2011-11-10

小澤京子『都市の解剖学』(ありな書房、2011)。都市論であり身体論であり文学論でもある、きわめて刺激的な本。

都市の解剖学 建築/身体の剥離・斬首・腐爛
ANATOMIA URBIUM : Separatio, Decapitatio, Corruptio Aedeficiorum / Corpotium
toshinokaibougaku

小澤京子:著, 田中純:解題
発行:ありな書房
A5判 264ページ 上製
定価:4,800円+税
ISBN 978-4-7566-1119-2 C0070
奥付の初版発行年月:2011年10月 書店発売日:2011年10月07日

■内容紹介

ピラネージ、カナレット、ルドゥー、ユベール・ロベール、そしてゴーティエ/ユイスマンスへ、建築/身体の表層を剥がし、あるいは切り刻んで組みあわせ、あるいはおぞましい下層を浮かびあがらせ、皮膚/骨格の、外/内のあわいを、可視/不可視の境界を、実在/不在の幻界を無効にする、イメージの想像力の視覚化/表象を追う。

解題から。「このテクストの身体、本書という「言葉の建築」の皮膚上に、著者はいくつかの紋章を結晶化した血膿──肌に咲く硬質の薔薇──のように象嵌したのだと考えてみたい。建築史の解剖的ブラゾン、あるいは、都市表象の剥離模型(エコルシェ)。」

視線という擬似的なメスによって、皮膚を剥がされつつある都市――本書を貫くのは、このイメージである。ここで言う皮膚とは、単なる被覆物や表層の擬人的メタファーではない。内部と外部とが互いに絶えず陥入しあい、可視的なものと不可視のものとが反転をくりかえす、撞着と葛藤のトポスである。表層の崩落は、終焉の予兆であり、あるいは凋落と頽廃の反映である。カナレットの描いたヴェネツィア、ピラネージが再現しようとした古代ローマ、……ルドゥーが不遇の晩年に夢見たユートピア、フランス革命期のアポカリプティックな建築表象、そして一九世紀文学が描きだした比喩としての腐爛の皮膚と血膿。ここで問題となるのは、建築や身体そのものではなくそのイメージである。

都市の解剖学 剥離・切断・露出 | 小澤京子
Urban Anatomy: Exfoliation, Amputation, and Exposure | Kyoko Ozawa
掲載『10+1』 No.40 (神経系都市論 身体・都市・クライシス) pp.218-224
http://db.10plus1.jp/backnumber/article/articleid/633/

■目次
序 章 建築の解剖学──その皮膚と骨格
第1章 都市の「語り」と「騙り」──カナレットのヴェネツィア表象にみる都市改変の原理
第2章 「起源」の病と形態の闘争──ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージによる古代ローマ表象
第3章 適合性と怪物性──クロード=ニコラ・ルドゥーの両極的性質
第4章 建築の斬首──フランス革命期の廃墟表象における瞬間性と暴力性
第5章 石の皮膚、絵画の血膿───一九世紀文学における「病める皮膚」のモティーフ
エピローグ 眼差しのディセクション

参考文献
解 題 廃墟の皮膚論──あるいは、紋章の解剖/解剖の紋章 田中純
あとがき
人名索引

■著者
小澤京子(オザワキョコ)

都市表象文化論の若手研究者
1976年8月 生
東京大学( 法学部 第2類) 1999 (卒業)
東京大学 修士( 超域文化科学専攻表象文化論コース) 2004 (修了)

修士論文
2003(平成15)年度
小澤 京子 18世紀ヴェネツィアの都市表象:カナレットのヴェドゥータが内包する都市観の変貌
http://repre.c.u-tokyo.ac.jp/programs/master.html


ブルゴーニュ大学 修士( 美術史) 2008 (修了) フランス

仏ブルゴーニュ大学修士(第2学年)論文, 2008年10月
«L'origine contaminée et les conflits des figures : La représentation
de Rome chez G.B. Piranesi»


東京大学 博士( 総合文化研究科 超域文化科学専攻 表象文化論コース) 2010 (単位取得満期退学)
東京大学21世紀COE「共生のための国際哲学研究センター」リサーチアシスタント(2006年4月-2007年3月)
東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」リサーチアシスタント(2009年10月-2011年3月)
東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」特任研究員(2011年4月-)
表象文化論学会広報委員(2010年-)
日仏美術学会実行委員(2011年-)

田中純(タナカジュン):日本の都市表象論の第一人者 表象文化論全般を専門にする