2012-05-22

『 圏外に立つ法/理論 法の領分を考える』

江口厚仁 林田幸広 吉岡剛彦 編
四六判・342頁
税込定価 2520円
ISBN978-4-7795-0611-6
2012年4月

●主な内容

  プロローグ

 序 章 法化論——未完のプロジェクト
      ■江口厚仁
   1 法化論の源流と現在
   2 近代化論としての法化論
   3 ポスト福祉国家論としての法化論
   4 市民的公共性論としての法化論
   5 法化論のポテンシャル

 第1章 「死別の悲しみ」と金銭賠償
      ——法は死者を悼みうるか——
      ■小佐井良太
   1 はじめに
   2 金銭賠償のシステム化と「死別の悲しみ」
   3 損害賠償の「命日払い」請求/判決をめぐって
   4 おわりに

 第2章 法は紛争解決を約束できるか
      ■上田竹志
   1 はじめに
   2 コンテクストをめぐる争い
   3 コンテクストと時間
   4 自己言及問題
   5 コンテクスト紛争の「解決」
   6 「法の前」・イルカ・論理階型
   7 コンテクスト紛争のマネージメント
   8 変化へのプロセスの可能性を高める

 第3章 司法参加と「法の限界」
      ——われわれはどこまで法と折り合うことができるのか——
      ■宇都義和
   1 はじめに
   2 「法の浸透」に対する評価と懐疑
   3 法的判断枠組みとの「せめぎあい」
   4 法的判断の文脈
   5 法の領分を知ることの意義
   6 おわりに

 第4章 おっぱいへの権利!
      ——「見た目」に関する悩みや望みを、法は保護すべきだろうか——
      ■吉岡剛彦
   1 「温泉に行きたい」乳房を失った女性の願い
   2 乳房再建と保険適用
      ——失った乳房をふたたび取り戻すことと公的支援——
   3 保険適用を不要とする論理
      ——近代資本主義社会の障害観と、医療/美容の区別——
   4 女性の「おっぱい」は誰のものか
      ——乳房へ拘泥させるものに抗して——
   5 「おっぱいへの権利」を真剣に考える
      ——「見た目」問題は法の圏内か圏外か——

 第5章 近代ウィーンの「子どもの流通」
      ■江口布由子
   1 はじめに
   2 捨て子院の解体
   3 戦間期ウィーン
      ——子どもの流通の抑制から再活性化へ——

 第6章 公共空間におけるパフォーマンスと法
      ——都市の中心で「I」をどこまで叫べるか——
   1 はじめに
   2 表現の自由と公共空間
   3 公共空間の変容
   4 結びにかえて

 第7章 アーキテクチャ批判(の困難さ)への"いらだち"
      ——近代法主体の「退場」に抗すべき理由はあるか——
      ■林田幸広
   1 アーキテクチャとは何か
   2 アーキテクチャと法的規制の関係
      ——近代法主体の「退場」——
   3 「快適」な主体
      ——再帰的(リフレクシヴ)アーキテクチャ——
   4 批判の困難さ
      ——What's wrong with Architecture?——
   5 よるべない批判の拠点
      ——「リアルの罠」に落ち込みながら——

 第8章 教育コミュニティと法
      ——われわれが学校に参加する条件とは何か——
   1 はじめに
   2 現代版教育コミュニティ法制
   3 意義づけられる学校参加
   4 統治対象としての教育コミュニティ
   5 教育コミュニティを公共空間として構築する条件

   【コラム】
   バスジャック事件と少年法厳罰化の是非(山口由美子)
   法をめぐる虚実としてのハンセン病問題(三宅浩之)
   「事件の本質をとらえる」こと(吉岡俊介)
   在日コリアンにおける結婚・戸籍・国籍(吉本和子)
   「こうのとりのゆりかご」をめぐる問題(蓮田太二)
   俳人の社会的責任?——体験的市民活動試論(甲斐朋香)
   「身の丈ジャーナリズム」のススメ(鈴木美穂)
   「武器」として、時に「自由」を狭めるものとして(雨宮処凛)

  読書案内
  エピローグ

■法の境界を巡るアクチュアルな問題群を探究

法とは何か。法の境界は何処にあるのか。
死亡事故における金銭賠償から、市民の司法参加、
公共空間におけるパフォーマンスの是非など、
「法の領分」を巡る多様な問題群に分け入り、
アクチュアルな論点を導き出す。

●編者紹介

江口厚仁(えぐち・あつひと)
 1959年生まれ。九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。法社会学専攻。九州大学教授。『自由への問い(3)公共性——自由が/自由を可能にする秩序』〔共著〕(岩波書店,2010年),『リベラルアーツ講座
感性・こころ』〔共著〕(亜紀書房,2008年),『法と社会へのアプローチ』〔共著〕(日本評論社,2004年),他。

林田幸広(はやしだ・ゆきひろ)
  1971年生まれ。九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。法社会学専攻。北九州私立大学非常勤講師。『共同体と正義』〔共著〕(御茶の水書房,2004年),「安全,要注意——リスク社会における生‐権力の在処を探るために」(『情況』第3期第3巻第8号,2002年),「ポスト・フーコー的法権力の台頭——差延に感染する〈否〉権力」(『九大法学』第82号,2001年),他。

吉岡剛彦(よしおか・たけひこ)
  1972年生まれ。九州大学大学院法学研究科博士後期課程修了。法哲学専攻。佐賀大学准教授。『周縁学——〈九州/ヨーロッパ〉の近代を掘る』〔共編〕(昭和堂,2010年),『ヨーロッパ文化と〈日本〉——国際文化学のドラマツルギー』〈佐賀大学文化教育学部叢書2〉〔共編〕(昭和堂,2007
年),『ヨーロッパ文化と〈日本〉——モデルネの国際文化学』〈佐賀大学文化教育学部叢書1〉〔共著〕(昭和堂,2006年),他。