税込価格 : 2100円 (本体価格2000円)
ISBN : 978-4-560-08179-2
ジャンル : 文化史
体裁 : 四六判 上製 250頁
刊行年月 : 2011-11
内容 : 文学や映画でおなじみ、イギリスの執事やメイドなどの使用人。これらの職種に対する社会的イメージと実情を、19世紀〜現代を中心に、文学や諷刺、各種記録から考察する。日本人の想像する執事はイギリスとどう違う?
■目次
はじめに
第1章 執事──旧約聖書からハリウッド映画まで
第2章 ハウスキーパー──愛しすぎた女性たち
第3章 料理人──「きまぐれ」が歓迎されるポスト
第4章 メイド──玉の輿はありかなしか
第5章 従僕と下男──孔雀の出世
第6章 乳母──影の実力者
あとがき
引用文献
■使用人文化から見たイギリス
英文学を読んでいると随所に登場するのが使用人(家庭内労働者)である。かつてイギリスの中流以上の家庭では、使用人は身近かつ不可欠な存在だった。一方で、十九世紀のベストセラー『ビートン夫人の家政書』は「社交界では使用人を悪くいうのが習慣になっています」と語る。当時の人々にとって、使用人とはどういう存在だったのだろうか。
世相を反映する例として小説を見ると、『オリヴァー・トゥイスト』に登場する、盗みの疑いをかけられた主人公をかばう慈母のようなハウスキーパーと、『レベッカ』で女主人に嫌がらせを繰り返す邪悪なハウスキーパーとは、一見正反対の人物に見える。だが著者によれば、両者の行動の裏には、ある共通した人物像があるという。では、そうしたキャラクターが生まれた背景には、ハウスキーパーとは「どういう人」だという世間のイメージがあり、そのイメージはどこからきたのだろうか。
本書では、回顧録などの記録や文学作品、各種資料をもとに、十九世紀を中心に現代までのイギリスにおける、使用人の社会的イメージについて分析する。さらに、それらのイメージと、日本人やアメリカ人がポップカルチャー等で描いてきた使用人とのギャップについても考察している。
■新井 潤美(あらい めぐみ)
香港・日本・オランダおよびイギリスで教育を受ける。1990年東京大学大学院博士課程満期退学(比較文学比較文化専攻)。現在、中央大学法学部教授。主要著訳書:『階級にとりつかれた人びと
英国ミドル・クラスの生活と意見』(中公新書)、『不機嫌なメアリー・ポピンズ
イギリス小説と映画から読む「階級」』(平凡社新書)、『自負と偏見のイギリス文化 ─
J・オースティンの世界』(岩波新書)、ドナルド・キーン『日本文学の歴史
近代・現代篇』7・8巻(中央公論新社)、ジェイン・オースティン『ジェイン・オースティンの手紙』(編訳、岩波文庫)