2012-06-07

『トクヴィルの憂鬱  フランス・ロマン主義と〈世代〉の誕生』「何者でもない」世代の誕生

税込価格 : 2730円 (本体価格2600円)
ISBN : 978-4-560-08173-0
ジャンル : 思想・歴史
体裁 : 四六判 上製 334頁
刊行年月 : 2011-12


■内容 : 初めて世代が誕生するとともに、青年論が生まれた革命後のフランス。トクヴィルらロマン主義世代に寄り添うことで新しい時代を生きた若者の昂揚と煩悶を浮き彫りにする。

「大革命後のフランスでは、ナポレオンが失脚した後、社会の枠組みは定型化する。そんな閉塞する時代に生まれたのが「青年論」だった。……そして今、若者論が溢れるこの時代、トクヴィルらロマン主義世代の声は、いっそう切実なものとして響いてくるはずである。」(序章より)

■「何者でもない」世代の誕生
 「かれが剣で始めたことを我はペンで成し遂げん」。そう暗い屋根裏部屋でナポレオン像に誓ったバルザック。「シャトーブリアンになりたい。そのほかは無だ」と断言したユゴー。そして、自らのステータスを誇示しようと、競って馬車を疾駆させた無数の若者たち。
 旧体制の桎梏から解き放たれた大革命後のフランスは、誰もが偉大な英雄になろうと思い詰め、その途方もない野心を持て余して悩んだ時代だった。
 一方、ナポレオン失脚とともに閉塞する社会のなかで「立身出世」の途を断たれ、「何者でもない」自分に直面させられた若者たちは、歴史上初めて〈世代〉意識を共有するとともに(青年の誕生!)、巨大なロマン主義運動を展開してゆく。
 『アメリカのデモクラシー』『旧体制と大革命』で知られるアレクシ・ド・トクヴィルもこの時代を生きた一人だ。本書は、これまで「大衆社会の預言者」として聖化されてきたかれをロマン主義運動の坩堝に内在させて理解する試みである。
 憂鬱、結核、そして自殺が社会問題として浮上し、精神医学が産声を上げたこの時代におけるトクヴィルらロマン主義世代の声は、若者論が氾濫する今日、いっそう切実なものとして響いてくるはずである。

 ■[目次]
  序章「世紀病」をめぐって
 � 欲望の解剖──ロマン主義と世代問題
  第一章 立身出世の夢と青年の苦悩
  第二章 アメリカへの旅、自己への旅
  第三章 幻滅──無関心と羨望
 � 絶対の探求──神に代わる人間の宗教
  第四章 「新しい信仰」の噴出
  第五章 預言者の詩想──「汎神論」への地平へ
  第六章 トクヴィル・パラドックス──多数 or 宗教
 � 利益と政治──失われた公衆を求めて
  第七章 中央集権と不確かな名誉
  第八章 ジャーナリズムと「野党」の使命
  第九章 革命と〈自尊〉
  終章 憂鬱の世紀
   あとがき
   参考文献
   人名索引

■�山 裕二(たかやま ゆうじ)*データは刊行時のものです
1979 年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。博士(政治学)。現在、早稲田大学政治経済学術院助教。専門は政治学・政治思想史。『社会統合と宗教的なもの
— 十九世紀フランスの経験』(編著、白水社)、ジョン・ロールズ『政治哲学史講義�・�』(共訳、岩波書店)