四六判・342頁
税込定価 2520円
ISBN978-4-7795-0611-6
2012年4月
●主な内容
プロローグ
序 章 法化論——未完のプロジェクト
■江口厚仁
1 法化論の源流と現在
2 近代化論としての法化論
3 ポスト福祉国家論としての法化論
4 市民的公共性論としての法化論
5 法化論のポテンシャル
第1章 「死別の悲しみ」と金銭賠償
——法は死者を悼みうるか——
■小佐井良太
1 はじめに
2 金銭賠償のシステム化と「死別の悲しみ」
3 損害賠償の「命日払い」請求/判決をめぐって
4 おわりに
第2章 法は紛争解決を約束できるか
■上田竹志
1 はじめに
2 コンテクストをめぐる争い
3 コンテクストと時間
4 自己言及問題
5 コンテクスト紛争の「解決」
6 「法の前」・イルカ・論理階型
7 コンテクスト紛争のマネージメント
8 変化へのプロセスの可能性を高める
第3章 司法参加と「法の限界」
——われわれはどこまで法と折り合うことができるのか——
■宇都義和
1 はじめに
2 「法の浸透」に対する評価と懐疑
3 法的判断枠組みとの「せめぎあい」
4 法的判断の文脈
5 法の領分を知ることの意義
6 おわりに
第4章 おっぱいへの権利!
——「見た目」に関する悩みや望みを、法は保護すべきだろうか——
■吉岡剛彦
1 「温泉に行きたい」乳房を失った女性の願い
2 乳房再建と保険適用
——失った乳房をふたたび取り戻すことと公的支援——
3 保険適用を不要とする論理
——近代資本主義社会の障害観と、医療/美容の区別——
4 女性の「おっぱい」は誰のものか
——乳房へ拘泥させるものに抗して——
5 「おっぱいへの権利」を真剣に考える
——「見た目」問題は法の圏内か圏外か——
第5章 近代ウィーンの「子どもの流通」
■江口布由子
1 はじめに
2 捨て子院の解体
3 戦間期ウィーン
——子どもの流通の抑制から再活性化へ——
第6章 公共空間におけるパフォーマンスと法
——都市の中心で「I」をどこまで叫べるか——
1 はじめに
2 表現の自由と公共空間
3 公共空間の変容
4 結びにかえて
第7章 アーキテクチャ批判(の困難さ)への"いらだち"
——近代法主体の「退場」に抗すべき理由はあるか——
■林田幸広
1 アーキテクチャとは何か
2 アーキテクチャと法的規制の関係
——近代法主体の「退場」——
3 「快適」な主体
——再帰的(リフレクシヴ)アーキテクチャ——
4 批判の困難さ
——What's wrong with Architecture?——
5 よるべない批判の拠点
——「リアルの罠」に落ち込みながら——
第8章 教育コミュニティと法
——われわれが学校に参加する条件とは何か——
1 はじめに
2 現代版教育コミュニティ法制
3 意義づけられる学校参加
4 統治対象としての教育コミュニティ
5 教育コミュニティを公共空間として構築する条件
【コラム】
バスジャック事件と少年法厳罰化の是非(山口由美子)
法をめぐる虚実としてのハンセン病問題(三宅浩之)
「事件の本質をとらえる」こと(吉岡俊介)
在日コリアンにおける結婚・戸籍・国籍(吉本和子)
「こうのとりのゆりかご」をめぐる問題(蓮田太二)
俳人の社会的責任?——体験的市民活動試論(甲斐朋香)
「身の丈ジャーナリズム」のススメ(鈴木美穂)
「武器」として、時に「自由」を狭めるものとして(雨宮処凛)
読書案内
エピローグ
■法の境界を巡るアクチュアルな問題群を探究
法とは何か。法の境界は何処にあるのか。
死亡事故における金銭賠償から、市民の司法参加、
公共空間におけるパフォーマンスの是非など、
「法の領分」を巡る多様な問題群に分け入り、
アクチュアルな論点を導き出す。
●編者紹介
江口厚仁(えぐち・あつひと)
1959年生まれ。九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。法社会学専攻。九州大学教授。『自由への問い(3)公共性——自由が/自由を可能にする秩序』〔共著〕(岩波書店,2010年),『リベラルアーツ講座
感性・こころ』〔共著〕(亜紀書房,2008年),『法と社会へのアプローチ』〔共著〕(日本評論社,2004年),他。
林田幸広(はやしだ・ゆきひろ)
1971年生まれ。九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。法社会学専攻。北九州私立大学非常勤講師。『共同体と正義』〔共著〕(御茶の水書房,2004年),「安全,要注意——リスク社会における生‐権力の在処を探るために」(『情況』第3期第3巻第8号,2002年),「ポスト・フーコー的法権力の台頭——差延に感染する〈否〉権力」(『九大法学』第82号,2001年),他。
吉岡剛彦(よしおか・たけひこ)
1972年生まれ。九州大学大学院法学研究科博士後期課程修了。法哲学専攻。佐賀大学准教授。『周縁学——〈九州/ヨーロッパ〉の近代を掘る』〔共編〕(昭和堂,2010年),『ヨーロッパ文化と〈日本〉——国際文化学のドラマツルギー』〈佐賀大学文化教育学部叢書2〉〔共編〕(昭和堂,2007
年),『ヨーロッパ文化と〈日本〉——モデルネの国際文化学』〈佐賀大学文化教育学部叢書1〉〔共著〕(昭和堂,2006年),他。