2012-10-30

グスタフ・ヤノーホ『カフカとの対話——手記と追想』吉田仙太郎訳 三谷研爾解説

 2012年11月1日配本 (1冊)
『カフカとの対話——手記と追想』
グスタフ・ヤノーホ 吉田仙太郎訳 三谷研爾解説
2012年11月1日発行予定

始まりの本
カフカとの対話
[著者] グスタフ・ヤノーホ [訳者] 吉田仙太郎 [解説] 三谷研爾

四六変型判 タテmm×ヨコmm/384頁
定価 3,990円(本体3,800円)
ISBN 978-4-622-08359-7 C1398

——「では、ヘル・ドクトル、真実はわれわれに永遠に閉ざされているとお考えなのですね」
カフカは黙った。彼の眼は非常に細く、暗い影を帯びた。彼の大きく突き出た咽喉仏が、首の皮膚の下で何度か上下するのが見えた。彼はしばらく、事務机の上に支えた両手の指先を見つめていた。やがて彼はしずかに言った。「神、生命、真実——これらは一つの事実の異名にすぎません」
私は執拗につづけた。「われわれにそれを把握することができるのですか」「それを体験するのです」そう言うカフカの声には、かすかな不安がふるえていた。——

始まりの本
現代の古典・新シリーズ

「始まりが存在せんがために人間は創られた」(アウグスティヌス)
「人間はそれ自らが始まりである」(H・アーレント)
「始まりとは〈差異をつくる〉ものだ」(E・サイード)

始まりとは始原(オリジン)。
そこから生い育つさまざまな知識の原型が、
あらかじめ潜在しているひとつの種子である。
新たな問いを発見するために、
いったん始原へ立ち帰って、
これから何度でも読み直したい現代の古典。
未来への知的冒険は、ふたたびここから始まる!
このシリーズの特色

■人文諸科学はじめ、知が錯綜し、新たな展望を示せない不透明な今の時代に、だからこそ〈始まり〉に立ち帰って、未来への指針を与える。
■トレンドからベーシックへ。これだけは押さえておきたい現代の古典。
■すでに定評があり、これからも読みつがれていく既刊書、および今後基本書となっていくであろう新刊書で構成する。
■ハンディな造本、読みやすい新組み、新編集。

2012-10-24

『ディケンズ文学における暴力とその変奏 —生誕二百年記念—』

松岡 光治 編
A5判, xii+288ページ
定価 3,150円(本体 3,000円+税)
ISBN 978-4-271-21016-0


2012年は国民的人気を博したヴィクトリア朝の作家—1812年2月7日(金)に生まれたチャールズ・ディケンズ—の生誕二百年にあたります。
 その記念事業の一環として企画された本書は、ディケンズ・フェロウシップ日本支部の会員15名が、彼の15の長篇小説をそれぞれ担当し、〈暴力〉に焦点を絞って書いた論文のアンソロジーです

 それぞれの章には扉絵と4つの図版が掲載されており、ディケンズ文学だけでなくヴィクトリア朝における暴力問題が様々な角度から論じられています。



目 次

まえがきに代えて——暴力と想像力

序 章 「抑圧された暴力の行方」 (松岡光治)
 第1節 産業革命期とヴィクトリア朝の社会風潮
 第2節 暴力のジェンダー化と二重規範
 第3節 抑圧の移譲と階級問題の解決策
 第4節 ショーヴィニズムによる人種差別

第1章 『ピクウィック・クラブ』 (中和彩子)
 「ピクウィック氏のげんこつ」
 第1節 暴力の抑圧
 第2節 暴力と身分
 第3節 一発のげんこつ
 第4節 もう一発のげんこつ

第2章 『オリヴァー・トゥイスト』 (松岡光治)
 「逃走と追跡——法と正義という名の暴力」
 第1節 孤独からの逃走
 第2節 追跡の快楽
 第3節 恣意的な暴力としての法
 第4節 正義に内在する暴力性

第3章 『ニコラス・ニクルビー』 (西垣佐理)
 「喜劇としての暴力——舞台と社会の間」
 第1節 喜劇およびメロドラマの伝統と暴力場面の意義
 第2節 舞台背景としての社会問題
 第3節 劇的効果を生み出す暴力
 第4節 〈喜劇〉から〈小説〉へ

第4章 『骨董屋』 (猪熊恵子)
 「音の海を逃れて」
 第1節 傷跡に語らせよ
 第2節 クウィルプの声、その暴力
 第3節 食い違う語り手のシルエット
 第4節 「その話はもうやめろよ、チャーリー」

第5章 『バーナビー・ラッジ』 (渡部智也)
 「眠りを殺す」
 第1節 究極の暴力としての断眠
 第2節 眠りが奪われる
 第3節 眠りを取り戻せ
 第4節 暴動はまた起こるのか

第6章 『マーティン・チャズルウィット』 (畑田美緒)
 「声なきものたちの逆襲」
 第1節 権威の喪失
 第2節 老人たちの復権
 第3節 暴力依存と死者の告発
 第4節 新大陸VS旧大陸

第7章 『ドンビー父子』 (松村豊子)
 「疾走する汽車と暴力」
 第1節 決闘の封印
 第2節 虐待の激化
 第3節 家庭内における暴力の規制と抑制
 第4節 線路は続くよ、どこまでも

第8章 『デイヴィッド・コパフィールド』 (川崎明子)
 「海の抑圧——ロビンソン・クルーソー挽歌」
 第1節 暴力をふるう海
 第2節 船に乗るスティアフォース
 第3節 浜に揚がるエミリー、川を嘆くマーサ
 第4節 陸を選ぶデイヴィッド

第9章 『荒涼館』 (中村 隆)
 「国家・警察・刑事・暴力装置」
 第1節 国家という暴力装置
 第2節 無名の警官の暴力
 第3節 警察という暴力装置
 第4節 バケットの暴力

第10章 『ハード・タイムズ』 (玉井史絵)
 「教育の(暴)力」
 第1節 教育と暴力
 第2節 学校教育と徒弟教育
 第3節 「合理的な学校」
 第4節 〈娯楽〉という教育

第11章 『リトル・ドリット』 (武井暁子)
 「内向する暴力——病的自傷者はなぜ生まれるのか」
 第1節 病的自傷の定義
 第2節 自傷の要因
 第3節 ヤマアラシのジレンマ
 第4節 排除/矯正される自傷者

第12章 『二都物語』 (矢次 綾)
 「孤独な群衆の暴力性」
 第1節 未曽有の大事件を記述する
 第2節 ディケンズによるサンキュロティズムの研究
 第3節 群衆が潜在的に保持する暴力性
 第4節 群衆の孤独と暴力性

第13章 『大いなる遺産』  (鵜飼信光)
 「種子=ピップは牢を破って外で花を咲かせるか」
 第1節 穏やかどころではない人々
 第2節 「そんなにも多くの小さな引き出し」
 第3節 取り壊されたサティス・ハウス
 第4節 打つことの暴力と建設、逃げ続ける一人の囚人

第14章 『互いの友』 (宮丸裕二)
 「腕力と知力——欲望と階級」
 第1節 階級と肉体の結びつき
 第2節 暴力と知性に挟まれる中産階級
 第3節 中産階級に残像として映る傷跡に充ちた世界
 第4節 肉体性忌避の現代

第15章 『エドウィン・ドルードの謎』 (加藤 匠)
 「クロイスタラムに潜む闇の暴力」
 第1節 過去の痕跡
 第2節 「別種の恐ろしい奇跡」
 第3節 直観と論理
 第4節 クロイスタラムに落ちる帝国の影

あとがき

使用文献一覧

図版一覧

執筆者一覧

索引

2012-10-19

ハプスブルク帝国の最後の財務相Josef Redlich (1869-1936)遺産

オーストリア国立図書館に寄贈された。

Bemerkenswert sind vor allem die Briefwechsel mit berühmten
Persönlichkeiten wie Hugo von Hofmannsthal, Hermann Bahr, Felix
Salten, Ignaz Seipel, Karl Renner, Richard Coudenhove-Kalergi oder
Alice Schalek.

Als Jurist und Universitätsprofessor korrespondierte er mit
zahlreichen Intellektuellen seiner Zeit. So finden sich im Nachlass –
neben privaten Aufzeichnungen, Fotografien und Materialien zu Redlichs
wissenschaftlichen Arbeiten – äußerst umfangreiche Korrespondenzen mit
herausragenden Persönlichkeiten des literarischen und öffentlichen
Lebens: Hermann Bahr (296 Briefe), Hugo von Hofmannsthal (64 Briefe),
Joseph Maria Baernreither, Edmund Bernatzik, Richard
Coudenhove-Kalergi, Heinrich Friedjung, Michael Hainisch, Thomas G.
Masaryk, Karl Renner, Felix Salten, Alice Schalek, Ignaz Seipel oder
Jakob und Julie Wassermann.

Tagesaktuelle Einblicke in die „Schicksalsjahre Österreichs" 1908 – 1918

Gerade in den Tagebüchern berichtet der österreichische Politiker und
Gelehrte tagesaktuell über die „Schicksalsjahre Österreichs" von 1908
bis 1918 und erlaubt so einen Einblick in das politische und
gesellschaftliche Geschehen des habsburgischen Vielvölkerstaates.
http://www.onb.ac.at/services/presse_21094.htm

2012-10-18

近現代のドイツ系ユダヤ人の各種資料を提供する“DigiBaeck”公開

franzkafkaで検索すると、36件ヒット
Fanta, Berta夫人の日記や、プラハサークルの貴重な資料も多数


2012年10月16日、Internet Archiveは、Leo Baeck
Institute(LBI)とともに開発した"DigiBaeck"を公開しました。"DigiBaeck"は、LBIが所蔵する、16世紀から20世紀の第二次世界大戦までのドイツ系ユダヤ人のアーカイブズ資料や手稿資料、それらの人々が作成した芸術作品、図書、雑誌、写真、オーディオ記録のデジタル化資料を提供するゲートウェイサイトとのことです。

DigiBaeck
http://www.lbi.org/digibaeck/

Launch of the DigiBaeck Project (Ineternet Archive Blog 2012/10/15付けの記事)
http://blog.archive.org/2012/10/15/launch-of-the-digibaeck-project/

2012-10-16

Court orders Kafka scripts moved to Israel library

Court orders Kafka scripts moved to Israel library
October 15, 2012(Mainichi Japan)

JERUSALEM (AP) -- After a long, tangled journey that Franz Kafka could
have written about himself, an unseen treasure of writings by the
surrealist author will be put on display and later online, an Israeli
court ruled in documents released Sunday.

Ownership of the papers had been in dispute after the Israeli National
Library claimed them, over the wishes of two sisters who had inherited
the vast collection of rare documents from their mother and insisted
on keeping them.

Friday's ruling by the Tel Aviv District Family Court ordered the
collection to be transferred to the library in Jerusalem, which had
argued that Max Brod, Kafka's close friend, had bequeathed the
manuscripts to the library in his will.

The two sisters, Eva Hoffe and Ruth Wiesler, had inherited the
documents from their mother, Brod's secretary, and had been storing
them in a Tel Aviv apartment and bank vaults.

Kafka, a Jewish Prague native who wrote in German, is known for his
dark tales of everyman protagonists crushed by mysterious authorities
or twisted by unknown shames. His works have become classics, like
"The Metamorphosis," in which a salesman wakes up transformed into a
giant insect, and "The Trial," where a bank clerk is put through an
excruciating trial without ever being told the charges against him.

The trove is said to include Brod's personal diary and some of Kafka's
writings, including correspondence the two kept with other notable
writers, which could shed new light on one of literature's most
influential figures.

The German Literary Archive was not part of the legal proceedings but
had backed the sisters' claims, hoping to purchase the manuscripts and
arguing that they belong in Germany.

Ulrich Raulff, who heads the archive, said the papers have drawn great
interest because they will likely reveal much about the years in
Kafka's life that the public knows very little about.

"I hope that the Israeli National Library will provide open access to
the material for the public as soon as possible," he said.
"Researchers have been waiting for the material with excitement for
years already."

Kafka gave his writings to Brod shortly before his own death from
tuberculosis in 1924, instructing his friend to burn everything
unread. But Brod instead published most of the material, including the
novels "The Trial," ''The Castle" and "Amerika."

Aviad Stollman, Judaica Collections Curator at the National Library,
said that the majority of the manuscripts are by Brod not Kafka, but
that they contained tremendous research and sentimental value.

"For decades these manuscripts were hidden and now we can display and
preserve them under proper conditions," he told Israel's Channel 2 TV.

"There are 40 thousand pages, a tremendous amount," he added. "Whoever
loves Kafka will be able to see his signature and notes and crossings
outs ... We hope the material will be on the library's website soon."

Despite the ruling, Hoffe will be entitled for royalties from any
future publication of the documents.

Professor Otto Dov Kulka, a self-described Kafkaphile and retired
professor of history at Israel's Hebrew University, supported the
court decision.

"The National library has taken care of Einstein's theory of
relativity, and we will now take care of the great works of Kafka," he
said.

October 15, 2012(Mainichi Japan)

カフカの遺稿、所有権はイスラエル国立図書館に

カフカの遺稿、所有権はイスラエル国立図書館に 未発表作品も

2012年10月15日 15:12 発信地:エルサレム/イスラエル

【10月15日 AFP】現在のチェコ出身の作家フランツ・カフカ(Franz Kafka)が友人マックス・ブロート(Max
Brod)氏に託した遺稿は、イスラエルの国立図書館に寄贈されるべき——。40年以上にわたり個人の手元にあったコレクションをめぐり、イスラエル・テルアビブ(Tel
Aviv)の裁判所がこのような判決を下した。

■プラハからパレスチナ、そしてドイツへ—ユダヤ系作家の遺稿の旅

 オーストリア・ハンガリー帝国(現チェコ)のプラハ(Prague)に生まれたカフカは1924年、40歳のときに友人のブロート氏に全ての原稿類を預け、自分の死後に焼却するよう指示した。だが、カフカ作品は20世紀で最も影響力のある文学の1つだと考えたブロート氏は、カフカの遺志を無視しドイツ語で出版した。

 1939年にブロート氏は英委任統治下のパレスチナへと逃れる。カフカの未発表作品などを含む同氏のコレクションは、1968年に死去する際に秘書のエステル・ホフェ(Esther
Hoffe)氏が相続し、銀行に保管しつつ一部を売却するなどした。その後、コレクションは2007年にホフェ氏の娘2人の手に渡った。

 現在、遺稿の一部はドイツのマールバッハ(Marbach)にあるドイツ文学史料館(German Library
Archive)が収蔵しており、さらなる遺稿収集に意欲を見せている。

■「ブロート氏が公共機関への譲渡を指示」と認定

 コレクションの所有権をめぐる裁判は2008年に始まった。国立エルサレム・ヘブライ大学(Hebrew University of
Jerusalem)の所有権の主張に対し、ホフェ氏の娘たちは、ブロート氏のコレクションはホフェ氏への贈り物だったと反論していた。

 しかしこのほど裁判所は、ブロート氏がホフェ氏に向かってはっきりと、コレクションの目録を作成し「ヘブライ大学かテルアビブ市立図書館、あるいはイスラエル国内外の公共機関」に譲渡するよう指示していたと認定。「ブロート氏のコレクションなどのカフカの遺稿」をホフェ氏の娘たちへの贈り物とみなすことはできないとして、ヘブライ大の要求通りのコレクションを同大に引き渡すよう命じた。(c)AFP

2012-10-12

「ネズミの驚くべき才能、合唱うたう」

ネズミは歌を覚え、再現することが出来るという発見が最近なされたが、ここに新たなセンセーションが加わった。ネズミは合唱をうたうことまで出来るという。実験を通じて、米国の学者らが明らかにした。

オスのネズミが数匹、メスの個体と一緒にケージの中にいるとき、彼らは歌い出す。各オスはリズムとメロディーを調節し、コーラス・アンサンブルを形成する。報告書に記された。隣の歌い手に合わせて、各個体が音程を調節することも明らかになった。

残念ながら、人間の聴力では、ネズミの「トリル」を完全に聴くことは出来ない。50から100キロヘルツという音域で歌うからだ。人間の耳には一部の音階が聴こえるのみで、「きいきい」鳴っているとしか感じられない。

これまでは、動物界でこうした能力を有しているのは鳥類だけだと考えられていた。

イタル・タス(12.10.2012, 05:14)

2012-10-11

日本独文学会研究叢書087『動物とドイツ文学』

日本独文学会研究叢書087
松村 朋彦編 動物とドイツ文学
Tiere in der deutschen Literatur, hrsg. von Tomohiko MATSUMURA
松村 朋彦 まえがき
松村 朋彦 猿が言葉を話すとき— ホフマン、ハウフ、カフカ —
土屋 京子 動物の認識能力とはなにか
— 18世紀の動物に関する言説とホフマンの猫 —
川島  隆 人間のような犬と、犬のような人間
─ エーブナー=エッシェンバッハからカフカまで —
千田 まや 「犠牲」にみる神と人間と動物─ トーマス・マンを中心に ─

2012-09-15

『カフカとの対話 増補版』[解説] 三谷研爾

著者: グスタフ・ヤノーホ 著 / 吉田仙太郎 訳 / 三谷研爾 解説
出版社: みすず書房
判型: 四六変型判
ISBN: 9784622083597
ジャンル: 文芸書
配送時期: 2012/10/上旬

2012年10月10日発行予定
始まりの本
カフカとの対話【増補版】
[著者] グスタフ・ヤノーホ [訳者] 吉田仙太郎 [解説] 三谷研爾
四六変型判 タテmm×ヨコmm/384頁 定価 3,990円(本体3,800円) ISBN 978-4-622-08359-7 C1398

2012-09-07

『東欧地域研究の現在』

編:柴宜弘 編:木村真 編:奥彩子
出版社:(株) 山川出版社
発売日:2012年09月
ISBN:9784634672260
管理コード:463467226X
カナ:トウオウチイキケンキュウノゲンザイ
シュッパンシャ:ヤマカワシユツパンシヤ
[要旨]
かつてハプスブルク帝国とオスマン帝国の支配下にあった「東欧」という歴史的地域の,冷戦終結後の「今」を,歴史学・政治学・社会学・文学などさまざまな視点から考える。

2012-09-06

カフカ研究の憂鬱 ——高度複製技術時代の文学作品     明星 聖子

A5判変型/上製/276頁
初版年月日:2012/09/21
ISBN:978-4-7664-1971-9
(4-7664-1971-5)
Cコード:C3000
税込価格:3,150円
『貴重書の挿絵とパラテクスト』
松田 隆美 編著


明星 聖子(みょうじょう きよこ)
埼玉大学教養学部教授(ドイツ文学・編集文献学)。東京大学大学院博士課程修了(博士 [文学])。
主要業績:『新しいカフカ——「編集」が変えるテクスト』(慶應義塾大学出版会、2002年)、
『グーテンベルクからグーグルへ——文学テキストのデジタル化と編集文献学』ピーター・シリングスバーク著(共訳書、慶應義塾大学出版会、2009年)。

書物の「仕掛け」を読み解く。
テクストを取り囲む視覚的な要素は、
いかに私たちの読書行為に影響を与えるのか?

挿絵やブックデザインから、古今東西の貴重書を分析する
11篇の論考を収録。
▼書物が「もの」として持つ物理的形態をめぐり、基本的な形状の決定から、表紙のデザイン、ページのレイアウト、前書きや注釈の挿入、挿絵の利用など、様々なパラテクスチュアルな仕掛けは、書物を文化的産物ととらえる書誌学の重要な研究領域であることを提示する。

2012-08-22

Josef Cermak "Living in the shadow of death. Franz Kafka, The Letters of Robert"

言語:チェコ語
タイトル:死の陰に住んでいる。フランツ·カフカ、Robert Klopstockへの手紙
出版地:プラハ
発行者:ヤングキュー
出版年:2012
ページ数:280
著者:Josef Cermak

Jazyk: Čeština

Název: Život ve stínu smrti. Franz Kafka, Dopisy Robertovi

Místo: Praha

Nakladatelství: Mladá fronta

Rok: 2012

Počet stran: 280

Žánr: Korespondence, Literární věda


Vynikající znalec života a díla Franze Kafky Josef Čermák se ve své
nejnovější knize zaměřil na málo známá fakta z posledních let života
Franze Kafky. Představuje nám jeho velkého přítele Roberta Klopstocka,
který jako jeden z mála Kafku nutil, aby věřil klasické medicíně a
nepodceňoval léčení své tuberkulózy experimenty s tzv. alternativní
medicínou – na začátku 20. let 20. století totiž nemocným léčitelé
ordinovali např. ledové sprchy, cvičení v zimě venku bez oblečení a
naboso apod. V knize autor ukazuje i prostřednictvím 70 unikátních
dopisů z Kafkovy korespondence, z nichž některé český čtenář uvidí
poprvé, jaký boj Robert Klopstock vedl i s Kafkovou rodinou a také s
Dorou Diamantovou, kteří spíše podléhali tehdy módnímu trendu tzv.
teosofického léčení.


An expert in the life and work of Franz Kafka's Josef Cermak in his
latest book focuses on little-known facts of the last years of the
life of Franz Kafka.
Presents us with his great friend Robert Klopstock, who was one of the
few Kafka forced to believe conventional medicine and underestimate
their tuberculosis treatment experiments with so-called alternative
medicine - at the beginning of the 20th 20th century is sick healers
prescribed them as icy showers, exercise outside in winter without
clothes and barefoot, etc.

In the book, the author shows through 70 unique letters from Kafka's
letters, some of which Czech reader will see for the first time, which
led the fight Robert Klopstock with Kafka's family and also with Dora
Diamond, who had been subject to more fashion trend called
theosophical(神知学の[に関する]) treatment.

Kafka & Schulz. Masters of the Borderlands in Prague

フランツ・カフカ+ブルーノ・シュルツの対比列伝展。
生涯や生地(プラハとドロホビチ)に関するパネル展示。
シュルツ唯一の現存する油絵の精巧な複製やドロホビチの写真展示、シュルツ作壁画の発見をめぐる映画ダイジェスト版など。

Prague, 10.07.2012 - 19.10.2012

Two leading figures of international Modernism, Central European Jews
and denizens of the lost worlds of Czech-German-Jewish Prague and
Polish-Ukrainian Galicia, Franz Kafka and Bruno Schulz who through
their work created alternate universes

Through paintings, films, texts, the exhibition Kafka & Schulz -
Masters of the Borderlands traces the surprising parallels between the
lives and work of the Prague-born writer Franz Kafka (1883–1924) and
the Polish-Jewish writer and artist Bruno Schulz (1892–1942).

"Kafka's method of creating a parallel, alternative reality is
unprecedented; this dual reality is achieved through a sort of
pseudo-realism," yet at the same time, "the knowledge, insights and
penetrative nature of Kafka's work are not his alone, but part of a
shared heritage of mysticism of all times and nations", Bruno Schulz
wrote in 1936 in an epilogue to the Polish edition of The Trial.

Presented at the Czech Centre Gallery, the exhibition features panels
with original texts by writer and playwright Agneta Pleijel dedicated
to the two places inseparably connected with the writing and
imagination of Franz Kafka and Bruno Schulz, Prague and Drohobych.
Offering an insight into the world of Schulz's dream visions – his
visual and literary fantasies, it a-includes a copy of his sole
surviving oil painting, The Encounter and a short version of Benjamin
Geissler's documentary Finding Pictures which depicts Schulz'
discovery of murals in the Drohobych villa linked to the Gestapo
officer Felix Landau. Drohobych Without Schulz, a series of
photographs by Grand Press Photo winner Kuba Kamiński shows the
current appearance Schulz' native town.

The exhibition was created by the joint effort of three
Stockholm-based institutions: the Stockholm Jewish Museum, the Polish
Institute, and the Czech Centre, and Agneta Pleijel.

Events accompanying the exhibition:

* July 19th, 7.30 pm at Divadlo v Celetné, Celetná 595/17, Praha 1

13th month / Requiem for Bruno Schulz - a pantomime directed by Petr
Boháč inspired by Schulz' works

* September 6th, 5pm at the Polish Institute in Prague

Schulz's work brought to life in a performance of the TrAKTOR theatre
group, as well as a screening of Sanatorium Under The Sign of the
Hourglass, the Czech premiere of a newly-restored print of the famous
film by Wojciech Jerzy Has.

* October 16th, 6.30pm at the Polish Institute in Prague

Screening of Marcin Giżycki's Alfred Schreyer from Drohobycz

Exhibition:

July 10th – August 22nd, 2012 Czech Centre, Prague, Rytířská 31, Prague 1
September 6th – October 19th, 2012 Polish Institute in Prague, Malé
nám. 1, Prague 1

For more information on Bruno Schulz, see the new website brunoschulz.eu
http://brunoschulz.eu/en/

Sources: Polish Institute in Prague press materials

Editor: Marta Jazowska

2012-08-14

カフカが生前に遺した草稿は、友人ら何人もの「エディティング・ワーク」  によって、今日の「カフカ文学」になった。

カフカが生前に遺した草稿は、友人ら何人もの「エディティング・ワーク」
 によって、今日の「カフカ文学」になった。カフカに限ったことではなく、
 あらゆる出版は編集されており、編集なき出版はない。
 しかし、編集の歴史は丁重に無視されるか、ひそかに認証されるかであって、
 その成果は著者の活動の中に折りたたまれてきた。編集はつねにオーサリン
 グの歴史の一部に組みこまれてしまってきたのだった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━http://1000ya.isis.ne.jp/sp051
 ★千夜千冊PRESS★ vol.51 2012年8月13日
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■千夜千冊PRESSは、編集工学研究所関連サービスをご利用いただいたこと
 があるみなさまにお届けさせていただいております。配信を希望されない方は、
 お手数ですがメール下部にある、配信解除URLをクリックの上、解除手続を
 行ってください。

 みなさん、こんにちは。
 千夜千冊編集部より、千夜千冊PRESS vol.51をお届けします。

 1479夜は、読相篇『人文学と電子編集』、
 副題は「デジタル・アーカイヴの理論と実践」です。
 厖大なテキストが日々電子排出され、
 莫大なビッグデータが企業に蓄積されつづけているのが、
 いま私たちをとりまくデジタル環境であるといえるかもしれません。

 しかし、グーテンベルクの活版印刷術がもたらしたテキストを
 グーグルの電子ネットワーク上に移し変えるだけでは、
 新たな価値が生み出されていくことはないでしょう。
 学知と書籍と欲望と商品とをもっとダイナミックにまたいでいく
 「電子の編集」が待望されはじめています。
 将来のデジタル・アーカイヴはいかに電子編集されていくべきか。
 その提案のいくつかを今夜は紹介します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ★ 千夜千冊 1479夜(2012年8月7日 更新)読相篇
 ★ 『人文学と電子編集』デジタル・アーカイヴの理論と実践
 ★  ルー・バーナード キャサリン・オキーフ ジョン・アンスワース
   (2008)慶應義塾大学出版会
 ★ http://1000ya.isis.ne.jp/sp051-01
─────────────────────────────────────
 ┏
  印刷時代の編集力を十分に研究しないまま、
  電子時代の編集技術力が新たな脚光を浴びている。
  簡易なウェブブラウザとサーチエンジンによって
  テキストの流動化や意味の液状化が
  全世界的に目に余るようになってきたからだ。
  こうしてデジタル・エディティングによる
  編集文献学やテキスト編集学が登場してきた。
  これはやっと訪れた「編集工学の夜明け」であるが、
  けれども、いまこそは二つのG(グーテンベルク/グーグル)が
  新たなナレッジサイトの構築と
  柔らかいリベラルアーツの発動のために、
  エディット・ラディカルに統合されるべきなのだ。
                               ┛

【当夜案内(千夜千冊編集部より)】

 カフカが生前に遺した草稿は、友人ら何人もの「エディティング・ワーク」
 によって、今日の「カフカ文学」になった。カフカに限ったことではなく、
 あらゆる出版は編集されており、編集なき出版はない。
 しかし、編集の歴史は丁重に無視されるか、ひそかに認証されるかであって、
 その成果は著者の活動の中に折りたたまれてきた。編集はつねにオーサリン
 グの歴史の一部に組みこまれてしまってきたのだった。

 電子時代のいま、オーサリング・データやライティング・コーパスがコンピ
 ュータ・ネットワークと連動するにしたがって、エディティング・ワークの
 重要性が脚光を浴びはじめている。ひとつが編集文献学、もうひとつが編集
 工学である。
 現在のウェブ社会では、スマホやツイッターやフェイスブックなどのソーシ
 ャルメディアやグーグル型のサーチエンジンによる「テキストの分解」が驀
 進し、電子的エディターシップはいっさい省かれている。「パンとサーカス」
 (大衆をよろこばす欲望と娯楽)の介入に蹂躙され、境界のないフラットな
 情報で満たされているのが現状である。

 本来のナレッジサイトの構築や21世紀のリベラルアーツが組み上がってい
 くには、「知のエンジニアリング」と「編集の工学化」が必要とされている。
 では、どのように? それは、今夜の千夜をご覧ください。

   http://1000ya.isis.ne.jp/sp051-01


━TOPICS━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 〜千夜千冊サテライトメディア 「方」会員申し込み受付中〜

  ★★8月の「方」はツナミとレヴィ=ストロース★★

  「千夜千冊が体の奥から入ってくる」「朗読と解説で理解が深まる」と
  多くのユーザーから好評をいただいている、松岡正剛自身による
  千夜千冊読み解き語り「一册一声」。
  8月は『3・11を読む』刊行を記念して、
  初めて番外録から1439夜『ツナミの小形而上学』を収録しました。

  もう一夜は、松岡自身が「こんな奇怪な一冊はない」と語った
  レヴィ=ストロースの古典的名著『悲しき熱帯』をお届けします。
  いったい何が"奇怪"なのか、一册一声の中で解き明かされます。
   今月の表紙:http://1000ya.isis.ne.jp/how/


  ★★バジラ高橋が語る「日本のデスクトップ」とは★★

  古代から現代までをつなぎ、日本文化に潜む編集知をさぐる
  「日本編集文化誌」は、編集工学研究所主任研究員の
  高橋バジラ秀元による深くて軽い「方」限定語り下ろしコンテンツです。

  今夜の千夜と関連する6月号「日本のデスクトップの編集」は、
  アラン・ケイによるコンピュータの誕生と中世の日本の思索空間をつなぎ、
  あるべき「日本のデスクトップ」を考察したものです。必見です。
   方インデックスページ:http://1000ya.isis.ne.jp/how/?page_id=100


  4月創刊号の第一回配信はこちらから無料で視聴、閲覧できます。
   http://1000ya.isis.ne.jp/how/?page_id=316


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 ┏──────────────────────────┓
  ◎日刊セイゴオ「ひび」◎ 2012年8月9日(木)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  原爆投下都市長崎の遺構と式典と眩しい夏を見て、
  この六十四年を深々と、しかし切なく振り返る。
  陸奥、フクシマ、ヒロシマ、長崎、沖縄を重ねたい。
 ┗──────────────────────────┛

 8月6日、原爆の日の広島市長の「平和宣言」では、震災と原発事故の被災
 者の姿を「67年前の広島の人々と重なる」と、あらためてフクシマとヒロ
 シマを重ねる言及がありました。

 原爆投下と終戦の8月。
 陸奥、フクシマ、ヒロシマ、長崎、沖縄を想う千夜千冊を紹介します。

 <陸奥を想う>
  1417夜 『北上幻想』森崎和江
  http://1000ya.isis.ne.jp/1417.html

 <フクシマを想う>
  1447夜 『「フクシマ」論』開沼博
  http://1000ya.isis.ne.jp/1447.html

 <ヒロシマ・長崎を想う>
  238夜 『黒い雨』井伏鱒二
  http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0238.html

  832夜 『国破レテ』村上兵衛
  http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0832.html

 <沖縄を想う>
  437夜 『沖縄は歌の島』藤田正
  http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0437.html


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2012-08-10

Landolfi, Tommaso作品集『カフカの父親』 (Il babbo di Kafka e altri racconti)

カフカの父親
トンマーゾ・ランドルフィ著 ; 米川良夫, 和田忠彦, 柱本元彦訳
# 単行本: 256ページ
# 出版社: 国書刊行会 (1996/05)
# ISBN-10: 4336035911
# ISBN-13: 978-4336035912
# 発売日: 1996/05
# 商品の寸法: 19.4 x 13.6 x 2.2 cm

奇抜なアイデア、日常生活にぽっかり開いた裂けめを完璧なストーリーテリングで調理する、現代イアリア文学の奇才ランドルフィ、初の作品集。

  * 「マリーア・ジュゼッパ」
* 「手」
  * 「無限大体系対話」
* 「狼男のおはなし」
* 「剣」
* 「泥棒」
* 「カフカの父親」
* 「『通俗歌唱法教本』より」・・・オペラ歌手の歌声の重さや固さ、色、はては匂いや味についての怪論文
* 「ゴーゴリの妻」 Gogol's
Wife・・・文豪ゴーゴリの愛妻は、吹き込まれた空気の量によって自在にその姿を変えるゴム人形だった。グロテスクなユーモア譚
* 「幽霊」 Ombre
* 「マリーア・ジュゼッパのほんとうの話」
* 「ころころ」
* 「キス」
* 「日蝕」
* 「騒ぎ立てる言葉たち」 ・・・ある朝突然口から飛びだしてきた言葉たちが意味の配分をめぐって大論争を繰り広げる、ナンセンスな味わい

http://d.hatena.ne.jp/owl_man/20090217/1234868501

トンマーゾ・ランドルフィ(1908-1979)
イタリアの作家。フィレンツェ大学に学び、同市の文学サークルに参加。逆説、言葉遊び、ナンセンスなどの手法を用いた超現実的な作品を多数発表、20世紀イタリアを代表する短篇作家。賭博狂いなど、数々の奇行でも有名だった。

カルヴィーノやブッツァーティなどもそうだが、イタリアの奇想作家の 「奇妙な味」 は、英米の所謂 「異色作家」
系統のものとは、根本的に何かが違うような気がする。アングロサクソンのストーリー・テリングの伝統にもとづいた語りとは、最初から異なる地面の上に立った、突拍子もない、素っ頓狂なお話が飛び出してくる。ランドルフィはそのなかでも、もっとも
「たがのはずれた」 作家である。このセンスを気に入ってもらえたら、「ゴキブリの海」 (『現代イタリア幻想短篇集』
国書刊行会、所収)もどうぞ。

〈文学の冒険〉シリーズ

英米の人気作家から東欧・ラテンアメリカの未知の傑作まで、
エキサイティングな世界文学の最前線を紹介して
フィクションの新たな可能性を切り拓く
まったく新しい形の世界文学全集。
国書刊行会
四六変型・上製ジャケット装

2012-08-02

明星聖子「境界線の探究 ——カフカの編集と翻訳をめぐって——」

岩波書店『文学』《特集》翻訳の創造力
隔月刊 第13巻・第4号 2012年7,8月号
ISSN 0389-4029 雑誌07709-08
2012年7月25日発行 定価2100円

2012-06-28

『変身』後の姿が、「虫」である理由を探る一助となるかも・・の本

「腹の虫」 の研究
日本の心身観をさぐる
長谷川雅雄/辻本裕成/ペトロ・クネヒト/美濃部重克 著
定価/本体価格 6,930円/6,600円
判型 A5判・上製
ページ数 526頁
刊行年月日 2012年
ISBNコード 978-4-8158-0698-9
Cコード C3047

■書籍の内容

「虫が知らせる」 「虫の居所が悪い」といった表現の根底には、日本特有の 「虫」 観がある。心と身体、想像と現実のはざまに棲み着いた 「虫」
の多面的な姿を、かつての医学思想、文芸作品、民俗風習などを横断的に読み解くことで明らかにし、日本の心身観を浮彫りにしたユニークな研究。

■目次

はじめに

  第�部

第1章 言葉を発する 「虫」 —— 「応声虫」 という奇病
     1 「応声虫」 の事例
     2 創作文芸に見る 「応声虫」
     3 医書の 「応声虫」 論
     4 「応声虫」 とは何か —— 精神医学的検討

第2章 「虫」 の病と 「異虫」
     1 「虫証」
     2 姿を現す 「異虫」 たち
     3 顕微鏡の登場とその波紋
     4 顕微鏡による 「異虫」 の観察

第3章 「諸虫」 と 「五臓思想」
     1 「諸虫」
     2 「五臓思想」
     3 「離魂病」
     4 「五臓」 と 「虫」

第4章 「虫の居所」 —— 「腹の虫」 と 「胸の虫」
     1 「腹の虫」 と 「胸の虫」
     2 「癪」 —— 「腹」 と 「胸」 の病
     3 「癪の虫」
     4 「虫の居所」 としての 「腹」 と 「胸」

第5章 「疳の虫」
     1 文芸作品の 「疳の虫」 とその周辺
     2 医家による見解
     3 「疳」 の病症変遷 —— 「疳」 と 「労」
     4 「疳」 と 「労」 の 「虫」 像

第6章 「疳の虫」 の民間治療
     1 江戸時代の 「疳の虫」 の治療法
     2 「虫封じ」 の民俗誌
     3 現代の 「虫封じ」
     4 「虫封じ」 の社会における意味

  第�部

第7章 「虫」 病前史 —— 「鬼」 から 「虫」 へ
     1 「霊因」 と医の領域
     2 「鬼」 と 「尸」
     3 「伝尸」 と 「伝尸虫」

第8章 「虫」 病の誕生
     1 室町・戦国期の日記と 「虫」 所労
     2 わが国特有の 「虫」 病
     3 「胸虫」 から 「積虫」 へ

第9章 「虫」 観・「虫」 像の解体と近代化
     1 「脳・神経」 学説とその影響
     2 「虫」 の発生思想とその変容
     3 近代医学と 「虫」 病の解体

第10章 教科書と近代文学に見る 「五臓」 用語と 「脳・神経」 表現
     1 初等教育用教科書に見る心身観
     2 近代文学に見る 「脳・神経」 と 「虫」
     3 消え去ることのない 「腹の虫」

おわりに

欧州図書館(The European Library)が開発した新ポータルサイト

欧州各国の国立図書館が参加している欧州図書館(The European Library)が開発した新ポータルサイト公開

このサイトは、主に研究者コミュニティに向けられたもの、
欧州46か国の国立図書館、大学図書館が提供する2億点以上のオンラインリソースにアクセスできる。

The European Library
http://www.theeuropeanlibrary.org/

New Online Discovery Service For Researchers (European Library
2012/6/25付けのプレスリリース)
http://www.theeuropeanlibrary.org/confluence/download/attachments/6979655/TEL_Launch_press+release_final.pdf?version=1&modificationDate=1340619966872

2012-06-19

『ダニエル・デフォーの世界』 塩谷 清人 著

<世界思想社>
『ダニエル・デフォーの世界』 塩谷 清人 著
税込価格 : \4830 (本体 : \4600)
# 単行本: 480ページ
# 出版社: 世界思想社 (2011/12/14)
# ISBN-10: 4790715477
# ISBN-13: 978-4790715474
# 発売日: 2011/12/14
# 商品の寸法: 22 x 16.1 x 4 cm

■目次
はじめに
序 章 デフォーの時代
第一章 幼少期から青年になるまで、王政復古期の状況(一六六〇年から)
第二章 結婚、反乱軍への参加、商売の失敗、著作活動へ(一六七八年から)
第三章 アン女王の治世:政争と宗派対立の波(一七〇二年から)
第四章 政治の世界、変節者か?(一七〇八年から)
第五章 新しい時代、しかし最悪の時期(一七一四年から)
第六章 小説家デフォーの誕生(一七一九年から)
第七章 最後の奮闘、そして死(一七二四年から)
あとがき
◎使用したデフォー関係書/デフォーの作品(原題と訳題)/デフォー関連年表/索引

■富山太佳夫・評 毎日新聞 2012年04月08日 東京朝刊

◇作家の生きた錯綜するイギリス社会

 ダニエル・デフォーについてのこれまでにない素晴らしい本である、と書くと、なんだか怪訝(けげん)な顔をされそうな気がする。あの、『ロビンソン・クルーソー』って小説を書いた人でしょう、というわけで。確かにそれはそうなのだが……これは、あまりにも有名になり過ぎた作品を書き残した作家の悲喜劇ということだろうか。

 ともかくこの本を手にすると、まず最初に彼の肖像画が載っている。これはよく知られたものであるが、それほど立派な身分というわけでもないのに、いかにも一八世紀のイギリスらしい立派なかつらを頭にのせて、それなりにハンサムと言えなくもない。一〇七頁(ページ)までめくると、今度は頭と左右の手首を木の枠にはさまれて晒(さら)し台に立つ男を描いた別の絵に出くわす。勿論(もちろん)そこに描かれているのはデフォー本人の姿である。「この刑では群衆に石や腐ったリンゴ、汚物、卵など危険なものを投げつけられ、ときに不具者に、あるいは最悪の場合殺される恐れがあった」。一七〇三年のロンドンではこんなことも日常的にあったのだ。もっとも、こうした晒し台騒動のことは、日本の読者にも比較的知られているはずである。

この本の斬新さは、実はその先にある。デフォーの拘束された「晒し台の周りを支持者が囲み、花束を投げられ、逆に英雄視された……周りでは彼の著作が売られ、問題の『非国教徒撲滅最短法』まで売られた」。この本にはただこう書いてあるだけではない。著者はこの事件に関係する冊子や詩や手紙を徹底的に調べ上げて、この文章を書いているのだ。少し古い言い方をするならば、実証的な研究と言うことになるのだが、その徹底ぶりとは裏腹に文章は簡潔で、論理はすっきりとしている。デフォーの生きた一七世紀末から一八世紀初めにかけてのイギリスの政治、宗教、経済の錯綜(さくそう)をこれだけ見事にまとめた本はこれまでの日本には存在しなかった。その中に著者はデフォーの膨大な量の著作を埋め込んでいくのである。

 「『レヴュー』は一七〇四年二月から一七一三年六月まで九年間、号数では一五〇〇号をデフォーが一人で書き続けた。当初週一回土曜に出されたからウィークリーで八ページ、値段は二ペンスだった。第七号目……から火曜と土曜の二回出された」。政治、経済は勿論のこと、娯楽のこと、魔女論や霊感の話も。移民問題も。私自身もかつてこの雑誌を手にし、第一号がいきなりフランスの話題から始まっているのに仰天したのを覚えている。

我々はなんとも気安く小説家デフォーと呼んでしまうけれども、『ロビンソン・クルーソー』の出版は一七一九年のことであって、この『レヴュー』の時代の彼はまだ小説家ではないのだ。彼は還暦寸前になってやっと小説家に変身して、今度は小説を書きまくるのだ。いや、小説だけではない。『グレイトブリテン全島周遊記』(一七二四−二六年)というとんでもない旅行記の大作を仕上げてしまうのだ。

 そうか、一七〇四年には『嵐』までまとめていた。この本は、前年にイングランドとウェールズを襲い、八千人超の死者を出したイギリス史上最悪の嵐のルポルタージュであって、その情報収集法の新しさにはただただ驚くしかない。

 そんな一八世紀のデフォーと、一九世紀のディケンズの作り上げたイギリス小説史を前にしながら、塩谷清人氏はこの本を書き上げた。単なる偶然だろうか、今年はディケンズの生誕二〇〇年にあたる。そんな年に、この本を読む幸運。

2012-06-07

『シュンペーター伝—革新による経済発展の預言者の生涯』

■シュンペーター伝—革新による経済発展の預言者の生涯
 一灯舎 トーマス・K.マクロウ著、ThomasK.McCraw原著、八木紀一郎翻訳、田村勝省翻訳 価格:¥3,990

トーマス K. マクロウ 著 著
八木紀一郎 監訳
田村勝省 訳
2010年12月 発行
定価 3,800円
ISBN 978-4-903532-44-8

■目次

第I部 恐るべき子供(一八八三 - 一九二六):革新と経済学
プロローグ シュンペーターとその業績
第一章 故郷を離れる
第二章 性格の形成
第三章 経済学を学ぶ
第四章 徘徊
第五章 出世への歩み
第六章 戦争と政治
第七章 グラン・リフィウート
第八章 アニー
第九章 悲嘆
第II部 成人期(一九二六 - 一九三九):資本主義と社会
プロローグ シュンペーターは何を学んだか?
第十章 知性の新たな目標
第十一章 政策と企業家精神
第十二章 ボン大学とハーバード大学の往来
第十三章 ハーバード大学
第十四章 苦悩と慰め
第III部 賢人(一九三九 - 一九五〇):革新、資本主義、歴史
プロローグ どのように、なぜ歴史と取り組んだのか
第十五章 景気循環、企業史
第十六章 ヨーロッパからの手紙
第十七章 ハーバード大学を去る?
第十八章 不本意ながら
第十九章 エリザベスの勇気ある信念
第二十章 疎外
第二十一章 資本主義・社会主義・民主主義
第二十二章 戦争と困惑
第二十三章 内省
第二十四章 名誉と危機
第二十五章 混合経済に向けて
第二十六章 経済分析の歴史
第二十七章 不確定性の原則
第二十八章 結びの句
エピローグ 遺産
監訳者あとがき
写真出所

索引

■概要

本書はシュンペーターの数少ないが特異な伝記である.狭い意味でのシュンペーターの経済思想を扱うものではなく,波乱に満ちた人生と,様々な分野を統合して資本主義を徹底的に追求し理解しようとするシュンペーターの正にすさまじい生き方を描いている.本書の特徴は,シュンペーターが資本主義の本質を革新(イノベーション)としてとらえ,終生その研究に没頭し多くの大著を著したその過程と,その間に彼を支え続けた女性や同僚達について詳しく書かれていることである.

また,著者はシュンペーター自身だけでなく親しかった人達の日記や手紙,写真等を豊富に引用して,シュンペーターが生きた時代をリアリティをもって詳細に描き出している.著者は,たいへんな知日家だった最後の妻のエリザベスが,アメリカによる対日経済制裁は日本の戦線を拡大すること(真珠湾攻撃)を予告し,そのためFBI
からスパイとしてつけねらわれたことも取り上げている.

シュンペーターの資本主義の捉え方は,戦後の日本の経済発展,今日のアメリカ資本主義の停滞と没落,中国など新興国の発展,そして今後の日本の方向を考える上で役立つだろう.著者のトーマス
K. マクロウは1985年に歴史部門でピューリツアー賞を受賞している.また原著書はヘイグリー経営史最優秀出版賞,ジョセフ・J・シュペングラー経済学史賞,国際シュンペーター学会賞を受賞した好著である.

■トーマス K. マクロウ(THOMAS K. McCRAW)

トーマス K. マクロウはハーバード大学経営学大学院のストラウス記念・企業史名誉教授である.ハーバードビジネススクールで,マクロウ教授は1984-86
年にかけて研究部長を務めた.マクロウ教授は1985 年に Prophets of Regulation: Charles Francis
Adams, Louis D. Brandeis, James M.Landis, Alfred E. Kahn
でピューリッツァー賞(歴史部門)を受賞した.本書ではヘイグリー経営史最優秀出版賞,ジョセフ・J・シュペングラー経済学史賞,国際シュンペーター学会賞を次々に獲得した.また,ライブラリー・ジャーナル
と ストラテジー・+ ビジネスでベストビジネスブックに選ばれた他,ビジネス・ウィークやスペクテイター(ロンドン)で最優秀の本に選ばれている.最近の著書として,
American Business Since 1920: How It Worked (2009) がある.

■監訳者紹介
八木 紀一郎(やぎ きいちろう)

1947 年福岡県生まれ.
東京大学で社会学,名古屋大学大学院で経済学を学ぶ.
岡山大学助教授,京都大学経済学部教授をへて,現職,摂南大学経済学部長.
京都大学名誉教授,VCASI フェロウ.
経済理論学会,経済学史学会,進化経済学会に所属.
著書
『ウィーンの経済思想』(ミネルヴァ書房),『近代日本の社会経済学』(筑摩書房),『社会経済学』(名古屋大学出版会),Austrian and
German Economic Thought: From Subjectivism to Social Evolution
(Routledge).


■訳者紹介
田村 勝省( たむら かつよし)

1949 年生まれ.東京外国語大学および東京都立大学卒業.旧東京銀行で調査部,ロンドン支店, ニューヨーク支店などを経て,現在は関東学園大学教授,翻訳家.

訳書
『アメリカ大恐慌(上下)』(NTT 出版,2008 年)
『大転換 ——帝国から地球共同体へ』(一灯舎,2009 年)
『企業の名声 ——トップ主導の名声管理・回復十二か条』(同,2009 年)
『ウォール街の崩壊の裏で何が起こっていたのか? 』(同,2009 年)
『ニューエコノミーでアメリカが変わる!——幻の富から真の富へ、オバマ大統領への期待』(同,2009 年)
『世界給与・賃金レポート——最低賃金の国際比較 組合等の団体交渉などの効果、経済に与える影響など』(同,2010 年)

■評者 橋本 努 北海道大学大学院准教授

 20世紀を代表する三大経済学者の一人、ジョセフ・A・シュンペーターの決定的な伝記が現れた。

 資本主義の原動力として「創造的破壊」を称揚したシュンペーターは、毎日、自分を厳しく評価していた。日記では0点から1点満点までで、自己の達成度を記録したという。他方で彼は、一流の演技力でもって会話や講演を楽しんだ。財務大臣としての横顔もある。だが財産は市況の暴落で失ってしまった。それでも派手な生活を好み、数々の女性たちに囲まれた。栄光と挫折、愛と孤独という、波乱万丈の人生を送った巨人の実像が、いま鮮やかによみがえる。

 おそらくエコノミストやビジネスパーソンに必要な人生訓は、この一冊に詰まっているのではないか。それほどまでに感銘を受ける。シュンペーター本人、あるいは親しかった人たちが残した日記や手紙から、本書はさまざまな名言を抜粋する。人生を深く洞察するための、言葉の宝庫である。

 シュンペーターは悲劇の英雄であった。43歳にして母と妻とその新生児を同時に失い、絶望の淵に立たされた。「私はこれからの歳月のことを思うと身震いし、私はお前(妻)のいない人生に戦慄する」と彼は記している。「すべてが私の働く能力次第である。そうであれば、仮に私の私生活は終わったとしても、動力源は稼動し続けるだろう」。

新資料に基づいて書かれた本書は、ヘイグリー経営史最優秀出版賞、シュペングラー経済学史賞、国際シュンペーター学会賞、等々の賞を受賞。前作でピュリッツァー賞を授与されたハーバード大学教授の手による、渾身の作である。

 シュンペーターは逆説家であり、皮肉屋ともいわれた。たとえば彼は、創造的破壊の精神を鼓舞する一方で、実際には「保守主義」の立場をとっていた。創造的破壊は、大切な人間的価値を低下させることをよく知っていた。彼は、古きよき旧世界の芸術的達成を維持するために、民衆の革新勢力を抑えるべきだとも考えた。

 そんな保守主義者のシュンペーターが、名著『資本主義・社会主義・民主主義』では、社会主義への移行を必然的であると主張したのは、人を驚かせようとする彼の習癖ゆえだったのであろうか。

 弟子のポール・サミュエルソンは、師の性格に「大切にされてきた一人っ子に典型的」な不安定さを見抜いている。シュンペーターは、疎外された異邦人としての役割を演じていたのだと。だがたんなる道化師と呼ぶにはあまりに巨人すぎる。巨人は完璧な仕事の理念に突き動かされる。その執念に学びたい。

Thomas K. McCraw
米ハーバード大学経営学大学院のストラウス記念・企業史名誉教授。長年、ハーバード・ビジネススクール教授を務めた。本書でヘイグリー経営史最優秀出版賞、国際シュンペーター学会賞ほかを受賞。ピュリッツァー賞(歴史部門)の受賞歴もある。

一灯舎 3990円 609ページ