2011-10-18

『建築のエロティシズム—世紀転換期ヴィーンにおける装飾の運命』

タイトルからはわかりにくいが、カフカ研究者必携の書
田中純先生の、円熟の結晶、ご本人が自負しているとおり、
世紀転換期ウィーンの「少なくとも時代の核と見なしうるような文化現象の精髄については、ここで凝縮して示しえた」!!
という本です

カフカ作品では、『訴訟』の猥雑さ、『流刑地』の装飾についてもちろん触れており
『カフカの衣装』(アンダーソン)を「瞠目すべき研究」としている

ロースとカフカ、ヴァイニンガーとカフカ、「独身者の機械」
など、カフカ研究の立場からみれば、なにも目新しい指摘はないかもしれない

けれども、ウィーン在住でモード記事を書いていた女性ミレナとの交際、
かたや「ベルリン」という、もうひとつの一大中心地との関係までも含めて
「カフカのエロティシズム」を、このくらいの密度で書けたら・・・


『建築のエロティシズム—世紀転換期ヴィーンにおける装飾の運命』
著者: 田中 純 【著】
出版社: 平凡社
発売日: 2011年10月
発行形態: 新書
ISBN: 9784582856118
(458285611X)
税込価格: 819円

■内容紹介
一九世紀末から二〇世紀初頭のヴィーンを舞台に、装飾がそこで担った意味の分析を通じて、近代建築のエロティシズムを考察した意欲作。

19世紀末から20世紀初頭のヴィーンを舞台に、装飾が担った意味の分析から、建築のエロティシズムを考察。ロース、フロイト、カフカ、ヴィトゲンシュタイン等、文学・芸術・思想が織りなす論理にこそ建築の官能性は宿る。


■目次

はじめに


第1章 オーストリアの終焉 聖なる春のヴィーン

価値真空の装飾
様式の問題
技術との対決
反撃する建築家
眼の停止点
旧世界の墓碑のために


第2章 建築家のダンディズム アドルフ・ロース

ダンディの法
婦人服のモード
カルマの館
モードの終わり?


第3章 反フェミニストの遺書 オットー・ヴァイニンガー

「性と性格」
セックスしかない女、セックスを超越した男
女は存在しない
女としてのユダヤ人
ロースとヴァイニンガー


第4章 装飾と犯罪 アドルフ・ロース2

ダンディによるオタク批判
装飾と性衝動
ダンディとしてのわれわれ
ロース・ハウスのスキャンダル
装飾の犯罪学
カフカにおける「装飾と犯罪」


第5章 装飾としてのペニス ジークムント・フロイト

フェティシズムの構造
装飾と去勢
超自我の生成
倒錯者の戦略


第6章 両性具有の夢 アドルフ・ロース3

女性的な剰余空間
被膜の原理と写真嫌い
文字の去勢
破壊する建築家


第7章 恐るべき子供たち1 オスカー・ココシュカ

アルマとの恋愛体験
フェティッシュとピグマリオン
人形愛という狂気
皮剥ぎと女の欲望


第8章 恐るべき子供たち2 ルードヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン

ヴィトゲンシュタインの建築
扉と窓の明晰化
独身者と花嫁
法と倫理のエロティシズム


おわりに

ガラスのペニス
装飾の運命


あとがき