各会員
担当授業
学部
英米文芸表象論講義、英米文芸表象論演習I,II、英米文芸表象論講読I,II
大学院修士課程
英米文芸構造論1、文芸表象論演習1
大学院博士課程
文芸表象論特別演習
全学共通科目
英語I, 英語II
経歴等 1958年、大阪府生まれ。1982年、京都大学文学部文学科卒業(独文学専攻)。英文学に転向後、神戸大学大学院・文学研究科修士課程修了
(1988)、同・文化学研究科博士課程単位取得退学(1991)。学術博士(1994)。大阪市立大学他非常勤講師(1991〜1994)、山口大学教育学部助教授(1994〜2000)を経て、京都大学総合人間学部助教授(2000〜2003)。2003年、改組により京都大学大学院人間・環境学研究科助教授。2008年より教授。