2013-06-03

失われた近代を求めて 1言文一致体の誕生、2自然主義と呼ばれたもの達

■失われた近代を求めて 1言文一致体の誕生

橋本 治

ISBN:9784022507334
定価:1890円(税込)
発売日:2010年4月20日
四六判上製 248ページ



 日本の小説は、どうしてダメになったのか?
田山花袋『蒲団』vs.二葉亭四迷『平凡』──近代文学の黎明期に誕生したふたつの「私小説」が、小説の未来に残した可能性と困難とは?
作家たちが格闘した120年を読み解く新たな文学史。ライフワーク第1弾!

≪目次: ≫
はじめに

第一章 そこへ行くために
「古典」という導入部から——文学史はなにを辿るのか
『徒然草』の時代——あるいは、芸能化と大衆化の中で
和漢混淆文と言文一致体——あるいは、文学史の断絶について
大僧正慈円の独白

第二章 新しい日本語文体の模索——二葉亭四迷と大僧正慈円
大僧正慈円と二つの日本語
慈円と二葉亭四迷
『愚管抄』とは、そもそもいかなる書物なのか?
「作者のあり方」と「作品のあり方」を考えさせる、日本で最初の発言


第三章 言文一致とはなんだったのか
二葉亭四迷とは「何者」か?
口語と文語——あるいは口語体と文語体、更にあるいは言文一致体の複雑
言文一致体は「なに」を語ったか
そして、言文一致体はどこへ行くのか


第四章 不器用な男達
哀しき『蒲団』
近代文学の本流争い
いたってオタクな田山花袋
どうして「他人」がいないのか
「もう一つの『蒲団』」の可能性
空回りする感情
「そういう時代だった」と言う前に


第五章 『平凡』という小説
改めて、言文一致体の持つ「意味」
『平凡』を書く二葉亭四迷
「言わないこと」の意味、「言えないこと」の重要さ
「言わないこと」のテクニック
連歌俳諧的な展開と論理
「隠されたテーマ」がやって来る



第六章 《、、、、》で終わる先
『平凡』がちゃんとした小説であればこそ——
「ポチの話」はどのように位置付けられるのか
尻切れトンボになることの真実
『浮雲』の不始末を完結させる『平凡』
「悪態小説」としての『浮雲』
分からないのは、「他人のこと」ではなくて、まず「自分のこと」である

■失われた近代を求めてII 自然主義と呼ばれたもの達

島崎藤村『破戒』、田山花袋『蒲団』から私小説へ。
日本の「自然主義」は「言えない秘密」を抱える男達の物語だった。
それがいつしか「事実」を告白する小説へと変貌する。
藤村の「自分語り」を通して、
自然主義の本質に迫る橋本流近代文学論。

【目次】失われた近代を求めてII 自然主義と呼ばれたもの達

第一章—「自然主義」とはなんなのか?
1.森鴎外と自然主義
2.自然主義の悪口はうまく言えない
3.「『性的人生記』と題される書物に関する尾物語」
4.なにが彼を翻弄するのか?
5.本家の自然主義と日本の自然主義
6.もう一人の「自然主義」の作家、島崎藤村の場合
7.果たして近代の日本に「自然主義の文学」は存在していたのか?

第二章—理屈はともかくてして、作家達は苦闘しなければならない
1.通過儀礼としての自然主義
2.理念もいいが、文体も——
3.言文一致体が口語体へ伝えたもの
4.言文一致体の「完成」
5.若くて新しい「老成の文学」
6.「自然主義」をやる田山花袋
7.様々な思い違い
8.「翻訳」について—あるいは、文体だけならもう出来ていた
9.田山花袋の道筋

第三章—「秘密」を抱える男達
1.田山花袋の恋愛小説
2.かなわぬ恋に泣く男
3.美文的小説
4.『わすれ水』—そのシュールな展開
5.「言えない」という主題
6.どうして『破戒』は「自然主義の小説」なのか?
7.そういうことかもしれない
8.「言えない」という主題PART2
9.瀬川丑松の不思議な苦悩
10.言えない言えない、ただ言えない

第四章—国木田独歩と「自然主義」
1.最も読まれない文豪
2.国木田独歩と自然主義
3.《白粉沢山》ではない文章
4.「自然主義」と錯覚されたもの
5.『武蔵野』が開いた地平

第五章—とめどなく「我が身」を語る島崎藤村
1.『春』—「岸本捨吉」の登場
2.「始まり」がない
3.岸本捨吉を書く島崎藤村
4.岸本捨吉の見出したもの
5.父を葬る