2011-08-30

「カフカの主人公の受動性」@『小説の誕生』(保坂和志)

『小説の誕生』 保坂和志 著
税込価格 : \1100 (本体 : \1048)
発行形態 : 書籍
判型 : 四六判変型
頁数 : 478ページ
ISBN : 978-4-10-398206-7
C-CODE : 0095
発売日 : 2006/09/29


■内容紹介
世界を絶望せずに生きるための小説を求めて——。
小説的思考とは何か? 小説が生まれる瞬間とはどういうものか? 小説的に世界を考えるとどうなるの
か?——行き着く先もわからないまま考えつづけるうち、「小説論」はどんどん「小説」へと変容していった。「小説論」とは思考の本質において、評論ではな
く「小説」なのだ! 『小説の自由』につづく、待望の第二弾。

■目次
まえがき——F式前進——
1 第二期のために書きとめて壁にピンで止めたメモのようなもの
別のことを提示する
芸術とアート
〈新しい−古い〉は同じ系
ゴダールの言葉
2 小説と書き手の関係
小説に潜む"切断"
小説の力学
推敲とは?
リアリティの生成
標準的センテンスからのズレ
3 現代性、同時代性とはどういうことか
現象としての現代性、同時代性
言葉は底が抜けている
ベケットからハイデガーへのアンサー
カフカの主人公の受動性
「新しい」文学はもうありえない
4 外にある世界と自分の内にあること、など
小説の基盤の脆弱さ
読者とはどんな人たちか
ただ読むこと
"筋"ではなく"場"だけがある
『ロクス・ソルス』
「人生にあって忘れ難い瞬間」
中身と形式の強い連関
5 時間と肉体の接続
パソコンが壊れた
阿部和重の直列的な文章
文学じみた"現実"
アキちゃん、または個人や自我の乗り越え
時間は驚くほど人を変える
いまだ言語化されていない時間
現代の思考のモードの打破
6 私の延長は私のようなかたちをしていない
「肉体は滅びる」か?
「脳」が広大無辺であるとはどういうことか
表現に刻みつけられる時間
肉体が理解する空間
「同じ現象を歩む」
7 小説を離れてリアルなこと
書店という空間
人間と空間との関わり
芸術とはまず量である
語りえないものと時間
小説から離れてリアルなこと
小島信夫のすごい小説
思考の胎動
名簿の中の死者たち
8 現実とリアリティ
作者と現実が触れ合う
自分を取り巻く方角の感覚
ホフマンスタールと「現実界」
読者の中で起こる事実
9 私の延長
「死」をめぐる問い
ドストエフスキーの歪み
世界を肯定する小説
武士とヤクザの死生観
特攻服に縫い込まれた詩
『春と修羅』
自分に関係のある近所の環境
10 「われわれは生成しつつあるものを表現するための言語を持っていない」
『ニーチェと悪循環』
「永劫回帰」とは?
考えること、書くこと
「言葉なんかいらない」
『寓話』個人出版
作家は異質さを持ち込む
諸衝動の出会いの場所
11 人間の姿をした思考
小説にはどうして人間が出てくるのか
ギリシア神話の神々の姿
神はどのように生まれてきたか
言葉と別のところで存在するもの
太古の人間にとって世界とは
森で生まれた思考
事実に負けない思考
感動すること、時間の中に生きること
12 人間の意図をこえたもの
世界の何か
肉体との直結
論理的なものの非論理性
どこまでも伸びてゆく線
意図の過剰推測
なけなしの選択肢
13 力と光の波のように
意識とは何か
不滅であるもの
世界には外はない
思考の完成を許さない亀裂
言語の体系が揺さぶられる
視覚イメージ不可能なもの
制度化されざる力
引用文献リスト

あとがき

著作一覧